Japan - Oil On Canvas (1983)
Japan『Oil On Canvas』(1983)レビュー
Japanの『Oil On Canvas』は、1983年にUKのVirginから出たライヴ・アルバムである。バンドは1974年にロンドンで結成され、デヴィッド・シルヴィアン、ミック・カーン、スティーヴ・ジャンセン、リチャード・バルビエリを軸に、80年代初頭の英ニュー・ウェイヴ/アート・ロックを代表する存在へと移っていった。本作はその活動の終盤、解散後にまとまって世に出た作品で、Japanのキャリアを振り返るうえで重要な位置にある。
解散後に出た、最後期の記録
収録されたライヴ音源は、1982年11月のハマースミス・オデオン公演から取られている。ちょうどバンドがすでに解散していた時期で、発売当時は「Japan recorded live」として扱われた。実際には完全なライヴ盤ではなく、3曲の新録スタジオ・インストゥルメンタルが差し込まれている点が大きい。タイトル曲「Oil On Canvas」、シルヴィアンとジャンセンによる「Voices Raised In Welcome, Hands Held In Prayer」、そしてバルビエリ作の「Temple Of Dawn」がそれに当たる。
この構成のため、アルバム全体は単なる公演記録というより、解散直前のJapanをまとめ上げた編集盤に近い印象もある。後年、ミック・カーンの回想では一部トラックがスタジオで再録されたことが明かされ、純粋なライヴ盤としては語れない側面も残った。
選曲の中心は『Tin Drum』期
セットリストはラスト・スタジオ・アルバムとなった『Tin Drum』の楽曲を中心に、『Quiet Life』『Gentlemen Take Polaroids』からの楽曲を交えた構成である。Japanの音楽は、初期のやや硬質なニュー・ウェイヴから、シンセサイザーとベースの絡みを前面に出した独自のアンサンブルへと変化していったが、この時期の楽曲はその到達点に近い。
「Nightporter」のような代表曲は、スタジオ版でもそうだったように、ここでも静かなテンポと間の取り方が印象に残る。ミック・カーンのフレットレス・ベース、リチャード・バルビエリの鍵盤、シルヴィアンの抑えた歌が、派手さよりも線の細さと密度で聴かせる作りになっている。ライヴ録音でありながら、演奏の輪郭がきっちり整っているのも特徴的だ。
Japanにとっての位置づけ
本作は、Japanのアルバムとしては全英チャート最高位となるUK5位を記録した。バンドはすでに解散していたが、その直後に発売されたことで関心が高まり、結果としてキャリア最大の商業的成功につながった。1988年にはBPIからゴールド認定も受けている。解散がニュースになった直後に、むしろ作品の評価と売上が伸びたという流れは、当時のJapanへの注目度をよく示している。
また、メンバーそれぞれの個性がはっきり出ている点も重要だ。デヴィッド・シルヴィアンの歌は端正で、ミック・カーンのベースは旋律を引っ張り、スティーヴ・ジャンセンのドラムは節度を保ち、バルビエリのシンセは空間を作る。ロブ・ディーン脱退後の編成で、ツアーには日本人セッション・ギタリストの松尾清憲ではなく、パット・トーマスが参加していた時期の演奏が土台になっている。バンドの最終形を記録した作品として見ていくと、単なるベスト選曲集とは違う重みがある。
音の印象と聴きどころ
実際に聴くと、スタジオ作の精密さをある程度保ったまま、ライヴ特有の空気を載せた音像になっている。観客の熱気を前に出すタイプではなく、演奏の配置や残響の扱いで場面を作るタイプで、曲間のつながりも含めて一つの作品として組まれている感触が強い。特に『Tin Drum』以降の曲は、音数を絞りながら低音とシンセの隙間を活かす作りが目立つ。
収録曲の一部には、初期の単一CD盤で「Gentlemen Take Polaroids」と「Swing」が省かれている版もあるため、オリジナルの2枚組LPとは内容差がある。UKオリジナル盤はVirginのVD 2513で、1983年当時のVirginらしい緑と赤のレーベル期にあたる。ジャケットに「Japan Recorded Live」のステッカーが付いたものもあり、発売時の扱いがやや特別だったことがうかがえる。
同時代の文脈
Japanは、同時代のニュー・ロマンティック周辺のバンドの中でも、見た目の流行性だけでなく、演奏と編曲の緊張感で評価されたグループだった。Duran DuranやUltravoxと並べられることは多いが、Japanはより陰影のある音作りで、アート・ロック寄りの質感を保っていた。本作はその路線がライヴでも崩れていないことを示す記録でもある。
『Oil On Canvas』は、解散後に出たライブ盤という枠を超えて、Japanの最終章を整理した一枚として残っている。スタジオ録音の新曲を交えながら、バンドの主要期をまとめ、しかもキャリア最高位のチャート成績を残した点が、この作品の輪郭をはっきりさせている。
トラックリスト
- A1 Oil On Canvas 1:23
- A2 Sons Of Pioneers 5:00
- A3 Gentlemen Take Polaroids 6:36
- A4 Swing 5:46
- B1 Cantonese Boy 3:45
- B2 Visions Of China 5:41
- B3 Ghosts 5:15
- B4 Voices Raised In Welcome, Hands Held In Prayer 3:33
- C1 Nightporter 6:45
- C2 Still Life In Mobile Homes 5:37
- C3 Methods Of Dance 6:12
- D1 Quiet Life 4:33
- D2 The Art Of Parties 5:25
- D3 Canton 5:47
- D4 Temple Of Dawn 1:47
動画プレイリスト
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Oil On Canvas
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Sons Of Pioneers (Live From The Hammersmith Odeon,United Kingdom/1982)
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Gentlemen Take Polaroids (Live From The Hammersmith Odeon,United Kingdom/1982)
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Swing (Live From The Hammersmith Odeon,United Kingdom/1982)
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Cantonese Boy (Live From The Hammersmith Odeon,United Kingdom/1982)
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Visions Of China (Live From The Hammersmith Odeon,United Kingdom/1982)
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Ghosts (Live From The Hammersmith Odeon,United Kingdom/1982)
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Voices Raised In Welcome, Hands Held In Prayer
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Nightporter (Live From The Hammersmith Odeon,United Kingdom/1982)
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Still Life In Mobile Homes (Live From The Hammersmith Odeon,United Kingdom/1982)
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Methods Of Dance (Live From The Hammersmith Odeon,United Kingdom/1982)
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Quiet Life (Live From The Hammersmith Odeon,United Kingdom/1982)
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The Art Of Parties (Live From The Hammersmith Odeon,United Kingdom/1982)
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Canton (Live From The Hammersmith Odeon,United Kingdom/1982)
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Temple Of Dawn