Alice Cooper - Welcome To My Nightmare (1975)
Alice Cooper『Welcome To My Nightmare』(1975)
Alice Cooperの『Welcome To My Nightmare』は、1975年にUSのAtlanticから出たソロ名義の1作目で、アリス・クーパーという名前がバンドではなく個人名として前面に出た最初期の重要作だ。70年代前半にショック・ロックの旗手として名を上げた彼が、ここでは演劇性の強いコンセプト作品へと踏み込んでいる。レーベルはAtlantic、カタログ番号はSD 18130。モンスター映画、ブロードウェイ、ハードロックが同じ盤の中でつながっていく構成になっている。
作品の位置づけ
このアルバムは、Alice Cooperのキャリアの中でも転換点に当たる。バンド時代の過激さや芝居がかった演出を引き継ぎながら、ソロとしての物語性を強く押し出した内容で、少年スティーヴンの悪夢を軸に進むコンセプト・アルバムとして組み立てられている。プロデュースはボブ・エズリン。バンド時代の代表作でも組んだ人物で、本作で再び深く関わった。制作はトロントにミュージシャンを集め、短期間で進められたという流れが知られている。
収録曲は曲単体の完成度だけでなく、曲間のつながりや語りも含めて一つの舞台作品のように構成されている。とくに「Devil's Food」から「The Black Widow」へ続く流れには、ホラー俳優ヴィンセント・プライスが参加している。プライスの語りが入ることで、アルバム全体の空気が一段はっきりとしたものになっている。
サウンドと聴きどころ
聴いてまず目につくのは、ロックの骨格がかなり明快なことだ。ギターはスティーヴ・ハンターやディック・ワグナーが支え、リズム隊もきっちり鳴っている。重さのある曲も、音数を詰め込みすぎず、歌とドラマを前に出す作り。ハードロックやヘヴィメタルの要素がありながら、メロディの運びにはポップ・ロックの整理された感触も残る。
実際に通して聴くと、派手な仕掛けだけの作品ではなく、曲ごとの役割分担がかなり明確だとわかる。序盤は物語への導入、中盤で緊張が高まり、終盤は感情の振れ幅が大きくなる。大音量で押す場面と、歌の輪郭を保つ場面の切り替えが自然で、コンセプト盤にありがちな散漫さは比較的少ない。音の重心は低めだが、ベースやドラムが前に出すぎず、全体の見通しがいい。
「Only Women Bleed」と代表曲の存在
本作を語るうえで外せないのが「Only Women Bleed」だ。ディック・ワグナーとの共作で、もとはThe Frost時代の素材を元にしたものとされる。歌詞は月経を直接扱ったものではなく、家庭内暴力をテーマにしている。女性団体の反発を受け、シングルは当初「Only Women」として出たという経緯もある。Billboard Hot 100では12位、カナダのRPMでは1位を記録しており、アルバムの中でも独立した存在感が強い。
この曲は、Alice Cooperの作品にある過激さやアイロニーとは少し違う方向にある。演出の強い作品の中で、歌そのものが持つ重さが前に出る場面で、後年のカバーが多いのも納得しやすい。Tina Turnerが歌った例も知られている。
時代背景と受け止められ方
1975年当時は、ハードロックやグラム寄りの派手な演出を持つアーティストが多くいた時期だが、この作品はその中でも物語性の整理が進んでいる。Alice Cooperは同世代のアーティストの中でも、ステージ上のショック演出と音楽を強く結びつけた存在として知られているが、本作ではその方向性がアルバム単位でさらに明確になっている。後年にはテレビスペシャル『Alice Cooper: The Nightmare』や1976年のコンサート映画にもつながっていき、作品の世界観が音源の外へ広がっていった。
発売当時の評価は一様ではなく、ローリング・ストーン誌はギミック重視と見る向きもあった。ただ、後の視点では、ホラーとシアトリカルなロックをつなぐ重要作として見られることが多い。Alice Cooperの代表作として語られる場面が多いのも自然な流れだ。
このUS盤について
この盤は1975年のUSリリースで、AtlanticのSD 18130。記載情報によるとMonarchプレスで、ランアウトにはPRの刻印があり、metal partsは別工場由来の供給という形になっている。インナーには歌詞と詳細なクレジットが入っており、各曲ごとの役割分担が読み取れる仕様。ジャケットとインナーでクレジットの見え方が少し違う点も、この時代のUS盤らしいところだ。
『Welcome To My Nightmare』は、Alice Cooperが単なる刺激的なロック・ショーの人ではなく、アルバム全体を使って物語を組み立てる表現者として動いていたことをはっきり示す作品だ。曲単位でも聴けるし、通して聴くと物語の流れが見えてくる。70年代ロックの中でも、演劇性とロックの接点を押し広げた一枚として残っている。
トラックリスト
- A1 Welcome To My Nightmare 5:19
- A2 Devil's Food 3:38
- A3 The Black Widow 3:37
- A4 Some Folks 4:19
- A5 Only Women Bleed 5:59
- B1 Department Of Youth 3:18
- B2 Cold Ethyl 2:51
- B3 Years Ago 2:51
- B4 Steven 5:52
- B5 The Awakening 2:25
- B6 Escape 3:20