Mott The Hoople - The Hoople (1974)
Mott The Hoople『The Hoople』について
Mott The Hoopleの『The Hoople』は、1974年3月29日にUKでリリースされた7作目のスタジオアルバムである。バンドの活動末期にあたる作品で、同時にこの編成で作られた最後のアルバムでもある。グラムロックの流れをくんだ華やかさと、ロックンロールの直球感、ハードロック寄りの押しの強さが同居した内容で、Mott The Hoopleというバンドの輪郭がよく見える一枚だ。
作品の位置づけ
この時期のMott The Hoopleは、中心人物Ian Hunterを軸にしながらも、ギタリストのMick RalphsがBad Company結成のために離脱し、後任にAriel BenderことLuther Grosvenorを迎えている。さらにキーボードもVerden AllenからMorgan Fisherへ交代しており、バンドの音像には明確な変化がある。『The Hoople』は、その編成の更新を反映した作品として聴くと分かりやすい。
前作までの延長線上にありながら、ギターの質感やアンサンブルの重心が少し変わっているのが特徴で、Mick Ralphs在籍時の引き締まった推進力とは別の、やや粘りのある感触が残る。バンドの終盤らしい緊張感と、まだ勢いを保ったままの演奏が同居している点が面白い。
収録曲と代表曲
本作からは「The Golden Age of Rock ’n’ Roll」と「Roll Away the Stone」が知られている。どちらもシングルとして存在感が強く、アルバム全体の印象を支える曲だ。「The Golden Age of Rock ’n’ Roll」はタイトル通りのロック賛歌として機能し、勢いのあるコーラスとバンド演奏の押し出しが前面に出る。「Roll Away the Stone」はメロディの分かりやすさがあり、Mott The Hoopleの中でも広く認識されやすい1曲である。
アルバムはUK Albums Chartで11位、US Billboard 200で28位を記録している。バンドの後期作としては十分に大きな反応で、当時の英国ロックの中でも一定の位置を占めた作品だったことが分かる。
制作とオリジナル盤の特徴
録音はロンドンのAdvision Studiosで1974年1月に行われ、B5のみ1973年5月/6月にAIR Studios No.2で録音された。さらに1974年2月にAIRのスタジオ2と3でリミックスとダビングが施されている。オリジナルUK盤はマット仕上げのジャケットに、オレンジ色のCBSレーベル、そして薄い厚紙のライトブルーの歌詞・クレジットシートが付属する仕様である。カタログ番号はジャケットとレーベルで表記順が異なる。
また、一部の初期コピーには「INCLUDING: ROLL AWAY THE STONE and GOLDEN AGE OF ROCK 'N' ROLL」と書かれた丸いゴールドステッカーが貼られていた。こうした販促物は当時のアルバムの売り方をそのまま伝えていて、シングル向け楽曲への期待が強かったことがうかがえる。
サウンドの印象
実際に聴くと、派手な装飾よりもバンドの推進力が耳に残る。Ian Hunterのボーカルは鋭さを保ちつつ、曲によっては少し皮肉っぽい響きもある。Ariel Benderのギターは、Mick Ralphsの時代と比べると性格が変わり、よりねじれた感触を残す場面がある。Morgan Fisherのキーボードも、曲の厚みを増す役割を担っている。
グラムロックのきらびやかさだけでなく、ロックンロールの骨格が前に出るのもこの作品の特徴である。T. RexやDavid Bowie周辺と同時代の空気を共有しながら、Mott The Hoopleはよりバンド色の強い演奏で勝負している印象がある。そこにハードロックの圧も加わり、1974年の英国ロックらしい密度が生まれている。
周辺エピソード
この時期のツアーでは、当時まだ無名だったQueenがサポートアクトを務めていたことでも知られる。後年Brian Mayが、Queenが唯一サポートに回ったバンドとしてMott The Hoopleを挙げている。こうした話は、Mott The Hoopleが単なる人気バンドではなく、次世代のロック・アクトにも接点を持っていたことを示している。
さらに、本作のLPスリーブにはKari-Ann Mullerのポートレートが使われており、彼女はRoxy Musicのファーストアルバムのジャケットにも登場している。1970年代前半のUKロック周辺で共有されていたビジュアル感覚を感じさせる要素だ。
まとめ
『The Hoople』は、Mott The Hoopleの終盤を記録したアルバムであり、編成の変化、シングル曲の強さ、そして1974年という時代のロックの空気がまとまった作品である。大きな転機の直前に置かれた一枚として、バンドの歩みを追ううえでも重要な位置を占めている。オリジナルUK盤の仕様も含め、当時のCBS作品らしい存在感があるレコードだ。
トラックリスト
- A1 The Golden Age Of Rock 'N' Roll 3:23
- A2 Marionette 5:03
- A3 Alice 5:26
- A4 Crash Street Kidds 4:29
- B1 Born Late 58 3:58
- B2 Trudi's Song 4:25
- B3 Pearl 'N' Roy (England) 4:25
- B4 Through The Looking Glass 4:44
- B5 Roll Away The Stone 3:08