Moirana - Loners & Lovers (1974)
Moirana『Loners & Lovers』――デンマーク産メロディック・ロックの一枚
1974年にデンマークでリリースされたMoiranaの唯一のアルバムが、この『Loners & Lovers』。Rosenberg Studios, Copenhagenで1973年冬から74年にかけて録音され、Polydorのオリジナル盤として登場した作品だ。メンバーにはNils Henriksen、Ken Gudman、Ole Prehn、Hans Lauridsen、Bill Hazen、Thorkild Nielsenが名を連ねる。デンマークのロック史の中では、複数のバンド経験を持つ演奏者が集まって成立した作品として知られている。
このアルバムは、フォークロック、ブルースロック、クラシック・ロック、プログレッシブ・ロックの要素がひとつの流れにまとまった内容で、いわゆる70年代前半の欧州ロックらしい整理された作りが印象に残る。実際の紹介でも、三声のハーモニー、アコースティック・ギター、ボトルネック・ギター、リード・ギターに加えて、ヴィブラフォンやストリングスが使われている点が挙げられている。音数を増やしながらも、各パートが前に出すぎない配置で、歌と演奏のバランスを保っているところがこの盤の核になっている。
バンドの成り立ちと作品の位置づけ
Moiranaは1970年代に活動したデンマークのロック・バンドで、この『Loners & Lovers』が唯一のアルバムとして残っている。中心にいるのは、Day Of The Phoenix出身のOle PrehnとHans Lauridsen、Culpeper’s Orchard出身のNils HenriksenとKen Gudmanで、そこに他のメンバーが加わっている。経歴の異なる演奏者が持ち寄った感触がそのまま作品に出ていて、単独のシーンから自然発生したバンドというより、経験値のあるプレイヤーが集まった構成に見える。
Nils Henriksenが多くの曲を書いていることも確認できる。作曲の軸がはっきりしているため、曲ごとの色は変わっても、アルバム全体の輪郭は崩れにくい。ポップな耳当たりを持ちながら、演奏面では細部まで詰めた印象がある。
音の特徴
この作品でまず目につくのは、歌の重なり方だ。三声ハーモニーは単なる装飾ではなく、曲の推進力として機能している。そこにアコースティック・ギターの刻みや、少し土の匂いのあるボトルネック・ギターが入り、ロックンロール寄りの推進とフォーク寄りの柔らかさが同居する。さらに、ヴィブラフォンやストリングスが入ることで、楽曲の輪郭が少し広がり、70年代前半の欧州録音らしい整った質感が生まれている。
聴感としては、Crosby, Stills & Nashのようなボーカル・ワーク、The Bandに通じるバンド感、Neil Young周辺を思わせる土っぽさが引き合いに出されることがある。ただし、単純な模倣ではなく、演奏やアレンジの整理の仕方にデンマークのバンドらしい端正さがある。派手な展開で押すより、曲の中で音の置き方を丁寧に積み上げるタイプのアルバムだ。
収録曲と印象
代表曲として広く知られる単独ヒットが前面に出るタイプではないが、アルバム全体が一続きの流れで聴かれる作りになっている。曲単位で大きく飛び出すというより、ハーモニー、リフ、アレンジの積み重ねで印象を残す。Nils Henriksen作の楽曲群を軸に、ロックンロールの勢いとフォークロックの歌心が行き来する構成だ。
録音はRosenberg Studios, Copenhagen。冬のセッションという記録もあり、音のまとまりにはその環境が反映されているように感じられる。演奏はきっちりしていて、ラフさを前面に出すよりも、録音物としての完成度を優先した雰囲気がある。ポリドールからの発売らしく、当時の商業ロックの枠組みの中で、かなり手の込んだ一枚として仕上げられている。
当時の反応とその後
デンマーク国内では、1974年4月から11月にかけてヒットリストに長く登場し、最高2位まで上がっている。国内でしっかり受け止められた作品だったことがうかがえる数字だ。1974年末にはBillboardの業界情報にもMoiranaの名が見え、Polydor所属バンドとして認識されていたことも確認できる。
後年の回顧では、美しさや上品さ、洗練の高さが語られることが多い。荒削りな初期衝動よりも、まとまりのよさやアンサンブルの精度が評価されやすいアルバムだ。デンマーク産ロックの中でも、英米の有名バンドを参照しながら独自の整え方を見せた例として、位置づけやすい一枚になっている。
オリジナル盤について
オリジナルは1974年のデンマーク盤で、Polydor 2380 023。ジャケットには印刷されたインナー・スリーブが付属していた。ラベルには「All titles Intersong A/S」と記載があり、ランアウトはスタンプ打ち。Polydorの70年代前半らしい仕様で、当時のオリジナル盤としての特徴がはっきりしている。
Moiranaの『Loners & Lovers』は、派手な逸話で語られる作品ではないが、演奏、ハーモニー、アレンジのまとまりで記憶に残るアルバムだ。デンマークの70年代ロックをたどるうえで、ひとつの到達点として見ておきたい内容である。
トラックリスト
- A1 City Rambling Boy 3:40
- A2 Break It Up 5:15
- A3 Rock'n'Roll Man 4:10
- A4 A Theme For Loners & Lovers 2:40
- A5 Since You've Been Gone 4:20
- B1 Fortune & Fame 3:15
- B2 Late Night Woman Blues 5:30
- B3 (New Version) Alone 5:30
- B4 Deep Within The Storm 5:10