George Clinton - Computer Games (1982)
George Clinton『Computer Games』解説
George Clintonの『Computer Games』は、1982年にキャピトルから出た初のソロ名義アルバムである。ParliamentやFunkadelicの中心人物として知られてきたクリントンが、グループ活動の停止後にひとりの名義で出した作品で、P-Funkの流れをそのまま引き継ぎながら、当時の音響感覚やシーンの空気を濃く反映した1枚になっている。ファンクを軸にしつつ、エレクトロの感触やコラージュ的な編集、シンセサイザーの使い方が前面に出ているのが特徴で、80年代初頭の黒人音楽の変化をそのまま切り取ったような内容だ。
ソロ第1作としての位置づけ
1981年にParliamentとFunkadelicが活動を止めたあと、クリントンは精神的にも経済的にも厳しい時期にあった。その状況の中で作られたのが『Computer Games』である。ソロ名義ではあるが、実際にはP-Funkの中核メンバーが多く参加している。ブーツィー・コリンズ、バーニー・ウォーレル、ギャリー・シャイダー、デヴィッド・スプラドリーらが関わり、P-Funkの延長線上にある作品としてまとまっている。
録音は1981年から82年にかけて、デトロイト近郊のThe DiscとUnited Sound Systemsで行われた。デトロイトという土地も重要で、モータウン以後の黒人ポップスとファンク、さらにエレクトロの空気が接続する場所として、アルバムの質感に影響している。
収録曲とヒット曲
この作品でまず触れておきたいのは「Loopzilla」と「Atomic Dog」である。「Loopzilla」はクリントンにとってソロ名義で初めてチャート入りしたシングルで、R&Bチャート19位を記録した。モータウンの「Dancing in the Street」や「I Can't Help Myself」といった断片を織り込んだ作りで、既存のフレーズを切り貼りして新しいグルーヴを作る感覚がはっきり出ている。
続く「Atomic Dog」は、後にP-Funk史を代表する曲として扱われる1曲で、R&Bチャート1位を獲得した。ヒップホップ以降のサンプリング文化でも繰り返し参照され、黒人ポピュラー音楽の定番フレーズとして長く使われてきた。犬の鳴き声のようなヴォーカル処理と反復するベースラインが、曲の骨格をそのまま印象づける。録音時のエピソードとして、クリントンがかなり酔った状態でスタジオに現れ、譜面なしで即興的にヴォーカルを入れたという話が残っている。
音の作りと聴きどころ
実際に聴くと、P-Funkの大きな編成感よりも、リズムと音色の切り替えに意識が向く。ベースは前に出るが、単純なファンクの反復だけで押し切るのではなく、シンセのフレーズや効果音、ヴォーカルの掛け合いが細かく入れ替わる。タイトルどおり、機械やコンピュータを思わせる硬い音がある一方で、演奏の呼吸はかなり人間的だ。
「Loopzilla」のように断片をつないでいく曲では編集の感覚が強く、「Atomic Dog」では反復の中にねじれたユーモアがある。P-Funkの遊び心を保ちながら、80年代らしい電子音の輪郭をはっきり見せている点が、このアルバムの核になっている。
ジャケットと盤の情報
ジャケットはペドロ・ベルのアートワークで、P-Funk作品らしい視覚的な情報量がある。ブックレットやクレジット周りも含めて、作品世界を作る要素が多い。オリジナル盤は1982年のUS Capitol盤で、ラベルや内袋の仕様にいくつかのバリエーションがある。シュリンク上のステッカーにはタイトル、カタログ番号、「Printed in U.S.A.」の表記が入る。
この盤はジャクソンヴィル押しとウィンチェスター押しのバリエーションがあり、レーベルやランアウトの違いで見分けられる。なお、収録曲A2はバックカバーではA2.1とA2.2に分かれているが、ラベル上では1曲扱いになっている。こうした細かな違いも、当時のUSプレスらしいポイントである。
同時代の文脈
1982年のファンクは、70年代のバンド志向から、より電子化された方向へ移りつつあった。『Computer Games』はその変化の中で、P-Funkの土台を保ちながらエレクトロやニューウェーブ以後の感覚に接近した作品として見える。プリンスやザップ周辺の流れ、あるいは同時期に進んでいたヒップホップのサンプリング文化とも、後からつながっていく要素が多い。
批評面でも評価は高く、AllMusicやローリング・ストーン、ヴィレッジ・ヴォイスなどで好意的に受け止められている。商業面ではBillboard 200で40位、R&Bアルバム・チャートで3位を記録し、ソロ1作目としては十分に存在感を示した。Parliament/Funkadelicの大きな流れを受けつつ、80年代のGeorge Clintonを形作った起点として、『Computer Games』は重要な位置にある。
トラックリスト
- Game One
- A1 Get Dressed 3:39
- A2.1 Man's Best Friend
- A2.2 Loopzilla 12:46
- A3 Pot Sharing Tots 3:40
- Game Two
- B1 Computer Games 6:42
- B2 Atomic Dog 4:42
- B3 Free Alterations 4:15
- B4 One Fun At A Time 4:25