Kavinsky - Outrun (2013)
Kavinsky 2013

Kavinsky - Outrun (2013)

Electronic Downtempo Electro

Kavinsky『OutRun』(2013)について

フランスのプロデューサー/DJ、KavinskyことVincent Belorgeyによる『OutRun』は、2013年にリリースされたデビュー・フルアルバムだ。80年代のシンセサイザー中心の映像的な音像を、現代のエレクトロ/ダウンテンポの文脈へ持ち込んだ作品として知られている。Kavinskyは、サウンドだけでなく、事故死してゾンビとして蘇ったという架空の設定まで含めて世界観を作り上げてきたアーティストで、このアルバムもその物語性を前面に押し出した一枚になっている。

作品の位置づけ

『OutRun』は、Kavinskyにとって代表作といえるアルバムだ。もともと「Nightcall」の成功で注目を集め、その後、映画『Drive』で同曲が広く知られたことで、Kavinskyの名前はシーンの外にも届いた。『OutRun』は、その流れを受けてまとまった長編作品という印象が強い。単なるシングルの寄せ集めではなく、映画のような筋書きを意識したアルバムとして組み立てられている点が大きい。

サウンドの特徴

この作品でまず目立つのは、80年代の映画音楽やシンセ・ポップを思わせる音作りだ。金属感のあるシンセ、太いベース、一定の推進力を持つビートが中心にあり、車、夜の高速道路、ネオンといったイメージが自然に立ち上がる。ジャンル表記としてはElectronic、Electro、Downtempoに収まるが、実際にはクラブ向けの機能性よりも、場面を描くための音の並びが前に出ている。

聴いていると、各曲が独立したトラックというより、ひとつの映像作品の場面転換のように感じられる。テンポの速い曲だけで押し切るのではなく、間を取るような曲も挟みながら、全体の流れを作っているあたりがアルバムとしてのまとまりにつながっている。いわゆるシンセウェイヴ/レトロウェイヴの文脈で語られることが多いのも納得しやすい内容だ。

収録曲と知られた楽曲

代表曲としては、やはり「Nightcall」が外せない。もともとこの曲がKavinskyの名前を広く知らしめた中心にあり、アルバムでも重要な位置を占めている。別のゲスト・ボーカルを迎えた曲も含めて、インスト主体の作品の中に人の声が入ることで、アルバム全体の輪郭がはっきりしている。既発曲の再構築と新曲を組み合わせている点も、この作品の特徴として挙げられる。

また、リリース情報としては、レコードのSide Aがロックド・グルーヴで終わる仕様になっている。アナログ盤ならではの遊びが入っているのも、この作品の物理的な面白さのひとつだ。盤の初出年が2013年なので、同年のフランス盤として受け取るのが自然だろう。

同時代の文脈

『OutRun』が出た時期は、80年代回帰のサウンドがかなり広く受け止められていた頃だが、Kavinskyはその中でもかなり映画的な側に寄っている。Pitchforkがスピード感や自動車的なイメージを評価しつつ、ダンス・ミュージックというより硬質なシンセ・ロック的な美学として捉えたのは、この作品の性格をよく表している。NMEも、B級ホラー映画のような物語性やソフトロック風のギター、ゲスト参加の組み合わせを挙げて、まとまりのある作品として見ていた。

制作面ではSebastiAnのようなフランスのエレクトロ周辺の仲間が関わっており、フレンチ・エレクトロの系譜の中に置くこともできる。ただし、Daft PunkやJusticeのようなダンス・フロアの強さとは少し違い、こちらは夜のドライブ、カーチェイス、ホラー映画の断片のような感覚が前に出る。そうした意味で、Kavinskyはシーンの中でもかなり独自の立ち位置を築いたアーティストといえる。

アルバムとしての印象

『OutRun』は、単に懐古趣味のシンセ作品というより、ひとつの物語を音で進めるアルバムだ。実際に聴くと、楽曲ごとのフックよりも、音色の統一感と場面の切り替わりが印象に残る。派手さだけでなく、低めのテンションで進む曲の配置も効いていて、全体としてはかなり計算された構成に感じられる。

フランスでは高いチャート成績を残し、英国でもダンス・アルバムとして一定の存在感を示したことからも、クラブ専門の一部作品ではなく、広い層に届いたアルバムだったことがうかがえる。Kavinskyの世界観を最もはっきり示した一枚として、『OutRun』は今でもこの名義を語るうえで中心に置かれる作品だろう。

トラックリスト

  1. A1 Prelude 1:54
  2. A2 Blizzard 3:27
  3. A3 ProtoVision 3:26
  4. A4 Odd Look 4:49
  5. A5 Rampage 2:55
  6. A6 Suburbia 3:28
  7. A7 Testarossa Autodrive 3:37
  8. B1 Nightcall 4:18
  9. B2 Deadcruiser 3:33
  10. B3 Grand Canyon 3:12
  11. B4 First Blood 3:04
  12. B5 Roadgame 3:44
  13. B6 Endless 2:59

動画プレイリスト

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Downtempo"

toast