Nick Heyward - On A Sunday / When It Started To Begin (1983)
Nick Heyward / On A Sunday / When It Started To Begin
Nick Heywardは、Haircut One Hundredの中心人物として知られるシンガー・ソングライター、ギタリストだ。1983年のソロ初期は、バンド時代の軽快なポップ感を引き継ぎながら、曲の輪郭を少し整理し、歌詞やメロディの見え方に落ち着きを持たせていく時期にあたる。今回の日本盤シングル「On A Sunday / When It Started To Begin」も、その流れの中に置ける1枚で、同年のソロ・デビュー作『North of a Miracle』へつながる作品として捉えやすい。
ソロ転向後の初期シングル
1983年のNick Heywardは、Haircut One Hundredの成功を背景にしながら、ソロとしての表現を固めていった時期だ。「When It Started To Begin」は、Haircut One Hundredを思わせる明るさと、ソロ期らしい整理された構成が同居する曲として扱われることが多い。アルバム『North of a Miracle』は、英国アルバム・チャートで最高10位を記録し、そこからのシングル群も一定の反応を得た。「Whistle Down the Wind」が英国シングル・チャートで最高13位、「On A Sunday」は最高52位を記録している。
このシングルが出た時点で、Heywardはまだ「Haircut One Hundredの人」という見られ方を強く背負っていたはずだが、ソロ作ではその印象をそのままなぞるのではなく、もう少し内省寄りのポップへ寄せている。派手な装飾を前に出すタイプではなく、メロディの流れと歌の間合いで聴かせる作り。そこが当時のポップ・ロックの中でも少し位置の違うところだ。
曲の印象とアルバムとのつながり
「On A Sunday」は、題名どおり日曜の空気感を思わせる穏やかな入り口を持つ。サウンドは軽く、しかし空っぽではない。歌のフレーズが前へ出る一方で、演奏は過度に押し込まず、余白を残して進む。「When It Started To Begin」も同様に、メロディの分かりやすさが中心にあり、曲が始まった瞬間から輪郭が見えやすい。どちらも、Haircut One Hundred時代の色味を残しながら、ソロ・アーティストとしての整理された書き方が見える内容だ。
『North of a Miracle』はAbbey RoadとAIR Studiosで録音され、プロデュースはGeoff Emerickが担当した。ビートルズ周辺の録音で知られるエンジニアが手がけたことで、音の見通しのよさや、楽器の分離の明快さが前面に出ている。Heyward自身も、同じようなポップを量産したくないという意識を持っていたとされ、その姿勢はこの時期の曲に表れている。単純なヒット狙いではなく、ソロ1作目の輪郭を作るためのシングル群、という位置づけ。
1983年のポップ・ロックの文脈
1983年の英国ポップは、ニュー・ウェイヴ以後の軽やかな音作りと、従来型のソングライティングが並走していた時期だ。Nick Heywardはその中で、派手なギター・ロックへ寄るわけでも、極端に実験的になるわけでもなく、メロディ重視のポップを保っていた。A-haやニック・カーショウのような80年代中盤の洗練されたポップとは少し違い、もう少しギター・バンドの感触が残る。Haircut One Hundredのファン層に届きやすい一方で、ソロとしての自己主張も見える中間的な立ち位置だ。
NMEなど当時の評価では、Heywardのソロ開始を単なる軽いポップ職人の延長としてではなく、曲に深みを持ち込もうとする動きとして受け止めていた。実際、「Whistle Down the Wind」はヒット性の高いシングルとして知られ、「On A Sunday」もアルバム期の流れを支える中位ヒットとして扱われる。大きな話題を独占するタイプの作品ではないが、ソロ転向直後のNick Heywardの方向性を確認できる1枚だ。
日本盤シングルとしての存在感
この盤は1983年の日本盤、Aristaレーベルの7インチシングルで、オリジナルと同年のリリースになる。Aristaは当時、US発の大手ポップ・ロック系レーベルとして知られ、80年代前半の洋楽シーンで多くのアーティストを抱えていた。日本盤は国内流通向けの体裁でまとまっており、英米盤のシングル文化をそのまま輸入しつつ、日本市場向けにレコードとして手に取りやすい形にしたものだ。1983年の空気をそのまま閉じ込めた資料性もある。
Nick Heywardのキャリアの中では、Haircut One Hundred脱退後にソロ表現を立ち上げた最初期の章にあたる。派手な転換ではないが、曲作りの重心を少しずつ自分側へ引き寄せていく過程が見える。ポップな親しみやすさと、少しだけ落ち着いた視点。そのバランスが、この「On A Sunday / When It Started To Begin」に残っている。
トラックリスト
- A1 On A Sunday (Full Length)
- A2 Stolen Tears
- B1 Blue Hat For A Blue Day
- B2 When It Started To Begin (Re-Recorded)
- B3 The Kick Of Love (Instrumental)