Jefferson Airplane - Surrealistic Pillow (1967)
Jefferson Airplane / Surrealistic Pillow (1967)
Jefferson AirplaneのSurrealistic Pillowは、1967年のサンフランシスコを代表するサイケデリック・ロックの重要作だ。バンドにとっては2作目のアルバムで、Grace Slickが加入してから初めて完成した作品でもある。Marty BalinとPaul Kantnerを軸にした初期のフォーク・ロック的な骨格に、Slickの強い歌声とSpencer Drydenのドラムが加わり、バンドの輪郭がここで一気に固まった。
録音は1966年10月31日から11月22日にかけて、ハリウッドのRCA Victor Studioで行われた。プロデューサーはRick Jarrard。4トラック録音で、ノイズリダクションも使っていないという条件の中で制作されている。音の密度は高いが、極端に厚塗りではなく、各パートが比較的見通しよく残る。実際に聴くと、リバーブのかかった空間の奥に、歌とギター、ベースがきちんと並んでいる印象が強い。
作品の位置づけ
このアルバムは、Jefferson Airplaneを地域色の強いサンフランシスコのバンドから、全米規模の存在へ押し上げた作品として扱われることが多い。前作Jefferson Airplane Takes Offの段階ではまだフォーク・ロック寄りの印象が残るが、Surrealistic Pillowでは、当時のヒッピー文化やHaight-Ashburyの空気がより明確に反映されている。Grateful DeadやBig Brother and the Holding Companyなどと並ぶ、1967年前後の西海岸シーンの中心的な一枚。
同時代の英国サイケデリアのような装飾性よりも、こちらは歌とリフ、ハーモニーの強さで引っ張るタイプ。The Byrds的なフォーク・ロックの延長線上にありながら、より鋭く、より直接的なロックの手触りがある。
代表曲の存在感
収録曲では「Somebody to Love」と「White Rabbit」が特に有名だ。「Somebody to Love」はBillboard Hot 100で5位まで上昇し、バンド初の大きなヒットになった。Marty Balinの切迫した歌い方と、バンド全体の押しの強さがそのまま前面に出た曲で、ライヴ感のある演奏が印象に残る。
「White Rabbit」はさらに象徴的だ。Grace Slickが前バンドThe Great Society時代に書いた曲で、ラヴェルの「ボレロ」を思わせる一定のビートの上に、不思議の国のアリスのイメージを重ねた歌詞が乗る。Billboardでは8位を記録し、こちらも初のトップ10ヒットとなった。曲の進行は淡々としているのに、歌の言葉が進むほど緊張感が増していく構造で、聴き終えた後に余韻が残る。
アルバム全体の流れ
本作はヒット曲だけでなく、アルバム全体の流れにも特徴がある。「She Has Funny Cars」や「3/5 of a Mile in 10 Seconds」のような曲では、ギターの歯切れのよさとリズムの押し出しが前に出る。「Today」ではBalinの歌がかなり前景化し、バンドの中でのボーカルの役割分担が見えやすい。フォーク・ロック、ブルース、サイケデリックな感触が、1枚の中でそれぞれ別の表情を見せる構成。
聴感上は、派手なエフェクトに頼るというより、演奏と歌の組み合わせで色を作っている。Grace Slickの加入が大きいのはもちろんだが、彼女だけが主役になるわけではなく、Balin、Kantner、Kaukonen、Casadyらの役割がきちんと並立している点がこの盤の強さだ。
エピソードと評価
タイトルは、完成したテープを聴いたJerry Garciaが「Sounds like a surrealistic pillow」と評したことに由来するとされる。Garciaはジャケット裏で「Musical and Spiritual Advisor」としてクレジットされている。こうした周辺の関係も、当時のサンフランシスコ・シーンの近さを示している。
アルバムはBillboardアルバムチャートで最高3位を記録し、のちにRIAAからプラチナ認定を受けた。1967年6月のモントレー・ポップ・フェスティバル出演とも重なり、バンドは「サマー・オブ・ラブ」を象徴する存在として広く知られるようになる。2003年のRolling Stone誌「500 Greatest Albums of All Time」では146位に入り、2012年改訂版でも順位を維持した。
このUSオリジナル盤について
ここで扱うのは1967年のUSオリジナル盤で、RCA Victorの黒ラベル仕様。インディアナポリス・プレスとされ、ランアウトの「I」スタンプで識別される。ラベルは白いロゴ印刷にシルバーの曲目表記という構成で、同時期の他のプレスと細部が異なる。ジャケット表記はLSP-3766、レーベル表記はLSP 3766。裏面には「Recorded in RCA Victor's Music Center of the World, Hollywood, California.」のクレジットが入る。
Surrealistic Pillowは、Jefferson Airplaneの代表作であると同時に、1967年という年の空気をそのまま封じた一枚でもある。ヒット曲の強さ、演奏のまとまり、サイケデリック・ロックの初期形としての輪郭、そのすべてがこのLPの中に収まっている。
トラックリスト
- A1 She Has Funny Cars 3:03
- A2 Somebody To Love 2:54
- A3 My Best Friend 2:59
- A4 Today 2:57
- A5 Comin' Back To Me 5:18
- B1 3/5 Of A Mile In 10 Seconds 3:39
- B2 D.C.B.A. - 25 2:33
- B3 How Do You Feel 3:26
- B4 Embryonic Journey 1:51
- B5 White Rabbit 2:27
- B6 Plastic Fantastic Lover 2:33