Methusalem - Journey Into The Unknown (1980)
Methusalem『Journey Into The Unknown』(1980) 作品紹介
Methusalemの『Journey Into The Unknown』は、1980年に西ドイツでAriolaから出た、同名アーティスト唯一のアルバム。ディスコ・プロジェクトとして組まれた作品で、制作にはRalf Nowy、Tom Müller、そしてJack WhiteことHorst Nußbaumが関わっている。ジャーマン・ディスコの枠に収まるだけでなく、ハンザ・スタジオで録音された電子音の質感が前に出た一枚で、クラウトロック以降のドイツ産エレクトロニック・サウンドの流れも感じさせる内容になっている。
西ベルリン録音の空気感
ジャケット裏には「hansa studios by the wall, west-berlin」で録音されたことが記されている。ベルリンの壁のそばという立地は、この時代の西ベルリンの音楽に独特の緊張感を与えていた場所でもある。ここで使われた機材もかなり具体的で、Oberheim、Mini-Moog、ARPシーケンサー、Roland SH-1000、Roland Vocoder、EMS Vocoder 2000などがクレジットされている。さらに Fender Piano、Steinway、Yamaha Drums、Fender Stratocaster、Mesa Boogie、Hohner D 6 といった名前も並び、電子音だけで閉じた作品ではなく、バンド的な演奏感も織り込まれていることが分かる。
ディスコ・プロジェクトとしての輪郭
Methusalemは1980年の西ベルリンで結成されたディスコ・プロジェクトで、ボーカルにはVicki Brownが起用されている。彼女はピンク・フロイドやロジャー・ウォーターズ、ブライアン・フェリー、セローンなどのバックも務めたシンガーで、このアルバムでも声の存在感が作品の軸になっている。プロジェクト名義ではあるが、内容は単純なダンス・ミュージックに留まらず、シンセサイザー主導の構成、ヴォコーダーの処理、反復するシーケンスなどがはっきり前面に出る。
収録曲の性格
収録曲では、ホラー的な演出を持つ「Zombie」や、ヴォコーダーを効かせたロボット風の「Robotism」が特に知られている。こうした曲では、ディスコの拍子を土台にしながらも、機械的な音像や不穏なムードが加わる。いわゆる華やかなだけのディスコではなく、電子音の実験性と接続した作りが印象に残る。レコード全体としても、スペース・ディスコや初期エレクトロの手前にあるような、当時のドイツらしい整った機械感がある。
同時代の文脈
1980年前後の西ドイツでは、クラウトロックの流れを引き継いだ電子音楽と、ディスコ以後のダンス志向が並走していた。Methusalemのこのアルバムも、その境目に置かれた作品として見ておくと分かりやすい。Kraftwerkのような無機質な未来感とも、純粋なユーロ・ディスコとも少し違い、ジャーマン・ポップ産業の制作力と、シンセサイザー実験の両方が同居している。ジャック・ホワイトがこの後、国際的なプロデューサーとして大きく活動の幅を広げていく前段階の仕事としても、位置づけが見えてくる。
その後の扱い
本作は1981年に「Empire」名義で『First Album』として再発された記録がある。こうした名義変更や再パッケージは、当時のディスコ/ポップ作品では珍しくないが、オリジナルの『Journey Into The Unknown』が最初に出たのは1980年のドイツ盤Ariolaである。なお、2008年にはブートレグ化されたことも記録されている。
まとめ
Methusalem『Journey Into The Unknown』は、ディスコの形式を取りながら、シンセサイザー、ヴォコーダー、シーケンサーの使い方で独自の輪郭を作ったアルバム。西ベルリンのスタジオ環境、Ariolaの当時の制作網、そしてJack Whiteを含むプロデューサー陣の手つきが、そのまま盤の性格に反映されている。ジャーマン・エレクトロニックの周縁ではなく、ディスコと実験音響の接点に置いて聴かれてきた一枚として記憶されている。
トラックリスト
- A1 Zombie 5:05
- A2 Alien 4:11
- A3 Robotism 6:32
- B1 You Are The Sun 7:09
- B2 The Black Hole 4:16
- B3 Time Machine 4:11