Manfred Mann's Earth Band - The Roaring Silence (1976)
Manfred Mann's Earth Band『The Roaring Silence』
Manfred Mann's Earth Bandが1976年にBronze Recordsから発表した通算7作目のスタジオ・アルバム。前作『Nightingales & Bombers』の発表後、結成以来のフロントマンだったミック・ロジャース(ギター/ボーカル)が脱退。後任としてニュージーランド出身の実力派シンガーであるクリス・トンプソンと、リード・ギタリストのデイヴ・フレットが加入した。マンフレッド・マンによる変幻自在のモーグ・シンセサイザーとピアノを軸に、バンド史上最大の商業的成功を収めた金字塔である。
制作背景・エピソード
録音は1976年、ロンドンのオールド・ケント・ロードにあるThe Workhouseで行われた。コリン・パテンデン(ベース)と、のちにAC/DCやThe Firm、Asiaなどで活躍するクリス・スレイド(ドラム)の鉄壁のリズム隊が演奏を支えた。
アルバム冒頭の「Blinded By The Light」は、ブルース・スプリングスティーンが1973年のデビュー作『Greetings from Asbury Park, N.J.』に収録していた楽曲の大胆なカバー。トンプソンの力強いハイトーン・ボーカルと、シンセサイザーのリフ、疾走するバンド・サウンドが融合したドラマティックなアレンジが施された。スプリングスティーンの原詞「revved up like a deuce」をトンプソンが「wrapped up like a douche」と発音したことで歌詞の誤聴論争が巻き起こり、スプリングスティーン本人も後年「あの誤解のおかげで1位になったのではないか」とユーモアを交えて語っている。
サウンドと楽曲の聴きどころ
A1「Blinded By The Light」は、キャッチーなメロディの中に変拍子やポリフォニックな鍵盤ソロが巧みに織り込まれたプログレ・ポップの不朽の傑作。続くA2「Singing The Dolphin Through」はインクレディブル・ストリング・バンドのマイク・ヘロンの楽曲を取り上げたもので、バーバラ・トンプソンのサックスを交えた叙情美あふれるバラードとなっている。ライブ録音にスタジオ・オーバーダブを施したインストゥルメンタルA3「Waiter, There's A Yawn In My Ear」では、バンドの白熱した即興演奏の技量が堪能できる。
B面ではクラシック音楽の大胆なロック翻案が冴え渡る。「Starbird」ではストラヴィンスキーのバレエ音楽『火の鳥』の主題を豪快なプログレッシブ・ハード・ロックへと転生させ、ラストを飾る「Questions」ではシューベルトの『即興曲 変ト長調 作品90の3』のメロディを優美なロック・バラードへと昇華させている。
時代の文脈
1976年は、パンク・ロックの台頭によって従来のプログレッシブ・ロックが大きな転換期を迎えていた時代。その中で本作は、プログレの緻密な構成力と高い演奏技術を失うことなく、明快なメロディとラジオ映えするフックを兼ね備えたアリーナ・ロック的ダイナミズムを先取りしていた。
ジャケットは耳の中に口が配置されたシュールな彫刻(Derek Goldsmith作、Martyn Goddard撮影、Shirtsleeve Studioデザイン)をフィーチャーした特徴的なアートワークで、ピーチスキン加工の手触りを持つスリーブ仕様となっている。
後世への影響と評価
シングル「Blinded By The Light」は1977年2月に全米Billboard Hot 100で1位を獲得し、カナダでも1位、全英でも6位を記録。本作はブルース・スプリングスティーンがソングライターとして全米1位を記録した史上唯一の楽曲となった(スプリングスティーン自身の最高位は「Dancing in the Dark」の2位)。アルバム自体も全米Billboard 200で最高10位まで上昇し、RIAAのゴールド・ディスクに認定されている。
また、クリス・トンプソンのソウルフルで伸びやかな歌唱は80年代アリーナ・ロックやAORのシンガーたちに大きな影響を与え、クリス・スレイドのパワフルなドラミングも高く評価されるなど、参加メンバーのその後の輝かしいキャリアを決定づけた重要作として語り継がれている。
トラックリスト
- A1 Blinded By The Light 7:06
- A2 Singing The Dolphin Through 8:16
- A3 Waiter, There's A Yawn In My Ear 5:35
- B1 The Road To Babylon 6:49
- B2 This Side Of Paradise 4:45
- B3 Starbird 3:05
- B4 Questions 3:55
動画プレイリスト
このアーティストについて
Manfred Mann's Earth Bandは、1971年に南アフリカ出身のキーボーディスト、Manfred Mann(本名Manfred Lubowitz)が結成したロック・バンドだ。前身...
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