Dexys Midnight Runners - Searching For The Young Soul Rebels (1980)
Dexys Midnight Runners 1980

Dexys Midnight Runners - Searching For The Young Soul Rebels (1980)

Rock Funk / Soul New Wave Soul

Dexys Midnight Runners『Searching For The Young Soul Rebels』(1980)

Dexys Midnight Runnersのデビュー・アルバム『Searching For The Young Soul Rebels』は、1980年にUKのParlophoneから登場した作品で、バンドの出発点をそのまま刻んだ1枚だ。アーティスト名が示す通り、デキシーズはニューウェーブ期の英国ポップ・ロックの中で、ソウルやR&Bの要素を強く前面に出したグループで、このアルバムでもその性格がはっきりしている。パンク以降の速い空気感の中に、ホーン・セクションを軸にした推進力と、歌に引っ張られる構成が置かれている。

バンドの初期像がそのまま入ったデビュー盤

本作はケヴィン・ローランドを中心にした初期デキシーズの輪郭を知るうえで重要な作品で、録音はオックスフォードシャーのチッピング・ノートン・レコーディング・スタジオで12日間という短い期間で行われた。参加メンバーにはケヴィン・ローランド、ケヴィン・アーチャー、ジム・パターソン、ジム・ブライス、スティーヴ・スプーナー、ピート・ウィリアムス、ピート・サンダース、アンディ・グロウコットらが並ぶ。ホーン隊を含む編成が、のちのデキシーズの印象を決定づける土台になっている。

タイトル曲は収録されていないが、アルバム全体の姿勢は明快で、労働者階級の空気、ソウルへの接近、そして英国的な言葉の運びが一体になっている。ニューウェーブの文脈に置かれながら、単なるギター・バンドの枠には収まらない作り。パンクの直後に現れたバンド群の中でも、The JamやThe Clashと並べて語られることがあるのは、この社会性と黒人音楽への視線があるからだろう。

代表曲「Geno」と「There, There, My Dear」

このアルバムを語るうえで外せないのが「Geno」だ。ソウル・シンガー、ジーノ・ワシントンへのオマージュとして書かれた曲で、1980年3月に全英シングル・チャート1位を記録した。アルバムの中でも最も広く知られた曲で、デキシーズの名前を一気に押し上げた存在だ。ホーンの勢い、コール・アンド・レスポンス的な歌の運び、そしてソウルを正面から引き受ける姿勢がまとまっている。

「There, There, My Dear」も全英7位を記録した代表曲。こちらは言葉数が多く、ローランドの語り口が前に出るタイプで、バンドの中にある切迫感と皮肉が見えやすい。デビュー・シングル「Dance Stance」は「Burn It Down」として再録音されて冒頭に置かれており、アルバムの入口からバンドの初期衝動が立ち上がる構成になっている。

制作をめぐる逸話とアルバムの性格

この作品には、マスター・テープをめぐる有名な逸話もある。ミックス作業中にメンバーがスタジオを出て、テープを持ったままバーミンガムのケヴィン・ローランド宅まで運んだという話だ。移動中にロンドンの地下鉄でテープが消磁しかけたというエピソードも残っている。結果としてEMI側に返還を求められたが、バンドは印税率を6%から9%に引き上げさせたうえでテープを返したとされる。こうした話も含めて、初期デキシーズの強引さと、作品に対する執着がよく見える。

実際に聴くと、音の重心は軽くない。テンポは前のめりでも、演奏は雑に流れず、ホーンとリズム隊が細かく噛み合っている。録音が短期間だったことを考えると、曲ごとの勢いがそのまま盤に残った印象が強い。ライブ感のある勢いと、ソウルへの参照が同居した作り。後年のより大きな編成やドラマティックな展開を知ってから聴くと、ここではまだ骨格がむき出しだと感じる。

ジャケット、歌詞、盤の仕様

オリジナル盤は1980年UKリリースで、ParlophoneのPCS 7213。今回の盤も1980年のリリースとして扱われる。厚紙スリーブにグロス仕上げのジャケット、さらにライナーノーツ付きのカード内袋が付く仕様で、片面にはバンド結成の説明、もう片面には歌詞が載る。歌詞は一部に注記があり、内袋には「Some of the words here are not necessarily used in the songs but we think they add to the picture」という但し書きもある。作品の周辺情報まで含めて、かなり作り込まれた初期盤だ。

ジャケットには、1971年のベルファストでの騒乱によって家を追われた13歳のアイルランド系カトリックの少年の写真が使われた。のちに本人がアンソニー・オショーネシーと名乗り出たという話も知られている。音楽面だけでなく、社会的な背景を視覚的にも抱え込んだデザインになっている。

当時の位置づけ

『Searching For The Young Soul Rebels』は、デキシーズにとっての出発点であり、同時に1980年前後の英国ポップの中でソウルを正面に置いた重要作でもある。NMEの年間ベスト・アルバム選出、後年の高評価、そして『死ぬまでに聴きたいアルバム1001枚』への収録など、評価の積み重ねもある。The SpecialsやMadnessのような2トーン勢とは少し別の場所にいながら、英国の若いバンドが黒人音楽をどう受け止めたかという流れの中では、はっきりした存在感を持つ1枚だ。

デキシーズの初期衝動、ソウルへの敬意、そしてケヴィン・ローランドの強い主導性。その3つが、1980年の時点ですでにこのアルバムの中でまとまっている。

トラックリスト

  1. A1 Burn It Down
  2. A2 Tell Me When My Light Turns Green
  3. A3 The Teams That Meet In Caffs
  4. A4 I'm Just Looking
  5. A5 Geno
  6. B1 Seven Days Too Long
  7. B2 I Couldn't Help If I Tried
  8. B3 Thankfully Not Living In Yorkshire It Doesn't Apply
  9. B4 Keep It
  10. B5 Love Part One
  11. B6 There, There, My Dear

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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