Pictures - Pictures (1983)
Pictures 1983

Pictures - Pictures (1983)

Electronic Rock Jazz Experimental Prog Rock Synth-pop

Pictures『Pictures』(1983)

Picturesの『Pictures』は、1983年にUKのEditions EGから出たアルバムで、Freeezのジョン・ロッカとアンディ・ステネットによる別名義作品だ。Freeezといえば、のちに「I.O.U.」でUKシングル・チャート2位まで到達するなど、ジャズ・ファンクやエレクトロ寄りのダンス・ミュージックで知られるが、この作品はその流れからかなり距離を置いた内容になっている。タイトル通り、曲を並べて聴かせるというより、音の断片や質感で場面を切り替えていくタイプのアルバムとして受け取られている。

制作の軸にあるのは、シンセサイザー、特にOberheim OB-Xaの存在だとされる。電子音を前面に出しながらも、単に機械的なリズムを積むのではなく、旋律の置き方や音色の重なりで構成を進める作りで、当時のシンセ・ポップやエレクトロの文法だけでは収まりきらない。ジャズ、ロック、プログレ、ミニマルの要素が入り混じるような感触があり、80年代前半の英国インディペンデント・シーンの中でも、かなり個性の強い位置にある作品だ。

Freeezの成功期に出た“別の顔”

このアルバムの面白さは、商業的な成功の最中に、あえて別方向へ振れている点にある。Freeez名義の活動がクラブ向けの明快さを持っていたのに対し、『Pictures』はより内省的で、構造を見せることに重心がある。グループの延長線上というより、ロッカとステネットがスタジオで興味を持った音の組み合わせをそのまま作品化したような印象だ。

当時の英国でこの種の作品は、ポップ・チャートの文脈よりも、実験的な電子音楽やアート寄りのロックの文脈で受け止められやすかった。『Pictures』もその例に近く、同時代の大きなヒット作というより、後から掘り返されて価値が見直されるタイプのアルバムとして語られることが多い。

聴こえ方と曲の流れ

実際に聴くと、派手なフックで押す場面は少なく、音の配置そのものが主役になっていることが分かる。シンセの音色は、リズムを刻むためだけでなく、空間を区切るためにも使われていて、曲ごとの輪郭ははっきりしつつも、全体としてはひとつの連作のように流れていく。ベースやドラムの役割も、ダンス・ミュージックのように前へ出るというより、曲の骨格を支える方向にある。

とくに耳に残るのは、音が前に進むというより、横に広がるような作りだ。シンセの反復、短いフレーズの積み重ね、間の取り方が印象を残すので、楽曲単位で覚えるというより、アルバム全体の空気として記憶に残りやすい。こうした作りは、当時のアンビエントやミニマル志向の作品、あるいはプログレッシブ・ロックの構成感にも通じる部分がある。

同時代の文脈と比較

同時代の英国では、シンセサイザーを使った作品は数多くあったが、『Pictures』はその中でも、ダンスフロアへの即効性より、音響の組み立てに意識が向いている点で少し異なる。たとえば、よりポップなシンセ・ポップ勢や、グルーヴを前に出すエレクトロ作品と比べると、こちらは曲の機能性よりも、音の組み合わせによる構造の面白さが前に出る。

また、ジャズ・ファンク出身のプレイヤーが作った電子音楽として見ると、単純に「ロック化した」「打ち込み化した」といった変化ではなく、演奏者としての感覚を電子音へ置き換えたようなところがある。そういう意味では、同時代の実験的なシンセ作品や、アート・ロック寄りの電子音楽と並べて語られることが多いのも納得できる。

位置づけと後年の見られ方

Picturesにとって『Pictures』は、Freeezの成功と並走しながら、別の表現を試した記録として重要な作品だ。大きなヒットを狙った盤ではなく、音の設計そのものを試しているアルバムで、そのぶん当時は評価が割れやすかったはずだが、後年になると、ジャンルの境界をまたぐ実験作として見直されるようになった。

再発や定番化の流れが強かった作品ではないため、長く埋もれた存在でもあるが、逆にそこがこのアルバムらしさでもある。Freeezのダンス志向だけでは捉えきれない、ロッカとステネットの別の関心がそのまま残っている一枚。1983年という時代の電子音楽の広がりを、少し別の角度から見せてくれる作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Lullabye 4:12
  2. A2 Nursery Rap 0:32
  3. A3 Dancing Mind To Mind 5:00
  4. A4 Skrahs 3:30
  5. A5 Battle Of The Leaves 8:15
  6. B1 Black Tiger 4:55
  7. B2 Loneliness 5:02
  8. B3 Child In A Sweet Shop 4:05
  9. B4 Adventure Lost 4:40
  10. B5 Voodoo 3:47

動画

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Experimental"

toast