Mordecai Smyth - The Mayor Of Toytown Is Dead (2017)
Mordecai Smyth 2017

Mordecai Smyth - The Mayor Of Toytown Is Dead (2017)

Rock Prog Rock

Mordecai Smyth『The Mayor Of Toytown Is Dead』について

『The Mayor Of Toytown Is Dead』は、UKのアーティスト、Mordecai Smythが2017年にMega Dodoから発表した作品だ。ジャンル表記はRock、スタイルはProg Rock。Mordecai Smythは、Mega Dodoというインディペンデント・レーベルを軸に、ポップ・サイケからプログレッシブ・ロックへとつながる路線を続けてきた人物で、このアルバムもその流れの中に置かれる1枚と見てよさそうだ。作品タイトルから受ける印象どおり、素朴さとひねりの両方を持った感触があり、いわゆる正統派のプログレだけでは収まらない気配を持っている。

レーベルのMega Dodoは、前進的で独自性のあるサイケデリック・リバイバルを掲げる存在として紹介されており、その方針はMordecai Smythの作品にもよく合っている。彼はこのレーベルで長く活動し、ポップ寄りの感覚とサイケ、プログレを行き来する作風を積み重ねてきた。プロフィールでも、過去10年にわたり批評的に評価された道筋を歩んできたことが示されていて、この『The Mayor Of Toytown Is Dead』は、そうした活動の中で自然に出てきた作品として捉えやすい。

アルバムの位置づけ

2017年という時点で見ると、この作品はMordecai Smythのキャリアの中でも、すでに一定の作家性が固まった段階のものと考えられる。少なくとも、単発の企画盤というより、レーベルとの継続的な関係の中で組み上げられたアルバムという印象が強い。後年のアルバム『Things are Getting Stranger on the Shore』では、Jon Camp、Icarus Peel、Crystal Jacquelineといった名前が並び、周辺ミュージシャンとの関係性も見えてくるが、この2017年作は、そうした広がりへつながる前段階の一作として位置づけられそうだ。

プログレという言葉から想像される大作志向や技巧の誇示よりも、曲そのものの組み立てや、メロディの置き方に耳が向きやすいタイプの作品として受け取られる。Mega Dodo周辺のカタログに通じる、60年代末から70年代初頭の英国ロックを下敷きにした感触もありつつ、現代のインディー・レーベルらしい距離感で更新されているところが見どころだ。

聴きどころ

このアルバムの注目点は、タイトルの示す物語性と、実際の演奏が持つ具体的な手触りの両方にある。曲名や構成に、街や人物を思わせるイメージが乗ると、作品全体が小さな舞台劇のようにも聞こえてくる。とはいえ、感情を大きく煽る方向ではなく、節度を保った語り口が中心にあるため、歌ものとしてのまとまりが先に立つ印象だ。プログレの要素も、展開の多さを見せるためではなく、曲の流れを少しずつずらしていくために使われているように感じられる。

音作りの面では、古い英国ロックに近い質感を保ちながらも、過度にレトロへ寄せすぎないバランスがある。そこがこの作品の聞きやすさにつながっているように思える。サイケデリックな色合いがあっても、音響の実験に寄り切らず、あくまで楽曲の形が見える範囲に収めている点がMordecai Smythらしい。1曲ごとの輪郭が比較的はっきりしているため、アルバム単位でも追いやすい構成になっている。

同時代・周辺文脈

2010年代の英国では、60〜70年代のプログレやサイケを参照しながら、現代の制作感覚でまとめる動きがいくつも見られた。Mordecai Smythもその文脈に置けるが、単なる復古ではなく、ポップな感触を残したまま進めているところに個性がある。比較対象を挙げるなら、同時代のインディー・サイケや、英国の伝統的な叙情を引き継ぐプログレ系の作家たちが思い浮かぶが、ここではどちらにも寄り切らず、両者の間を行き来する立ち位置が見える。

レーベルのMega Dodoが掲げる方向性とも重なるが、このアルバムは「懐かしさ」だけで成立しているわけではない。曲調や編曲の運びに、現在の耳で聴いても無理のない整理があり、そこが作品の芯になっている。英国ロックの系譜を踏まえつつ、同時代のインディー・レーベル作品としてのまとまりも持つ、その中間点にある1枚といえそうだ。

まとめ

『The Mayor Of Toytown Is Dead』は、Mordecai Smythが2017年に示した、ポップ・サイケとプログレの接点にあるアルバムだ。Mega Dodoのカタログの中でも、作家性とレーベルの方向性がよく噛み合った作品として見えてくる。派手な売り文句で押すタイプではないが、英国的なロックの語法を丁寧に組み直したアルバムとして、Mordecai Smythの活動を追ううえで重要な位置にある1枚だ。

トラックリスト

  1. A1 Billywitch
  2. A2 River Of Sleep
  3. A3 Far From The Crowd
  4. A4 Heading Back West
  5. B1 Golf Girl
  6. B2 A Knife And A Key
  7. B3 Happy
  8. B4 Stay With The Pulse
  9. B5 Dissent Into Chaos

動画

Share
記事一覧に戻る
toast