Associates - Sulk (1982)
Associates『Sulk』──1982年UKニュー・ポップの到達点
Associatesの『Sulk』は、1982年にUKでリリースされた2作目のアルバムで、バンドの名前を広く知らしめた代表作として語られることが多い作品だ。Billy MacKenzieとAlan Rankineを軸にしたこのユニットは、ニュー・ウェイヴ、シンセ・ポップ、アート・ロックの要素を行き来しながら、同時代のポップ・バンドよりもずっと装飾の多い音像を作り上げている。ヒット曲を含みつつ、曲の並び全体で独特の緊張感を保つタイプのアルバムで、1980年代初頭のUKシーンの中でもかなり個性が強い。
この作品は、Associatesにとって商業的にも重要な位置を占める。UKアルバム・チャートでは最高10位を記録し、通算20週チャートインした。先行シングルの「Party Fears Two」と「Club Country」が注目を集め、アルバム本体へつながっていく流れもはっきりしている。とくに「Party Fears Two」は、グループの名前を一般のリスナーに押し上げた代表曲として扱われることが多い。
厚みのある音作りと、曲ごとの振れ幅
『Sulk』を聴くとまず感じるのは、ポップソングとしての輪郭がはっきりしていながら、音の積み方がかなり密なことだ。シンセの層、リズムの押し引き、ボーカルの存在感が重なり、単なる軽快なニュー・ウェイヴには収まらない。曲によっては鋭さが前に出る一方で、別の曲では甘さや艶っぽさが強く出る。そうした振れ幅がアルバム全体の印象を作っている。
実際に聴くと、Billy MacKenzieの声の使い方がかなり印象に残る。高音域の伸びだけでなく、言葉の置き方やフレーズの切り方に癖があり、楽曲の輪郭をさらに際立たせている。Alan Rankineの側は、アレンジの組み立てでこの声を受け止める役割が大きく、派手さと整合性の両方を保っている感じがある。ポップでありながら、制作の手触りはかなり作り込まれている。
制作の過剰さがそのまま音に出た作品
後年の証言では、このアルバム制作はかなり無茶な進み方をしたとされる。録音中に水を使ったり、変則的な手法が持ち込まれたり、レーベルからの前払い金を短期間で使い切ったという話も残っている。そうした逸話は、単なる暴露話というより、『Sulk』の音の密度や過剰な装飾感を裏づける材料として読まれている。
実際、アルバム全体には、整ったポップ作品というより、勢いと浪費の両方が同居したような感触がある。きれいにまとまる瞬間もあるが、その直前までの展開には少し危うさが残る。そこがこの作品の面白さでもある。きっちり作られたヒット作というより、制御しきれない熱量が音になったアルバム、という見方がしっくり来る。
同時代のUKポップ/ニュー・ウェイヴとの距離
1982年という時期を考えると、『Sulk』は同時代のシンセ・ポップやニュー・ウェイヴの中でも、かなり装飾的で芝居がかった側に位置する。単純な電子音中心のミニマルさではなく、ロックの骨格とポップのフック、さらにアート寄りの構成感が混ざっている。The CureやFiction Records周辺の流れを知っていると、Associatesがそこからさらに別方向へ進んだことが見えやすい。
また、のちのUKインディー・ポップやニュー・ポップ文脈で再評価されるのも納得しやすい。派手なメロディと、少し不穏な空気、そして歌い手の強烈な個性が前面にある点で、後続のアーティストにとっても参照しやすい要素が多い。とはいえ、似たタイプの作品をすぐに思い浮かべにくいのもこのアルバムの特徴だ。
レーベルとジャケットの位置づけ
UKでは、Warner傘下での契約の都合から、Associates名義のレーベルで出された作品でもある。これはグループの信用を保つために用意された枠組みで、当時のバンドの立ち位置をよく示している。初回盤では、歌詞が印刷された光沢のあるピクチャー内袋が付いていた。アルバムの外観まで含めて、かなり意図を持って作られた作品だとわかる。
さらに、後年には収録順や曲目が異なる版が複数存在することも知られている。つまり『Sulk』は、単に一枚の固定された完成品というより、版によって印象が少し変わる作品でもある。オリジナルの1982年盤を起点にすると、その時点でのバンドの勢いとレーベルの期待が、最も濃く反映された形として受け取れる。
まとめ
『Sulk』は、Associatesが短期間で一気に存在感を高めた時期の中心にあるアルバムだ。シングルの成功、チャートでの上昇、そして制作面の過剰さまで含めて、1982年のUKポップの中でもかなり特異な位置にある。Billy MacKenzieの声と、Alan Rankineの構成感がぶつかり合いながら、甘さと緊張感を同時に抱えた音像を作っているところが、この作品の核だと言える。
派手なヒットの裏で、バンド内部の関係はすでに不安定になっていたが、その不安定さもまた音に滲んでいる。『Sulk』は、Associatesという名前を決定づけた一枚として、今でも十分に存在感のあるアルバムだ。
トラックリスト
- A1 Arrogance Gave Him Up 3:00
- A2 No 5:49
- A3 Bap De La Bap 4:17
- A4 Gloomy Sunday 4:11
- A5 Nude Spoons 4:19
- B1 Skipping 4:02
- B2 It's Better This Way 3:30
- B3 Party Fears Two 5:44
- B4 Club Country 5:34
- B5 Nothinginsomethingparticular 2:18
動画
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Party Fears Two (2016 Remaster)
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Arrogance Gave Him Up (2016 Remaster)
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No (2016 Remaster)
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Bap De La Bap (2016 Remaster)
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Gloomy Sunday (2016 Remaster)
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Nude Spoons (2016 Remaster)
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Skipping (2016 Remaster)
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It’s Better This Way (2016 Remaster)
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Club Country (2016 Remaster)
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Nothinginsomethingparticular (2016 Remaster)