Obake - Draugr (2016)
Obake『Draugr』(2016)レビュー
Obakeの『Draugr』は、2016年にUKのRareNoise Recordsから出た3作目のアルバムだ。メンバーはEraldo Bernocchi、Lorenzo Esposito Fornasari、Jacopo Pierazzuoli、Colin Edwin Balch。いわゆる普通のロックバンドというより、ヘヴィなリフ、実験的な音響処理、暗い空気感を一つにまとめたユニットとして捉えたほうが近い。前2作の流れを引き継ぎながらも、この作品では曲の輪郭がよりはっきりしていて、バンドの現在形を示す1枚として扱われている。
作品の位置づけ
Obakeは、イタリアを拠点にした異形のヘヴィ/実験音楽ユニットとして知られる。『Draugr』はその中でも、構成のまとまりと演奏の安定感が前面に出た作品として語られている。Eraldo Bernocchiは当時のインタビューで、本作を「これまでで最も完成度が高く、構成が複雑」と述べており、Jacopo Pierazzuoliがスタジオでも固定メンバーとして参加したことが、演奏面の支えになったと説明していた。
前2作に比べると、曲の進み方に迷いが少ない。リフは比較的明確で、音の塊で押し切る場面があっても、ただ混沌を積み上げるだけでは終わらない。重さはそのままに、展開の見通しがつきやすい作りになっている。英語圏や欧州圏のレビューでも、前作より直接的で、フックが分かりやすい一方、ノイズ感や歪んだ質感は維持されている点が評価されていた。
サウンドと曲調
このアルバムの核にあるのは、ヘヴィなギターと低音の圧力、そこに重なる電子的な処理やキーボードの層だ。Exposéは、avant-metal的な枠組みの中で電子的な処理が重層感を増していると評している。実際、音の密度は高いが、ただ厚いだけではなく、各パートが少しずつずれて噛み合うことで、不穏な推進力を作っている。
聴感上は、前に出るリフの強さと、周縁で鳴るノイズや残響のバランスが特徴的だ。Metalitaliaもアレンジの緻密さを強調していて、境界的なメタルとしての面白さを指摘していた。曲が進むにつれて、ただ重いだけではなく、構造そのものに目が向く作りになっているのが『Draugr』の特徴だ。
タイトルとコンセプト
タイトルの“Draugr”は北欧神話に出てくる「歩く死者」を指す言葉だ。バンド名の“Obake”が持つ「変化するもの」という発想を、西洋側の概念へ振り直した対になるイメージとして説明されていた。こうした設定があるため、作品全体にも生者と死者、変化と停滞、肉体と音響といった感覚の揺れが通っている。
アートワークについては、タイで撮影された実写写真を使い、加工を加えない不穏なイメージが作品の空気に合っているとされる。音だけでなく見た目も含めて、余計な装飾より生々しさを優先した作りになっている。
制作背景の断片
制作面では、Bernocchiが人骨製の楽器を用いたというエピソードが知られている。狙ってショックを与えるというより、死んだものに再び生命を吹き込む感覚を重視していたという話で、作品の題名や音の質感ともつながっている。スタジオでは楽曲が自然発生的に形になっていったという証言もあり、細かく作り込みながらも、最初の衝動が失われていない点が印象に残る。
同時代の文脈
『Draugr』は、一般的なロックの文脈よりも、実験性の強いメタルやアヴァンギャルド・ロックの流れの中で捉えたほうが近い。比較対象として名前を挙げやすいのは、重さと構築性を両立させるタイプの前衛的なメタル勢だが、Obakeはそこに電子処理や異様な音響感を強く混ぜている。結果として、単純なジャンル名では収まりにくいが、リフの明確さが増したことで、耳の入り口は前作よりも広くなっている。
総括
『Draugr』は、Obakeの中でもまとまりの良さが目立つ作品だ。重苦しい空気、歪んだ音、実験的な処理はそのままに、曲の骨格が見えやすくなっている。暗い題材を扱いながら、音像は散らばりすぎず、むしろ整理された印象がある。前2作の延長線上にありつつ、より輪郭のはっきりした形へ進んだ1枚として、2016年時点のObakeを示すアルバムになっている。
トラックリスト
- A1 Cold Facts
- A2 Incineration Of Sorrows
- A3 Hellfaced
- A4 The Augur
- A5 Appeasing The Apparition
- B1 Serving The Alibi
- B2 Cloud Of Liars
- B3 Immutable
- B4 Draugr