Olivia Dean - The Art Of Loving (2025)
Olivia Dean 2025

Olivia Dean - The Art Of Loving (2025)

Pop Funk / Soul Indie Pop

Olivia Dean『The Art Of Loving』について

Olivia Deanの『The Art Of Loving』は、2025年発表の2作目にあたるアルバムで、レーベルはCapitol Records。UK出身のシンガーソングライターとして注目を集めてきた彼女が、前作『Messy』で示したソングライティングの手触りをさらに前へ進めた作品として受け取れる内容だ。ジャンル表記はFunk / Soul、Pop、スタイルはIndie Pop。ソウルの輪郭を持ちながら、曲の運びや歌の置き方はかなり現代的で、2020年代のUKポップの空気をよく映している。

このアルバムの核にあるのは、タイトルが示す通り「愛」をどう捉えるか、という視点だ。タイトルの由来は、bell hooksの著書に応答する形で企画されたMickalene Thomasの展覧会「All About Love」へさかのぼり、その源流にはErich Frommの1956年の著作『The Art of Loving』がある。Frommは愛を、自然に起こる感情ではなく、意図と努力で身につけていく実践として論じた。Deanもインタビューで、恋愛だけに限らず家族や友情も含めて、愛を実践として見直したかったと語っている。作品全体に、その問題意識が通っている。

制作背景と音の手触り

制作は2025年3月から4月にかけて行われ、ロンドン東部の邸宅を仮設スタジオにして8週間で仕上げられた。プロデューサーにはJulian Bunetta、Matt Hales(Aqualung)、Leon Michelsらが名を連ねる。こうした制作陣の名前を見ると、ポップの整った構成と、ソウル寄りの生演奏感、その両方を丁寧に組み合わせた設計が見えてくる。実際、彼女の歌声は前に出すぎず、曲の呼吸に合わせて少し引いては前に出る。そのバランスがこの作品の軸になっている。

聴き進めると、メロディは分かりやすい一方で、コードの動きやリズムの置き方に細かい工夫がある。派手な展開で押すより、言葉の切り方やフレーズの反復で印象を残すタイプ。ソウルの温度を持ちながら、インディー・ポップらしい軽さもあり、重さに寄りすぎない。声の質感も含めて、AdeleやJorja Smith、Lianne La Havasあたりと並べて語られやすい土台はあるが、Deanはより柔らかい言い回しで、日常の感情を近い距離で扱っている。

「Man I Need」とアルバムの広がり

収録曲の中では「Man I Need」が大きな話題を集めた。アルバムと同時にリリースされ、全英シングルチャート1位を獲得している。この結果、Deanは2021年のAdele以来、シングルとアルバムを同時に全英1位にした初の英国人女性ソロアーティストとなった。チャート面だけでなく、作品全体の入口としても機能する1曲で、アルバムのテーマを外側へ広げる役割を担っている。

また、本作は批評面でも高い評価を受け、Metacriticで84点を記録した。2026年に入ってからも評価は続き、グラミー賞で最優秀新人賞を受賞。英BRIT AwardsではAlbum of the Year、Song of the Year、Artist of the Year、Best Pop Actの主要4部門を制した。こうした受賞歴を見ると、『The Art Of Loving』は単なる2作目ではなく、Olivia Deanを同時代のUKポップの中心へ押し上げた作品として位置づけられている。

盤としての情報

今回の盤はWorldwideリリースで、レーベルはCapitol Records。盤のリリース年も2025年で、作品の初出年と一致している。裏ジャケットにはトラックが順番に記載されており、Made in The EU表記もある。Capitol Recordsは長い歴史を持つレーベルだが、この作品では古いカタログの匂いを前面に出すというより、現在のポップ作品としての整理の良さが目立つ。ラベルのプロフィールにある通り、Capitolは現在も大きなレーベル群の中で扱われているが、本作はその中でもきわめて2025年らしいポップ・ソウルの一枚としてまとまっている。

まとめ

『The Art Of Loving』は、Olivia Deanが「愛」という大きなテーマを、恋愛の枠に閉じずに書き直したアルバムだ。ソウルの温度、ポップの分かりやすさ、インディーらしい距離感が同居していて、歌詞と歌の両方で感情を運ぶ作りになっている。前作『Messy』で見えた個人の輪郭を踏まえつつ、今回はその輪郭の外側にある人間関係まで視野を広げた印象がある。2025年のUKポップを語るうえで外せない一枚として、記録しておきたい作品だ。

トラックリスト

  1. A1 The Art Of Loving
  2. A2 Nice To Each Other
  3. A3 Lady Lady
  4. A4 Close Up
  5. A5 So Easy (To Fall In Love)
  6. A6 Let Alone The One You Love
  7. B7 Man I Need
  8. B8 Something Inbetween
  9. B9 Loud
  10. B10 Baby Steps
  11. B11 A Couple Minutes
  12. B12 I’ve Seen It

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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