Joy Division - Still (1981)
Joy Division 1981

Joy Division - Still (1981)

Rock New Wave Post-Punk

Joy Division『Still』――終わった後に残る音を集めた1981年の1枚

Joy Divisionの『Still』は、1981年10月にUKのFactoryから発表されたダブルアルバムである。Ian Curtisの死後にまとめられた作品で、未発表のスタジオ録音と、バンド最後のライブとなった1980年5月2日のバーミンガム大学公演を収めている。スタジオ録音とライブ録音が同じ作品の中で並ぶことで、Joy Divisionというバンドの終盤の時間がそのまま保存されたような構成になっている。

Joy Divisionの中での位置づけ

Joy Divisionは、1970年代後半のマンチェスターで生まれたポストパンクの代表格で、Ian Curtis、Bernard Sumner、Peter Hook、Stephen Morrisの4人によって活動した。『Still』は、バンドのスタジオ作品としては最後にあたる一方、単なる遺作集ではなく、当時の断片を編集して一つのアルバムにした性格が強い。『Unknown Pleasures』や『Closer』のような完成されたスタジオアルバムとは違い、録音時期も会場も異なる素材が並ぶことで、作品全体に記録集としての重みが出ている。

収録曲と録音の背景

収録曲の録音時期はかなり幅がある。A1、A5、B1、B2は1979年4月のStrawberry Studiosでの録音、A2とB4は1979年秋のCargo Studios、A3は1980年1月のPennine Sound Studios、A4は1978年10月録音で、もともと『A Factory Sample』に収録されていたもの。B3は「Transmission」期の1979年夏の録音、B5は1980年4月3日のロンドン、Moonlight Clubでのライブ。さらにC1からD5は、1980年5月2日のバーミンガム大学でのライブ音源で占められる。

この作品で特に重要なのが「Ceremony」のライブ音源である。のちにNew Orderの最初のシングルとなる曲で、Joy DivisionからNew Orderへの接続点として知られている。Bernard Sumnerが語っているように、この曲はCurtisの死の直前、彼を音楽へ引き戻す目的で作られたものだった。『Still』に収められた演奏は、その直前の空気を残す音源として聴かれてきた。

また、CD化の際には時間の都合で「Twenty Four Hours」が収録から外れた。スリーブ上では未記載だが、一部の盤ではC6として現れることがある。こうした版ごとの差も、このアルバムらしい複雑さを作っている。

音の印象

実際に聴くと、『Still』は統一感のあるアルバムというより、異なる時間の断片が同じ温度で並んでいる印象が強い。スタジオ録音はJoy Divisionらしい低音の圧と、空間の広い録音が前に出る。ライブ音源はその輪郭が少し荒くなるが、演奏の緊張感はむしろはっきりする。特にバーミンガム大学のパートは、最後の公演という事実を抜きにしても、曲の立ち上がり方や間の取り方に独特の張りつめ方がある。

Ian Curtisの声は、完成度の高いボーカルというより、切れ切れのメモのように残っている場面がある。その不安定さが、この作品では逆に記録としての意味を強めている。Joy Divisionの作品群の中でも、『Still』は感情をまとめるというより、残された素材をそのまま並べている感じが濃い。

ジャケットと初回仕様

1981年の初回盤は、白いリボンのついた布張りの「hessian」ゲートフォールド仕様で、インナーは切り抜きのある厚紙。ラベルはグレー基調で、少数ながら青と白のラベルも存在する。のちに1981年12月には、白いカードボードに青文字を使った限定版も出ている。Factoryらしい実験的なパッケージで、音だけでなく物としての存在感も強い。

このあたりはFactoryのレーベル史ともつながる。Manchesterの独立レーベルとして、Factoryは番号管理やアートワークを含めて作品を一つの記録として扱っていた。『Still』もその方針の中にあり、音源集でありながら、Factoryの編集感覚がはっきり出た一枚になっている。

チャートと再発

『Still』は全英アルバムチャートで最高5位を記録し、約5か月トップ100にとどまった。Joy Divisionの作品としても広く届いた部類で、後年まで何度も再発されている。1986年にはLP、カセット、CDが出ており、1989年、1993年、2000年、2007年、2015年、2022年にも再発が続いた。2007年以降は180g盤やコレクターズ・エディションもあり、2022年の40周年盤では赤系スリーブとクリア盤仕様が採られている。

初回の布張り盤と比べると、再発盤はより一般的なパッケージに落ち着いているが、収録内容そのものはこのアルバムの核を保っている。Joy Divisionの終わり方をそのまま封じたような作品として、『Still』は今でも特別な位置にある。

トラックリスト

  1. A1 Exercise One 3:05
  2. A2 Ice Age 2:22
  3. A3 The Sound Of Music 3:53
  4. A4 Glass 3:55
  5. A5 The Only Mistake 4:15
  6. B1 Walked In Line 2:46
  7. B2 The Kill 2:14
  8. B3 Something Must Break 2:47
  9. B4 Dead Souls 4:52
  10. B5 Sister Ray 7:34
  11. C1 Ceremony 3:50
  12. C2 Shadowplay 3:54
  13. C3 Means To An End 4:01
  14. C4 Passover 5:05
  15. C5 New Dawn Fades 4:01
  16. C6 Twenty Four Hours 4:00
  17. D1 Transmission 3:33
  18. D2 Disorder 3:20
  19. D3 Isolation 3:05
  20. D4 Decades 5:22
  21. D5 Digital 3:53

動画プレイリスト

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