Pip Proud - Adreneline & Richard (1968)
Pip Proud『Adreneline & Richard』について
Pip Proudは、1947年生まれ、オーストラリアのシンガーソングライター、詩人、小説家、劇作家。1967年に私的プレスのデモLP『De Da De Dum』で注目を集め、1968年にはPolydor系の契約へ進んだ。本作『Adreneline & Richard』は、その流れの中で出た作品で、もとの曲の多くを録り直した再録盤に近い内容とされている。2014年にUSのSuperior Viaductから再発されており、盤にはグリーン刷りのインナー・スリーブと歌詞、さらにDavid Nicholsによるアルバム解説文が付属する。
制作背景・エピソード
最初の自費制作盤『De Da De Dum』は、約50枚ほどしか出なかったとされる。その後、Proudはレーベル契約を得て、こちらの『Adreneline & Richard』へつながった。制作参加者の詳細は今回の情報では確認できないが、作品の焦点はProud本人のギターと、語りに近い歌い方に置かれている。AllMusicでは、Proudの音楽について「素朴なギター・プレイ」と「長大で個人的な詩」が特徴だと説明されている。作品紹介では、彼の奇妙で素朴なギターと、呪文のように伸びる語り口が注目点として挙げられている。
また、1968年のこのアルバムについてByron Coleyは、Syd Barrett的な気配があると評している。録音の細かな現場事情までは追えないものの、少なくともこの時期のProudが、既存のポップの作法から少し外れた形で作品をまとめていたことは、各所の紹介から読み取れる。
時代の文脈
1960年代末のオーストラリアでは、ポップ、アンダーグラウンド、テレビ文化が重なり合う状況があり、Proudはその中で「オーストラリアのボブ・ディラン」として紹介されたことがある。ただし、実際の比較対象としては、のちにSyd BarrettやDaniel Johnstonにたとえられることの方が多い。AllMusicでも、ProudはSyd Barrett、Daniel Johnston、Half Japaneseへと連なる存在として扱われている。
音楽学者イアン・マクファーレンは、本作を「稀薄で、特異で、喚起力のある歌」を含む作品として位置づけている。こうした紹介は、Proudが当時のオーストラリアのシーンの中で、通常のシンガーソングライター像とは少し違う場所にいたことを示している。本人はテレビ出演やローカル紙での露出も得ており、メジャー・レーベルからのリリースによって活動の見え方が変わったことも確認できる。
後世への影響
90年代以降、Proudは再評価されていった。ニュージーランドのAlastair Galbraithは、敬意を込めて「Pip Proud」という曲を作っている。AllMusicでも、Proudはローファイ/インディー・フォークの先駆的な例として紹介されている。こうした後年の扱いを見ると、『Adreneline & Richard』は、当時のオーストラリア国内だけでなく、その後の独立系フォークやアウトサイダー寄りの表現を語る際にも参照される一枚になっている。
売れ行きについては、次のアルバムを作れる程度には好意的に受け止められたという記述がある一方、具体的なチャート順位や数字は見当たらない。2014年の再発盤では、歌詞入りのインナー・スリーブとDavid Nicholsのエッセイが加わり、オリジナル期の記録を補う形になっている。
トラックリスト
- A1 Adreneline And Richard 2:25
- A2 The Tennis Player 3:38
- A3 There Was Melancholy 3:58
- A4 Latin Version 2:12
- A5 Into Elizabeth's Eyes (To Mother Whilst Dying) 4:32
- A6 Sounds 3:40
- B1 Purple Boy Gang 2:20
- B2 De Da De Dum 2:34
- B3 When Each Descends 2:18
- B4 We Crossed The Atlantic 3:07
- B5 The Old Servant 6:32
- B6 Laughter And Laughter 2:21