Khemistry - Khemistry (1982)
Khemistry 1982

Khemistry - Khemistry (1982)

Electronic Funk / Soul Boogie Funk Soul Disco

Khemistry『Khemistry』

アメリカ・ワシントンD.C.を拠点に結成された女性3人組ヴォーカル・グループ、ケミストリー(Khemistry)が、1982年9月にメジャーのColumbia Records(規格番号:FC 38215)から発表した唯一のスタジオ・アルバム。メンバーはキマス・ナイト(Kimus Knight)、マリー・カウンシル(Marie Council)、シャール・ヘイズ(Shirl Hayes)の3人で、リードと濃密なバック・コーラスを分け合っている。制作を全面的に手がけたのは、ワシントンD.C.のMainline Productionsを率い、ボビー・サーストン(Bobby Thurston、「You Got What It Takes」「Check Out the Groove」など)やゲイル・アダムス(Gayle Adams、「Love Fever」など)、マンチャイルド(Manchild)といったディスコ/ブギー名作を送り出してきたプロデューサー/ソングライター・コンビのウィリー・レスター(Willie Lester)とロドニー・ブラウン(Rodney Brown)。エグゼクティブ・プロデューサーには、マイケル・ジャクソンやルーサー・ヴァンドロス、アース・ウィンド&ファイアーらを手がけたCBS/Columbiaの黒人音楽部門重役ラーキン・アーノルド(Larkin Arnold)が名を連ねている。

制作背景と参加ミュージシャン

録音はバージニア州スプリングフィールドのBias Studiosで行われ、エンジニアはボブ・ドーソン(Bob Dawson)が担当。ミキシングはBias Studiosとフィリー・ソウル/ディスコの拠点として知られるニューヨークのSigma Sound Studiosで実施され、マスタリングはニューヨークCBS Recording Studiosのレイ・ジャノス(Ray Janos)が仕上げた。演奏陣には、プロデューサーのロドニー・ブラウンによるリード・ギター、ワシントンD.C.のゴーゴー(Go-Go)シーンを代表するバンドE.U.(Experience Unlimited)のフロントマンとしても知られるセオドア・“シュガーベアー”・ジョーンズ(Theodore “Sugarbear” Jones)によるリズム・ギター、ザ・ユニフィックス(The Unifics)出身で「I'm Back for More」などのソロ名作でも知られるワシントンD.C.の重鎮ソウル・シンガー/鍵盤奏者アル・ジョンソン(Al Johnson)のキーボードをはじめ、カルヴィン・ブランソン(Calvin Brunson:キーボード)、ルーズヴェルト・スミス(Roosevelt Smith:キーボード)、ルーイ・オクスリー(Louie Oxley:シンセサイザー)、デイヴ・パラマー(Dave Palamar:ドラムス)、カール・レイシー(Carl Lacey:パーカッション、コンガ)ら、ワシントンD.C.〜東海岸の実力派ミュージシャンが集結している。

収録された全8曲は、ほぼすべてがウィリー・レスターとロドニー・ブラウンの共作・アレンジで統一されており、ダンサブルなブギー・ナンバーからメロウなミディアム/スロー・ジャムまで隙のない構成となっている。

時代の文脈と聴きどころ

1982年という時期は、70年代後半のオーケストラルなディスコから、シンセサイザーやエレクトリック・キーボードを前面に出したアーバン・ブギー/モダン・ソウルへと移行する過渡期にあたる。本作では、ウィリー・レスター&ロドニー・ブラウンがPrelude Records周辺などで培ったニューヨーク〜D.C.直系の洗練されたブギー・ファンクのグルーヴに、アル・ジョンソンらが奏でる都会的なキーボード・ワーク、そして女性3人の華やかで瑞々しいハーモニーが重なり、1980年代初頭のD.C.モダン・ソウルの粋が凝縮されている。

収録曲のなかでも、A2「Can You Feel My Love」は特に名高い一曲だ。跳ねるベースラインと煌びやかなローズ・ピアノ&シンセサイザー、高揚感あふれるサビのコーラス・ワークが一体となったモダン・ソウル・ダンサーの代表格として知られ、この曲を軸にアルバム全体が再発見されていった。そのほかにも、小気味よいカッティング・ギターとハンドクラップが牽引するオープニングのブギー・ファンクA1「I Can't Lose With The Stuff I Use」、甘美でドリーミーなスロー・バラードA3「There's No Me Without You」、快活なブギー・チューンA4「Sucker For The Boogie」、シングル・カットされたB1「I Got A Feeling」、ミディアム・グルーヴのB2「Walking Papers」とB3「Whatever It Takes」、そして終盤をクールに締めくくるアーバン・ブギーB4「Who's Fooling Who」まで、充実した楽曲群が並ぶ。

発売当時のシングル「I Got A Feeling」は、米ビルボードのR&Bチャート(Billboard Black Singles)で最高75位(5週チャートイン)を記録したが、アルバムとしてはこの1枚のみでグループは解散となった。

後世への影響と再評価

のちに本作は、イギリスのモダン・ソウル・シーンや、日本をはじめとする世界中のレア・グルーヴ/80sブギー・コレクターの間で再発見され、特に「Can You Feel My Love」を筆頭にオリジナルLPが高額で取引される「80年代モダン・ソウル/ブギーの秘宝」としてカルト的な名声を獲得した。近年ではExpansionやGet On Downなどの再発レーベルからCDやアナログ盤で復刻が行われたほか、「Can You Feel My Love」は2010年代以降のFuture Funk(フューチャー・ファンク)やヴェイパーウェイヴ、ハウス/ディスコ・エディットのサンプリング・ソースとしても広く愛されている。

トラックリスト

  1. A1 I Can't Lose With The Stuff I Use 5:27
  2. A2 Can You Feel My Love 3:55
  3. A3 There's No Me Without You 4:15
  4. A4 Sucker For The Boogie 5:14
  5. B1 I Got A Feeling 5:13
  6. B2 Walking Papers 3:27
  7. B3 Whatever It Takes 4:37
  8. B4 Who's Fooling Who 5:20

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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