Ram Jam - Ram Jam (1977)
Ram Jam『Ram Jam』
ニューヨーク出身のハード・ロック/ブギー・ロック・バンド、Ram Jamが1977年にEpicから発表したデビュー・アルバム。看板曲である冒頭の「Black Betty」は、ギタリストのビル・バートレットが以前率いていたバンドStarstruckで1975年に録音した音源を編集・再構成したもので、そこに新編成のバンドによる楽曲群を加えて完成された。痛快なギター・リフと疾走するブギー・ビートが全編を貫く快作である。
制作背景と録音の経緯
出発点は、The Lemon Pipers「Green Tambourine」で知られるギタリストのビル・バートレットによる、伝統的な黒人労働歌/ブルース「Black Betty」(レッド・ベリーの歌唱などで有名)のハイテンポなロック改編だった。バートレットが率いていたStarstruckによる自主録音に注目したのが、かつてThe Lemon Pipersを手がけたバブルガム・ポップ界の大物プロデュース・チーム、ジェリー・カセネッツとジェフリー・カッツである。
カセネッツ&カッツはバートレットを中心に、マイク・スカヴォーネ(ボーカル)、ハワード・アーサー・ブラウベルト(ベース、かつてビリー・ジョエルとともにThe Hasslesに在籍)、ピーター・チャールズ(ドラム)、ジミー・サントロ(ギター)を集めてRam Jamを結成。ニューヨーク州ロングアイランドのK&K Studio Cityでアルバムを制作した。「Black Betty」のみバートレットがリード・ボーカルとギターを担当し、それ以外の楽曲ではスカヴォーネがパワフルなフロントマンを務めている。
サウンドと楽曲の聴きどころ
A1「Black Betty」は、印象的な手拍子とチャントから一気に雪崩れ込む重量級のリフ、目まぐるしく展開するツイン・ギターのインタープレイとドラム・ブレイクが強烈なカタルシスを生み出すブギー・ハードの金字塔。シングル盤やアルバムには“Exploding Inside This Album Is 'Black Betty'”と書かれたハイプ・ステッカーが貼られ、その爆発的エネルギーがアピールされた。
スカヴォーネの荒削りなシャウトが冴えるA2「Let It All Out」、軽快なサザン・ロック調のA3「Keep Your Hands On The Wheel」、ストレートなドライヴ感を放つA5「All For The Love Of Rock N' Roll」など、ツイン・ギターとタイトなリズム隊による骨太なアメリカン・ロックが連続する。B面でも疾走感あふれる「404」や「Overloaded」のブギー・グルーヴが心地よく、ラストの「Too Bad On Your Birthday」(アーサー・レズニック&チャーリー・カープ作)まで一気に駆け抜ける。
時代の文脈と反響
1970年代後半のアメリカでは、エアロスミス、ボストン、キッスらに代表されるアリーナ・ロックやハード・ロックが最盛期を迎えていた。その中でリリースされた「Black Betty」は、歌詞が黒人女性を侮辱している、あるいは人種的偏見を助長しているとしてNAACP(全米黒人地位向上協会)やCORE(人種平等会議)などの公民権団体から抗議を受け、ボイコットや放送禁止運動へと発展した(実際には「Black Betty」は歴史的に刑務所の牛革鞭やウイスキー瓶などを指すスラングとされる)。しかしこの論争が結果として世間の注目を集め、シングルは全米ビルボードHot 100で18位、全英7位、オーストラリア3位と世界的なヒットを記録した。
後世への影響と評価
アルバム自体も米ビルボード200で34位まで上昇し、RIAAのゴールド・ディスクに認定された。「Black Betty」の痛快なリフとビートは後世にも広く受け継がれ、2004年にはオーストラリアのSpiderbaitがカバーして全豪1位を獲得したほか、Tom JonesやMeat Loafらにも歌われた。『ブロウ』『60セカンズ』などの映画挿入歌やスポーツ・スタジアムのアドレナリン・アンセムとしても世界中で定着している。
また、本作のクロージング・トラック「Too Bad On Your Birthday」は、のちにJoan Jettがソロ・デビュー作『Bad Reputation』(1980年)でカバーしたことでも知られ、70年代アメリカン・ハード・ロックの隠れた名曲として親しまれている。
トラックリスト
- A1 Black Betty 3:57
- A2 Let It All Out 4:00
- A3 Keep Your Hands On The Wheel 3:35
- A4 Right On The Money 3:11
- A5 All For The Love Of Rock N' Roll 3:01
- B1 404 3:44
- B2 High Steppin' 3:40
- B3 Overloaded 2:56
- B4 Hey Boogie Woman 3:10
- B5 Too Bad On Your Birthday 3:10