Killing Joke - Night Time (1985)
Killing Joke 1985

Killing Joke - Night Time (1985)

Rock Post-Punk

Killing Joke『Night Time』(1985)レビュー

Killing Jokeの『Night Time』は、1985年にUKのEGから出た5作目のアルバムで、バンドの作風が大きく広がった時期を示す一枚だ。初期のKilling Jokeといえば、鋭いリズム、硬質なギター、緊張感の強いポストパンクのイメージがまず浮かぶが、この作品ではその輪郭を保ちながら、より耳に残りやすいフックや、曲の流れを重視した構成が前に出ている。録音は1984年8月から9月にかけてベルリンのHansa Tonstudiosで行われ、ミックスまで含めて当時の空気がそのまま封じ込められたような仕上がりになっている。

バンドの転換点としての位置

『Night Time』は、Killing Jokeにとって単なる中期のアルバムではなく、バンド像を更新した作品として見られている。前作までの攻撃性やインダストリアル寄りの緊迫感を引き継ぎつつ、曲の輪郭は明確で、メロディの見通しも良い。AllMusicが初期の攻撃性とアクセスしやすさの間で揺れる作品と捉え、PopMattersが敵対性と親しみやすさのバランスを整えたと評しているのも、このアルバムの性格をよく表している。

制作を担ったのはChris Kimsey。ストーンズ作品でエンジニアや共同プロデューサーを務めた人物で、ロックの質感を整理して前に出す手腕で知られる。Killing Jokeの持つ不穏さを消さずに、音像を整理して聴かせる方向へ持っていった点が、この盤の印象を決めている。

収録曲と代表曲

このアルバムを語るうえで外せないのが「Love Like Blood」だ。先行シングルとして出され、UKシングルチャート16位、オランダ5位、ベルギー8位と、特にベネルクス圏で強い支持を得た。Geordie Walkerがこの曲を「歪んだギターを纏ったディスコ」と表現したという話もあるが、実際、機械的な推進力と身体的なノリが同居していて、Killing Jokeの中でもかなり輪郭のはっきりした曲になっている。

収録曲全体にも、その方向性は通っている。ビートは重く、ギターは冷たく、歌は前に出る。初期作のような圧迫感だけで押し切るのではなく、リフやサビの反復で引っ張る場面が増えている。ポストパンクの緊張感を残しながら、80年代半ばのロック・アルバムとしての分かりやすさも持ち込んだ構成だ。

ベルリン録音と当時の空気

制作前、バンドは1983年にスイス・ジュネーブへ移り、そこで楽曲の大半を作ったという。そこからベルリンのHansa Tonstudioで録音された流れも、この作品の性格に合っている。Jaz Colemanは、ベルリンの冷たさがこの作品の素材に合っていたと語っている。Hansaといえば、壁の近くにあったスタジオとして知られ、80年代のヨーロッパ的な緊張感や都会的な硬さを感じさせる録音が多い場所でもある。『Night Time』にも、その空気がそのまま入っている。

レーベルはEG、UK盤の初回は黒地のEGラベルで、Virgin配給。歌詞入りの光沢紙インナーが付属し、ジャケット周りの情報も当時のオリジナル盤らしい作りになっている。こうした初回仕様は、のちの再発盤と比べると、1985年当時のリリース感を強く残す部分だ。

チャート実績とバンド内での意味

商業面でも『Night Time』はKilling Jokeにとって大きな一歩だった。UKアルバムチャートで最高11位を記録し、当時の自己最高位となった。ニュージーランドでも8位に入っている。ポストパンクのバンドとして始まったKilling Jokeが、より広いロックの文脈でも届く位置に立った作品として扱われるのは、この実績が背景にある。

ただし、ここで単純にポップ化したとまとめるのは違う。音の芯には、Jaz Colemanの張り詰めた歌い方、Geordie Walkerの硬質なギター、Paul Fergusonの重いドラムが残っている。後年のインダストリアル・メタルにつながる要素も、この時点でかなり見えている。Killing Jokeが後の世代へ与えた影響を考えると、このアルバムはその橋渡しのような位置にある。

まとめ

『Night Time』は、Killing Jokeの初期衝動を保ちながら、曲としての通りやすさを前に出した1985年の重要作だ。ベルリン録音の冷えた質感、Chris Kimseyによる整理された音作り、そして「Love Like Blood」のような代表曲が、バンドの転換点をはっきり示している。ポストパンクの枠に収まりきらないKilling Jokeの性格が、ここではかなり分かりやすい形で表れている。

トラックリスト

  1. A1 Night Time 4:55
  2. A2 Darkness Before Dawn 5:18
  3. A3 Love Like Blood 6:48
  4. A4 Kings And Queens 4:38
  5. B1 Tabazan 4:34
  6. B2 Multitudes 4:56
  7. B3 Europe 4:35
  8. B4 Eighties 3:50

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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