Kano - Kano (1980)
Kano『Kano』――イタロ・ディスコ初期を形づくった1980年作
イタリアのプロジェクト、Kanoによる同名アルバム『Kano』は、1980年に登場したデビュー作である。制作の中心には、Stefano Pulga、Luciano Ninzatti、Matteo Bonsantoといったイタリアのプロデューサー/ミュージシャンがいて、そこにGlen Whiteの深みのあるR&B寄りのヴォーカルが乗る構成になっている。いわゆるディスコの流れを引き継ぎながら、シンセサイザー主体の打ち込み感を前面に出した作りで、後にイタロ・ディスコの初期例として語られることが多い作品だ。
このアルバムの存在感を決定づけているのは、やはり代表曲“I’m Ready”である。1980年当時にダンス・チャートで大きな反応を得て、のちのクラブ文化やブレイクダンス文脈でも長く参照されることになった。Kanoの音楽は、単にディスコの延長というより、より機械的で、リズムの輪郭がはっきりした方向へ進んでいる点が重要で、80年代前半のダンス・ミュージックの変化を先取りした印象がある。
作品の位置づけ
Kanoは、イタロ・ディスコの“始まり”を語る際にしばしば名前が挙がる存在である。同時代のイタリア産ダンス音楽の中でも、メロディの明快さとシンセの推進力、そして英語ヴォーカルによる国際性がはっきりしていて、後のイタロ・ディスコの定型に近い要素がすでに揃っている。さらに、80年代後半に広がるエレクトロやブレイクダンス向けの音像へもつながっていくため、単なるディスコ作品としてではなく、ダンス・ミュージックの接続点として見ると輪郭がつかみやすい。
このアルバムは、Kanoというプロジェクトの初期3作の中でも特に基準点になっている。続く“It's a War”や“Ahjia”へ連なる流れを思うと、ここで提示されたシンセ中心の設計図が、その後の展開をかなり早い段階で示していたことがわかる。クラブ向けの実用性を持ちながら、当時のイタリア制作らしい洗練もある、というバランスが特徴だ。
収録曲と代表曲
収録曲の中では“I’m Ready”が最も広く知られている。アメリカではディスコ・チャートで1位を記録したとされ、R&Bチャートでも一定の成果を残した。単発のヒットとして終わらず、後年にサンプリングや引用の対象になったことからも、曲そのもののフックの強さがうかがえる。“It's a War”も重要で、攻撃的なタイトル通り、緊張感のあるビートと反復が印象に残る。“Ahjia”はよりメロディの流れが前に出る曲として知られ、アルバム全体の中で表情を変える役割を担っている。
実際に耳を通すと、音の作りはかなり直線的で、ベースとドラムの押し出しがはっきりしている。そこにシンセのリフが重なり、ヴォーカルは過度に感情を押し出しすぎず、むしろリズムの一部として機能している。ディスコの華やかさを残しつつ、より乾いた質感に寄せている点が、この時期のイタリア制作らしいところだと感じられる。
2021年盤について
今回の盤は2021年のイタリア盤で、レーベルはGoodymusic Production srl。Goody Music Productionの系譜を引く現在の法人による再登場盤で、オリジナルの1980年盤からかなり時間を置いた再発である。レーベルのクレジットや体裁は現行の再発仕様に沿っている一方、作品そのものはあくまで1980年当時のアルバムとして理解するのが自然だろう。リリースノートにあるように、B面ラベルに個別番号が振られている点も、この再発盤の仕様として目を引く。
再発盤として見ると、オリジナルの時代感をそのまま持ち込むというより、現代のコレクションや再評価の流れの中で触れやすくなった盤という印象が強い。Kanoのように、当時の商業的成功以上に後年のダンス・ミュージック史で評価が固まった作品は、こうした再発によって改めて存在感を持ち直すことが多い。
まとめ
『Kano』は、1980年のイタリア産ダンス・ミュージックがどこへ向かっていたのかを、かなり早い段階で示したアルバムである。ディスコの延長線上にありながら、イタロ・ディスコ、エレクトロ、ブレイクダンス文化へとつながる要素をすでに含んでいる点が重要だ。代表曲“I’m Ready”の強さだけでなく、アルバム全体の設計にこそ、この作品の価値がある。派手な大作というより、後の時代に効いてくるタイプの記録として、今も参照され続けている一枚だ。
トラックリスト
- A1 It's A War 6:52
- A2 Now Baby Now 5:52
- A3 Cosmic Voyager 6:19
- B1 Ahjia 6:10
- B2 Super Extra Sexy Sign 6:28
- B3 I'm Ready 6:30