Joy Division - Unknown Pleasures (1979)
Joy Division 1979

Joy Division - Unknown Pleasures (1979)

Rock New Wave Post-Punk

Joy Division『Unknown Pleasures』――1979年の空気をそのまま閉じ込めた、最初の長編

Joy Divisionの『Unknown Pleasures』は、1979年6月15日にUKのFactoryから出たデビュー・アルバムだ。アーティストはマンチェスター近郊のサルフォード出身で、元はWarsaw名義で活動していた4人組。Ian Curtisの低く抑えた歌声、Bernard Sumnerのギター、Peter Hookの前に出るベース、Stephen Morrisの硬質なドラムが、ここではかなり早い段階でひとつの輪郭を作っている。後のNew Orderへつながる前史としても重要だが、この作品はまずJoy Divisionそのものの出発点として聴かれている。

リリース元のFactoryは、当時のマンチェスターの空気と強く結びついた独立レーベルで、Tony Wilson、Alan Erasmus、Peter Savilleらが関わっていた。作品番号はFACT 10。ジャケットは黒い波形の図版で知られ、視覚面でも強い記号性を持つ。中央の図像は「100 consecutive pulses from the pulsar CP 1919」を元にしたものとして広く知られている。音だけでなく、レーベル全体のデザイン感覚まで含めて記憶されているアルバムだ。

録音と音像の作り方

録音は1979年4月、StockportのStrawberry Studiosで行われた。プロデューサーはMartin Hannett。ここでの仕事が、このアルバムの印象を決定づけている。ウェブ検索で確認できる通り、彼はドラムの被りを極力避ける録音環境を求め、Stephen Morrisをスタジオの屋上まで連れていって音の響きを探ったり、トイレの部品を使ってドラムキットを組み直させたりしている。仕上がりは、ライブの荒さをそのまま写したものではなく、音の間隔を細かく設計したような感触になっている。

実際に聴くと、最初に耳へ残るのは音数の少なさではなく、音と音の間に置かれた空白だ。ベースは前に出るが、ただ厚いだけではない。ドラムは乾いていて、シンバルや残響が空間を区切る。Ian Curtisの声は、歌というよりも一定の距離を保った語りに近い場面が多い。全体として、演奏の熱量を削ったのではなく、輪郭を鋭くした録音。ここにHannettの処理が強く出ている。

収録曲の流れと代表曲

収録曲の中では「Disorder」「She's Lost Control」「New Dawn Fades」「Shadowplay」「Interzone」あたりがよく知られている。「Disorder」は冒頭曲として、このアルバムの性格をそのまま示す。リズムが前へ進む一方で、音の隙間が大きく、感情の置き場が定まらない。「She's Lost Control」は、Curtisの持っていた発作への不安が曲の緊張感に結びついているように聴こえる。「Shadowplay」はギターとベースの分離がはっきりしていて、後のポストパンクやオルタナティヴ・ロックに影響を与えた要素が見えやすい。

盤面の表記ではSide AがOutside、Side BがInsideだが、プレス工程でそれが入れ替わっている点も知られている。こうした細部まで含めて、初期Factory作品らしい物としての存在感がある。

当時の位置づけ

Joy Divisionにとって『Unknown Pleasures』は、単なるデビュー作以上の意味を持つ。1978年にシングル「Transmission」や「Atmosphere」以前の段階から積み上がっていたバンドの性格が、ここで一度まとまった形になっているからだ。1979年のUKポストパンクの中でも、この作品はGang of FourやWire、The Fallと並べて語られることが多いが、Joy Divisionはより内側へ沈むような緊張感を持っていた。パンクの速度をそのまま受け継ぐのではなく、冷えた空間と反復で別の形に組み替えている。

その後の影響も大きい。New Orderへ直結するだけでなく、後年のインディー・ロック、ゴシック・ロック、シューゲイズの周辺まで、このアルバムの音の置き方や間の使い方が参照され続けている。特に、ベースが主導する推進力と、感情を抑えたボーカルの組み合わせは、以後の多くのバンドに共有された型のひとつになった。

オリジナル盤と再発盤

オリジナル盤は、テクスチャーのある外装スリーブと印刷インナーを持つ。初回は10,000枚がWest DraytonのWEAプレス工場で作られ、その後Trancoプレスも続いた。Tranco盤の一部には、光にかざすと赤く透けるビニールもある。1980年以降にも再プレスや再発が重なり、CD化、180g重量盤、40周年記念盤まで複数の形で流通している。とはいえ、1979年のUKオリジナル盤が持つFactoryらしい質感は、やはり別物として語られやすい。

『Unknown Pleasures』は、暗い作品として一括りにされがちだが、実際には音の配置、演奏の切れ方、曲順の流れがかなり明確に設計されたアルバムだ。Joy Divisionの出発点であり、同時にポストパンクの音像を決定づけた一枚。その役割は、今も変わらず大きい。

トラックリスト

  1. Outside
  2. A1 Disorder 3:36
  3. A2 Day Of The Lords 4:43
  4. A3 Candidate 3:00
  5. A4 Insight 4:24
  6. A5 New Dawn Fades 4:47
  7. Inside
  8. B1 She's Lost Control 3:58
  9. B2 Shadowplay 3:50
  10. B3 Wilderness 2:35
  11. B4 Interzone 2:10
  12. B5 I Remember Nothing 6:00

動画プレイリスト

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