Paatos - Breathing (2011)
Paatos 2011

Paatos - Breathing (2011)

Rock Prog Rock

Paatos『Breathing』について

スウェーデン、ストックホルム出身のプログレッシブ・ロック・バンド、Paatosの『Breathing』は、2011年にGlassVille Recordsから発表された5作目のスタジオ作である。前作から間を置いての復帰作として受け止められた作品で、バンドの持つ独特の空気感を保ちながら、より落ち着いた方向へ振れた内容として語られている。Paatosは2000年結成のバンドで、初期からReine FiskeやStefan Dimleといった北欧プログレ周辺の人脈と関わりがあり、そこから現在の編成へつながっていく流れを持つ。そうした背景を踏まえると、『Breathing』は単なる新作というより、バンドの歩みの中でひとつの節目に置かれた作品として見えてくる。

作品の位置づけ

Paatosは、強い演奏力と構成の細かさを前面に出すタイプのプログレとは少し距離を置き、歌と音の余白、静かな緊張感を軸にしたバンドとして知られている。『Breathing』でもその特徴ははっきりしていて、派手な展開で押し切るより、曲の温度を少しずつ変えながら進めていく作りが目立つ。レビューでも、初期作にあったプログレ色の濃さが後退し、アート・ポップ寄りの感触が強まったという見方が示されている。
バンドの現在の中心メンバーであるRicard Nettermalm、Petronella Nettermalm、Peter Nylander、Ulf Ivarssonの編成も、この時期のPaatosの輪郭を支える要素になっている。ドラム、ヴォーカル、ギター、ベースという基本の編成を軸に、プログレ特有の複雑さを前に出しすぎず、曲ごとの質感で聴かせる流れが続く。

サウンドと曲の流れ

『Breathing』は、聴き始めてすぐに大きく盛り上げるタイプではない。音数はむやみに増えず、演奏は抑制が効いている。Petronella Nettermalmのヴォーカルは、音を押し出すというより、曲の内部に溶け込むように置かれ、そこにチェロやギター、リズム隊が重なっていく。結果として、曲全体の輪郭はくっきりしながらも、感情の出し方はかなり抑えられている。

収録曲の中では「No More Rollercoasters」が比較的ロック寄りの曲として取り上げられている。曲名どおりの急激な起伏を見せるわけではないが、他の曲に比べると推進力があり、アルバム内でのアクセントになっている。一方で「Smärtan」はスローで幽玄な雰囲気が強いと評されており、この作品の静かな側面を代表する1曲として見られている。こうした振れ幅はあるものの、全体の印象は一貫していて、曲ごとの表情差を保ちながらも、作品としてはひとつの空気にまとまっている。

北欧プログレの文脈

Paatosの周辺には、OpethやAnekdoten、Landberk、Morte Macabreなど、北欧のプログレ/オルタナティブ・ロックの系譜を思わせる名前が並ぶ。Reine FiskeやStefan Dimleが関わってきた経緯からも、単純なプログレの復古ではなく、室内楽的な質感や静かな陰影を含んだ流れの中で捉えられてきたことがわかる。『Breathing』はその文脈の中でも、派手な技巧より、メロディと間の取り方に重心を置いた作品として位置づけられている。

また、バンド名が「pathos」に由来することも、このグループの音楽性を考えるうえで興味深い。感情を強く叫ぶのではなく、音の配置や声の置き方で情緒を立ち上げる方向性は、まさにその名に沿っている。『Breathing』でも、その性格は大きく変わっていない。

盤としての特徴

2013年に出たこの盤は、オリジナルの2011年作品を収めたものとして扱える。ゲートフォールド仕様のジャケットに、カラーレコードのスリーブを組み合わせたパッケージで、音だけでなく物としての見栄えも意識された作りになっている。GlassVille Recordsのリリースとしては、レーベルのプログレ系カタログの中でもPaatosの個性がそのまま出たタイトルで、派手さよりも内容の密度で見せるタイプの一枚である。

まとめ

『Breathing』は、Paatosの中でも、初期のプログレ的な押し出しより、静かな運びとメロディの組み立てが前に出た作品である。長く待たれた復帰作として登場し、聴き手によって受け取り方が分かれたという記録も残るが、そのぶんバンドの変化がはっきり見える。北欧プログレの流れを引きながら、歌ものとしての輪郭を保つ作品。そんな位置に置くと、このアルバムの性格がつかみやすい。

トラックリスト

  1. A1 Gone 5:52
  2. A2 Fading Out 3:36
  3. A3 Shells 5:58
  4. A4 In That Room 4:56
  5. A5 Over & Out 3:31
  6. B1 Breathing 5:56
  7. B2 Smärtan 4:30
  8. B3 Surrounded 4:48
  9. B4 Precious 4:25
  10. B5 No More Rollercoaster 4:15

動画プレイリスト

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