Pere Ubu - The Modern Dance (1978)
Pere Ubu 1978

Pere Ubu - The Modern Dance (1978)

Rock New Wave Punk Post-Punk

Pere Ubu『The Modern Dance』(1978)レビュー

Pere Ubuの『The Modern Dance』は、1978年にUSのBlank Recordsから出たデビュー・アルバムだ。オハイオ州クリーブランドのバンドらしい、乾いた都市感覚と、パンク以後のロックを別の方向へ押し広げようとする姿勢が、最初の1枚の時点でかなりはっきりしている。New WaveやPunk、Post-Punkという括りに入れられることは多いが、実際の中身はそのどれか1つに収まりきらない。曲の形は崩れかけ、リズムは前に進むのに、演奏はどこか引っかかり続ける。その不安定さが作品全体の核になっている。

デビュー作としての位置づけ

バンドは1975年にクリーブランドで結成され、中心人物はDavid ThomasとギタリストのPeter Laughnerだった。Laughnerは1977年に亡くなっており、このアルバムはその直後の時期にあたる。録音は1977年11月、クリーブランドのSuma Studioで行われた。マスターノートによれば、1976年10月と1977年1月の録音も含まれている。つまり、完全に同じ時期に一気に作られた作品というより、初期の断片をまとめてアルバム化した性格がある。

この作品は、Pere Ubuにとって単なるデビュー盤というだけでなく、のちの方向性を決める出発点でもある。後続の『Dub Housing』でさらに歪みを深める前段階として、ここではすでにバンドの核が見えている。David Thomasの歌は、一般的なロックの歌唱からかなり外れていて、メロディをなぞるというより、言葉の切れ目やアクセントで曲を押していく感じが強い。そこに、Allen Ravenstineらのシンセサイザーが入ることで、ギター中心のロックとは別の重心が生まれている。

収録曲の印象

代表曲としてまず挙げられるのは「Final Solution」だろう。Pere Ubuの初期シングルとして知られ、のちの評価でも重要な位置を占める曲だ。勢いだけで突っ走るタイプではなく、演奏の隙間や音の置き方に不穏さがある。「Heart of Darkness」も同様に、タイトルどおりの重さを持ちながら、単純なハードさでは終わらない。収録曲全体を通して、リフが前面に出る場面と、音が崩れていく場面が交互に現れる。

聴き進めると、曲ごとの完成度を競うアルバムというより、摩擦のある素材を並べて全体像を作っている印象が残る。リズム隊は堅く、しかしその上で鳴るギターや電子音は、整った伴奏というより、曲の輪郭をずらす役割を担っている。実際に耳を通すと、ロックの基本形が保たれている場面でも、どこかで構造がずれる感触がある。そこがこの作品の特徴だ。

同時代との関係

1978年という時点で見ると、『The Modern Dance』はパンクの勢いを引き継ぎながら、その先にあるものを探していた作品として位置づけやすい。同時代のUSパンクや、のちにポストパンクと呼ばれる流れの中でも、Pere Ubuはかなり独特だ。The Velvet UndergroundやMC5、そして同じくオハイオ出身の前身的な流れを思わせる荒さはあるが、単なるガレージ回帰でもない。むしろ、構成の崩し方や電子音の使い方は、後年のインダストリアルやアートロック寄りのバンドにもつながって見える。

このアルバムが後世でしばしば「時代を先取りしていた」と語られるのは、派手なヒット性ではなく、ロックの土台そのものをずらす感覚が早い段階で出ていたからだろう。商業的な成功作ではないが、影響力の面では大きい1枚として扱われている。Blank RecordsがMercury傘下の短命レーベルだったことも含めて、メジャーの枠組みの中でかなり異物感の強い作品だったことがわかる。

作品の手触り

聴感上は、整った録音というより、音の角が残ったまま前に出てくる感じがある。ギターの鳴り、ドラムの硬さ、シンセの入り方が、どれも主張を引っ込めない。そこにDavid Thomasの声が乗ることで、曲はまとまりきらないまま進行する。だが、そのまとまりきらなさ自体が作品の性格になっている。きれいに聴かせることを目的にしていないのは明らかで、むしろロックの慣れた感覚を崩すことに意味があるように見える。

『The Modern Dance』は、Pere Ubuの出発点であると同時に、1970年代後半のUSロックが持っていた可能性の別ルートを示したアルバムでもある。パンクの速度感を持ちながら、曲の作り方はかなり変則的で、そこに電子音と断片的な構成が加わる。結果として、いわゆる「デビュー作」の勢いだけでは説明しきれない重さが残る。Pere Ubuの後年を知っていると、ここですでにバンドの基本姿勢がほぼ出そろっていることがよくわかる。

トラックリスト

  1. A1 Non-alignment Pact 3:19
  2. A2 The Modern Dance 3:20
  3. A3 Laughing 4:37
  4. A4 Street Waves 3:06
  5. A5 Chinese Radiation 3:29
  6. B1 Life Stinks 1:53
  7. B2 Real World 4:00
  8. B3 Over My Head 3:51
  9. B4 Sentimental Journey 6:08
  10. B5 Humor Me 2:44

動画プレイリスト

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