George Michael - Older (1996)
George Michael『Older』──静けさと成熟を前面に出した1996年作
George Michaelの『Older』は、1996年に発表された3作目のソロ・スタジオ・アルバムである。Wham!での成功を経て、ソロでは『Faith』『Listen Without Prejudice Vol. 1』と作品ごとに表情を変えてきたが、このアルバムではさらに内省的な方向へ進んでいる。ダンス・ポップの華やかさを前面に出した初期作とは異なり、ここではソウル、ジャズ、ダウンテンポ寄りの感触が軸になっている。制作背景には、当時の私生活や喪失体験が深く関わっており、タイトルそのものも年齢や時間の流れを意識させるものになっている。
オリジナルは1996年5月13日にヨーロッパでCD、LP、カセット、ミニディスクで発売され、UKチャートでは1位を獲得した。アメリカでは翌14日にCDとカセットで発売され、Billboard 200で6位まで上昇している。今回の盤はヨーロッパ盤の1996年リリースで、Virginレーベルからの発表。Virginは当時すでにEMI流通下にあり、90年代半ばらしいシンプルなグレー寄りのレーベル面が使われていた時期にあたる。
作品の輪郭
『Older』でまず目立つのは、音数を詰め込むよりも、歌とコード感の余白を生かす作りである。George Michaelはもともとメロディの強さが際立つ人だが、この作品ではリズムの抜き差しや低音の置き方がかなり重要になっている。ファンクの要素は残しつつも、ビートの押し出しは抑えめで、夜の静けさのような空気が全体を支配している。派手なサビで一気に押し切るというより、フレーズを反復しながら感情を積み上げる構成が多い。
アルバムからは6枚のシングルが生まれており、代表曲としては「Jesus to a Child」「Fastlove」がよく挙げられる。「Jesus to a Child」は、柔らかい歌い口と丁寧なメロディ運びが印象に残る曲で、追悼の気配を含んだ静かなナンバーとして機能している。「Fastlove」は一転して、R&Bとファンクの流れを汲むグルーヴ重視の曲で、アルバムの中でも比較的開けた輪郭を持つ。どちらもGeorge Michaelのソングライターとしての精度を示す曲で、声の細かなニュアンスが曲の意味を決めている。
当時の位置づけ
この時期のGeorge Michaelは、単なるポップスターというより、作曲とセルフ・プロデュースの比重が高いアーティストとして見られていた。『Older』はその路線をさらに進めた作品で、同時代のメインストリーム・ポップの中でも、かなり落ち着いた温度を持っている。90年代半ばのポップ/R&Bの文脈で見ると、華やかなクラブ感よりも、内省や成熟を前に出した作りが目立つ。PrinceやStevie Wonderの流れを思わせるソウル寄りの感覚もありつつ、あくまでGeorge Michael自身の歌と構成が中心にある。
リリース時の反応はおおむね好意的で、歌唱力と曲作りの緻密さが評価された。実際、アルバム全体を通して聴くと、目立つフックだけでなく、ブレスの置き方やコーラスの重ね方まで含めて、細部の設計がかなり丁寧であることがわかる。派手な一撃ではなく、アルバム単位でじわじわ効いてくるタイプの作品という印象だ。
収録曲を支える背景
ブックレットや表記には、この作品がAntonio Carlos JobimとAnselmo Feleppaに捧げられていることが記されている。Jobimはボサノヴァの重要人物であり、George Michaelが音楽を聴く感覚を変えた存在として言及されている。FeleppaはGeorge Michaelの人生観に影響を与えた人物としてクレジットされており、この献辞だけでも作品の重心が見えてくる。『Older』は単なるラブソング集ではなく、喪失後の時間をどう歌うかというテーマを背負ったアルバムとして受け止められてきた。
録音はロンドンのMetropolis Studiosでマスタリングされている。音のまとまりはかなり良く、低域は深く出しすぎず、ボーカルを前に置くバランスになっている。LPで聴くと、デジタル作品らしい整い方の中にも、声の質感やベースの動きが見えやすい。再発ではなくオリジナルの1996年盤ならではの、当時のVirginらしい質実なパッケージも含めて、作品の空気がそのまま閉じ込められているように感じられる。
まとめ
『Older』は、George Michaelのキャリアの中でも、成熟と内省を前面に出した重要作である。ヒット曲を持ちながらも、単なるシングル集には収まらない統一感があり、90年代ポップの中でも独自の温度を保っている。派手さよりも構成、即効性よりも余韻、そうした軸でまとまったアルバムで、George Michaelがソングライターとしてどこまで深く歌えるかを示した一枚と言えそうだ。
トラックリスト
- A1 Jesus To A Child 6:50
- A2 Fastlove 5:24
- A3 Older 5:32
- A4 Spinning The Wheel 6:21
- A5 It Doesn't Really Matter 4:49
- B1 The Strangest Thing 6:00
- B2 To Be Forgiven 5:21
- B3 Move On 4:45
- B4 Star People 5:15
- B5 You Have Been Loved 5:27
- B6 Free 2:59
動画プレイリスト
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George Michael - Jesus to a Child (Official Music Video)
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George Michael - Fastlove (Official Video)
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George Michael - Older (Official Video)
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George Michael - Spinning The Wheel (Official Video)
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George Michael - It Doesn't Really Matter (Audio)
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George Michael - The Strangest Thing (Audio)
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George Michael - To Be Forgiven (Audio)
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George Michael - Move On (Audio)
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George Michael - Star People '97 (Live at the 1996 EMA's)
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George Michael - You Have Been Loved (Audio)
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George Michael - Free (Audio)