A Split - Second - Ballistic Statues (1987)
A Split - Second 1987

A Split - Second - Ballistic Statues (1987)

Electronic Electro EBM

A Split-Second『Ballistic Statues』について

ベルギーの電子音楽ユニット、A Split-Secondが1987年に発表したデビュー・アルバムが『Ballistic Statues』だ。Marc HeyndrickxことMarc Ickxと、Peter BonneことChrismar Chayellを中心に動いていたこの時期のA Split-Secondは、後のWax Trax!期に比べるとまだローカルなベルギーのシーンに強く根ざしていて、EBMやニュー・ビートの初期像をそのまま記録したような位置にある。1986年のEPで注目を集めたのち、その翌年にまとまった形で提示されたのが本作である。

ニュー・ビートとEBMの交差点にある作品

このアルバムを語るうえで外せないのが、前年のシングル「Flesh」の存在だ。アントワープのクラブでDJのDikke Ronnyがこの曲を33回転でかけたことが、ニュー・ビート誕生のきっかけとして広く知られている。『Ballistic Statues』は、その流れを受けた作品として聴かれることが多い。電子ドラムの硬い打ち込み、シンセの短いフレーズ、低く押し出すボーカル、そこへ荒いギターが差し込まれる構成で、当時のベルギー産インダストリアル周辺の空気が濃い。

同時代の比較対象としては、同じくベルギーのFront 242や、後のWax Trax!周辺で活動するインダストリアル勢が思い浮かぶ。だがA Split-Secondは、機能性の強いビート感に加えて、曲の作りに歌ものとしての輪郭を残している点が特徴的だ。ダンスフロア向けの圧力と、アルバム単位での構成の両方を持とうとしている印象がある。

収録曲と代表曲「Rigor Mortis」

本作で代表曲として語られることが多いのが「Rigor Mortis」だ。重い反復の上に、切れ味のある電子音とギターが乗るタイプの曲で、A Split-Secondの初期像を端的に示している。前年の「Flesh」がシーンの転機として扱われる一方で、このアルバムではその感触を長編化し、よりアルバムらしい流れに落とし込んでいる。シングル曲だけでなく、全体を通して当時の制作環境やバンドの方向性が見えやすい内容だ。

なお、ジャケットやライナーでは作曲・制作クレジットに表記の揺れがある。ジャケットと歌詞シートではIckxが全曲の作曲者として記され、レーベル面ではA4とB1にChayellの共作クレジットが入る。制作面ではIckx-Chayell名義、レーベル面ではA Split Second名義という違いも残っていて、当時のバンド内部の役割分担がそのまま記録されている。

制作背景とベルギーのローカル・シーン

録音とマスタリングはベルギー・ゲントのTop Studioで行われ、流通はPIAS Brusselsが担当した。ライナーには1987年1月に夜通し制作された旨が記されていて、短期間に集中的に仕上げられた作品であることがわかる。ベルギーの独立レーベルAntler Recordsからのリリースで、当時のアントワープ〜アールスコート周辺のオルタナティブ/ダンス系ネットワークの中で育った作品でもある。

この時期のA Split-Secondは、Marc IckxとPeter Bonneに加えてPhilip V.も含む編成で活動していた。のちにバンドはWax Trax!と契約し、アメリカ市場へ展開していくが、その前段階としての『Ballistic Statues』には、まだベルギー国内のシーンにおける実験性と実務性が同居している。後年のギター寄りの展開に比べると、ここでは電子音主体の緊張感が前に出ている。

オリジナル盤としての位置づけ

この盤は1987年のオリジナル・リリースで、後年の再発盤とは別に、初出時の空気をそのまま持つ版本として扱われる。付属の白黒印刷の歌詞シートには、このアルバムの歌詞に加えて「Flesh」12インチの歌詞や画像も収められていて、当時のバンドがどの曲を軸に見られていたかもわかる構成だ。A Split-Secondにとっては、代表曲「Flesh」の周辺からアルバム・アーティストへ移る最初の大きな節目の一枚として残っている。

ベルギーのEBMとニュー・ビートが混ざり合っていた時代、その入口のひとつに置かれる作品。『Ballistic Statues』は、シングルの話題性だけでなく、バンドがアルバム単位でどんな音像を組み立てていたかを示す記録として読める。

トラックリスト

  1. A1 Rigor Mortis 4:50
  2. A2 Drinking Sand 4:51
  3. A3 Neurobeat 4:05
  4. A4 Close Combat 4:18
  5. B1 Check It Out 5:30
  6. B2 Cybernetics And Pavlovian Warfare 3:03
  7. B3 Ballistic Statues 8:11

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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