Kool & The Gang - Celebrate! (1980)
Kool & The Gang「Celebrate!」レビュー
Kool & The Gangの「Celebrate!」は、1980年にUSのDe-Lite Recordsから出た作品で、同年のバンドの勢いをそのまま記録したアルバムだ。70年代前半のファンク色の強い時期を経て、1979年の「Ladies Night」でポップ寄りのダンス・サウンドへ大きく舵を切った直後の1枚であり、この流れを決定づけた重要作として位置づけられる。ロバート“クール”ベルを中心に結成された彼らは、ジャズ寄りの演奏から出発し、70年代には「Funky Stuff」「Hollywood Swinging」「Jungle Boogie」などで人気を広げた。その後、時代の変化に合わせて音の作りを整理し、80年代初頭のヒット連発へつなげていくが、その転換点にあるのが本作だ。
このアルバムでまず目立つのは、演奏の輪郭がかなりはっきりしていることだ。ベース、ホーン、ギター、リズム隊の役割が整理され、そこにJ.T. Taylorの滑らかなリード・ヴォーカルが前面に出る。70年代の荒さを残したファンクとは違い、ディスコ以後のダンス・ポップの空気が強い。とはいえ、単に整っているだけではなく、リズムの押し出しやホーン・アレンジにはKool & The Gangらしい粘りがある。録音はHouse Of Music、マスタリングはFrankford Wayneで行われており、US盤らしい輪郭の明瞭さも印象に残る。
本作を語るうえで外せないのが、代表曲「Celebration」だ。アルバムの核であり、バンド最大級の認知を決定づけた楽曲でもある。メンバーの証言では、曲の着想についてRonald BellとRobert “Kool” Bellの記憶が一致していないが、いずれにしても“みんなで祝う”というシンプルな主題が、曲の構造を強く支えている。Eumir Deodatoの共同プロデュースも効いていて、コード進行やアレンジは必要以上に複雑化せず、祝祭感を前に出す設計になっている。実際に聴くと、冒頭からリズムの立ち上がりが速く、コーラスの反復がそのまま曲の推進力になっているのがわかる。
「Celebration」は1981年2月にBillboard Hot 100で1位を獲得し、カナダ、ニュージーランドでも1位、UKでも上位を記録した。さらに、1981年1月にイラン米大使館人質事件の人質が解放された時期と重なり、帰還を祝う空気の中でラジオでも広く流れたことが知られている。スポーツ中継との相性もよく、1980年のワールドシリーズや1981年のスーパーボウル、NBAファイナルのテーマとして使われ、1982年にはセントルイス・カージナルスの公式応援歌にも採用された。こうした経緯もあって、アルバムの1曲を超えた定番曲として定着した。
アルバム全体としては、「Celebration」だけが飛び抜けて目立つ作品ではない。むしろ、ここから続く「Take It to the Top」や「Morning Star」なども含めて、バンドが80年代型のソウル/ダンス路線を固めていく過程が見える内容だ。後年の「Cherish」「Joanna」「Fresh」へつながる流れを考えると、本作はKool & The Gangにとって、ヒットの再加速を実現した転換点にあたる。70年代のファンク・バンドから、広くポップ・チャートを狙えるグループへ移る、その中間の手触りがある。
同時代の文脈で見ると、70年代後半から80年代初頭のディスコ後期、あるいはダンス・ソウルの整理された音作りと近い場所にある。Chicのような洗練されたリズム感、Earth, Wind & Fireのようなホーンを生かした華やかさと比べても、Kool & The Gangはより直接的で、歌のフックを前へ出す作りだ。Deodatoのプロデュースによって、その方向性はさらに明確になっている。結果として本作は、ファンクの演奏力とポップ・ソングとしての明快さが同居したアルバムとしてまとまっている。
De-Lite Recordsにとっても、Kool & The Gangは看板アーティストだった。レーベルの初期から彼らを送り出し、80年代に入ってもその関係は続く。本盤のUSオリジナルはDe-Lite RecordsのDSR 9518で、ラベルの冒頭にある“53”の表記はPressing Plantの情報を示すものとして残っている。バンド名がラベルに出ない仕様も含め、当時のUS盤らしいディテールが見える一枚だ。
「Celebrate!」は、Kool & The Gangが70年代のファンクから80年代のポップ・ソウルへ移るうえで必要だった要素を、かなりはっきり形にした作品だ。派手な転換を見せながら、演奏の芯は崩していない。そのバランスが、タイトル曲の長い定着につながっている。
トラックリスト
- A1 Celebration 5:00
- A2 Jones Vs. Jones 4:18
- A3 Take It To The Top 4:19
- A4 Morning Star 3:48
- B1 Love Festival 5:16
- B2 Just Friends 4:23
- B3 Night People 3:47
- B4 Love Affair 4:21