Peter Richard - Frozen Red (1983)
Peter Richard 1983

Peter Richard - Frozen Red (1983)

Electronic Italo-Disco

Peter Richard『Frozen Red』(1983)について

Peter Richardの『Frozen Red』は、1983年にイタリアのFull Time Recordsからリリースされたイタロ・ディスコ作品である。全体としては、80年代初頭のイタリアン・ダンス・ミュージックらしい、打ち込み主体のリズムとシンセサイザーの輪郭が前に出たアルバムとして位置づけられる。アーティスト名義のPeter Richardは、本名ウォルター・ベイナートとしても知られており、本作はその代表的なタイトルとして扱われている。

レーベルのFull Time Recordsは、イタリアのダンス・ミュージック史の中でも重要な存在として知られる。Goody Music Recordsの流れを汲みながら、国際的な感覚を持つ作品も多く扱っていたレーベルで、本作もその文脈にある1枚だ。イタロ・ディスコの中でも、単にフロア向けの機能性だけでなく、メロディやアレンジに独特の色を持たせた作品が並ぶ時期のリリースとして見ておくとわかりやすい。

制作面と収録曲の輪郭

クレジットを見ると、本作はFull Time Productionのために制作され、ボローニャのFonoprint Studiosで録音されている。追加録音はミラノのG.R.S. Studiosで行われたと記されており、イタリア北部の複数スタジオを使った制作体制だったことがわかる。編曲と指揮にはセルソ・ヴァリが関わっており、演奏や音作りの面でも当時のイタロ・ディスコらしいプロダクションの厚みがうかがえる。

収録は全7曲、約34分前後のアルバムとして確認できる。長大な組曲型ではなく、曲ごとの推進力を重ねていく構成で、80年代初期のダンス・アルバムとして自然なまとまりがある。各曲の役割が比較的はっきりしていて、ビートを前に出す曲、メロディを残す曲、夜の温度を保つような曲が並ぶ印象だ。

代表曲「Walking in the Neon」

本作で特に言及されるのが「Walking in the Neon」である。この曲は後年の再評価の中で代表曲として扱われることが多く、アルバムの中でも記憶に残りやすい位置にある。機械的なリズムの上に、冷たさを含んだシンセのフレーズとボーカルが重なっていく作りで、イタロ・ディスコの基本形を押さえながら、少し硬質な感触を持っている。

実際に聴くと、単純に派手なだけのダンス・トラックではなく、音の隙間や反復の置き方に特徴がある。ベースラインは前へ進む役割を持ち、上物のシンセはきらびやかというより、夜の街の光を切り取るような配置に寄っている。こうした質感が、この曲を「秘蔵のダンスフロア・クラシック」として語らせる理由になっているのだろう。

作品の位置づけ

『Frozen Red』は、発売当時に大きな商業的成功を収めたアルバムというより、制作側の意欲が強く出た作品として見られている。公開されている範囲ではアルバム全体の明確なヒット記録は目立たない一方、「Walking in the Neon」はシングルとして後年まで語られやすく、本作を代表する入口になっている。つまり、アルバム全体が一気に広く知られたというより、1曲の持続力によって存在感が保たれてきたタイプの作品といえる。

同時代のイタリア産エレクトロニック作品と比べると、『Frozen Red』は、軽やかさだけに寄らず、少し陰のあるムードを残している点が印象に残る。Kanoのようなフロア志向の強い作品群や、Tom Hookerらが関わったイタロ・ディスコの洗練された路線と並べても、本作はより冷えた質感と、夜の景色を思わせる構成が前に出る。そうした違いが、後年のイタロ・ディスコ再発見の流れの中で評価される土台になっている。

当時と後年の受け止め

後年の回想では、制作にはかなりの力が注がれた一方で、当時の一般的な受け止めは十分ではなかったという見方が示されている。ここから見えてくるのは、ヒット狙いの定型作品というより、音像の更新を試みた意欲作という姿だ。イタロ・ディスコは後年、レア盤や再評価盤として掘り返されることが多いが、『Frozen Red』もその流れの中で再び注目された1枚といえる。

今聴くと、80年代初頭の電子音楽が持っていた実験性と、ダンス・ミュージックとしての即効性が同居している点が見えやすい。派手な大作ではないが、音の置き方や曲の運びに当時のイタリアらしい手つきが出ていて、イタロ・ディスコの幅を示す作品として記憶されている。

まとめ

Peter Richard『Frozen Red』は、1983年のイタリア産イタロ・ディスコ/シンセ・ポップの文脈に置くと理解しやすいアルバムである。Full Time Recordsのカタログの中でも、国際的なダンス・サウンドを意識した作りが目立ち、代表曲「Walking in the Neon」を軸に後年まで語られてきた。アルバム全体としては、派手な成功作というより、制作の熱量と音作りの個性が残るタイトルとして見ておくのが自然だろう。

トラックリスト

  1. A1 For You, For Only You 4:30
  2. A2 Walking In The Neon 6:46
  3. A3 Marlene 4:28
  4. B1 Fly Away 4:58
  5. B2 School Years 4:08
  6. B3 Le Planéte Nous Régarde 5:00
  7. B4 Talk About Me 4:24

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