David Bowie - Low (1977)
David Bowie 1977

David Bowie - Low (1977)

Electronic Rock Ambient Experimental Art Rock

David Bowie『Low』(1977) ― 1977年のボウイを大きく切り替えた一枚

David Bowieの11作目のスタジオ・アルバム『Low』は、1977年1月にUKで発表された作品。タイトル通りの短さを感じさせる作品名だが、内容はむしろ密度が高く、ボウイのキャリアの中でも大きな転機として語られることが多い。RCAからのリリースで、UK盤ではジャケットにRCA表記、ラベルにはRCA Victor表記が入る仕様になっている。今回のUK盤は、オリジナル期の初期プレスにあたるものだ。

制作の背景と時代性

録音は1976年9月、フランスのシャトー・デ・ルーヴィルで始まり、その後ベルリンのHansa Studiosへ移って続けられた。ここでの制作環境が、その後のボウイ作品の方向を決めていく。『Low』は、のちに『“ベルリン三部作”』と呼ばれる流れの起点になり、続く『“Heroes”』『Lodger』へつながっていく。

この時期のボウイは、従来のロック・スター像から少し距離を取り、断片的な構成や音響処理を前面に出している。RCA側は『Station to Station』のような、もう少し親しみやすいロック作品を想定していたとも伝えられるが、完成した音源はかなり異なる手触りを持っていた。結果として、1977年1月の発売に至るまで時間がかかった。

サウンドの特徴

『Low』でまず目立つのは、アルバム全体の構成。A面には比較的短い楽曲が並び、B面は長めのインストゥルメンタル寄りの曲が中心になる。ロックのアルバムとしてはかなり変則的で、曲順そのものが作品の性格を示している。

音作りでは、トニー・ヴィスコンティによるドラム処理が重要だ。Eventide H910ハーモナイザーを使ってデニス・デイヴィスのドラムにピッチ処理を施し、硬質で、空間の奥で反響するような音像を作っている。特に「Breaking Glass」のような曲では、その処理されたドラムがはっきり分かる。単に音を派手にしたのではなく、打音の輪郭を変えて、アルバム全体の空気を作っている点が大きい。

収録曲と代表的な楽曲

アルバム前半では「Sound and Vision」がよく知られている。のちにシングルとしても存在感を持つ曲だが、初期コピーにはその告知ステッカーが付かないものもある。軽いリズムと明るめのフレーズを持ちながら、歌の内容や音の作りにはどこか距離があり、単純にポップな曲としては終わらない。

「Breaking Glass」は短いながら印象が強く、処理されたドラムと切れ味のある演奏が前に出る。「What in the World」や「Always Crashing in the Same Car」も、メロディの扱いと音響の組み合わせが特徴的だ。B面では「Warszawa」が重要で、ほとんど歌を持たない構成の中で、静かな緊張感を保っている。ボウイのキャリアの中でも、こうしたインストゥルメンタル寄りの展開は当時としてかなり踏み込んだものだった。

UK初期盤の仕様

このUK盤は、オリジナル期ならではの細かな違いも面白い。12インチの紙インサートが付属し、クレジットが記載されている。多くのコピーには、裏ジャケットにオレンジ色のトラックリスト・ステッカーが貼られている。初期コピーには、公式ファンクラブやバックカタログを案内する小さな白黒パンフレットも入っていた。

また、UK盤のカバーはUS盤をベースにした修正版で、右上のカタログ番号部分が消されている痕跡が残る。袖にはRCA表記、ラベルにはRCA Victor表記という違いもあり、US盤との細部の差が見える。こうした仕様は、当時の国ごとの流通や制作工程をそのまま反映している。

作品の位置づけ

『Low』は、ボウイがロックの文法を保ちながら、その外側へ移っていく途中にある作品だ。グラム・ロック期の延長線ではなく、ソウルやアメリカン・ロックの枠にも収まりきらない。クラウトロックや実験音楽の要素、アンビエント的な感覚が入り込み、1970年代後半のポップ/ロックの境界を押し広げている。

同時代の作品と比べても、単に“前衛的”で片づけられる内容ではない。曲としての輪郭を残したまま、音像、空白、反復の使い方を変えている点が重要だ。後年のニュー・ウェイヴやポストパンク、さらにアンビエントやエレクトロニック寄りのロックにも、こうした発想は確実に影響を残した。『Low』は、ボウイが1977年に到達した新しい出発点として、今もよく参照されるアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 Speed Of Life
  2. A2 Breaking Glass
  3. A3 What In The World
  4. A4 Sound And Vision
  5. A5 Always Crashing In The Same Car
  6. A6 Be My Wife
  7. A7 A New Career In A New Town
  8. B1 Warszawa
  9. B2 Art Decade
  10. B3 Weeping Wall
  11. B4 Subterraneans

動画プレイリスト

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