Mantis - Turn Onto Music (1973)
Mantis 1973

Mantis - Turn Onto Music (1973)

Rock Funk / Soul Funk Prog Rock

Mantis『Turn Onto Music』について

Mantisの『Turn Onto Music』は、1973年にニュージーランドのウェリントンで録音された、フィジー出身の5人組による唯一のアルバムとして知られている。もともとはThe Dragon Swingersとして活動し、スバのクラブ「The Golden Dragon」のハウスバンドを務めていたメンバーが、Mantisに改名して残した作品である。ロックを軸にしながら、ファンクやソウルの要素、さらにプロッグ寄りの展開を持ち込んだ1枚で、南太平洋のバンドが1970年代初頭のニュージーランドでどんな音を鳴らしていたのかを、そのまま伝える記録になっている。

録音の背景と作品の位置づけ

このアルバムは、メンバーが予期せずウェリントンに滞在することになった流れから生まれた。地元の人脈やクラブ・シーンの助けを受け、EMI Studiosで録音へ進んだとされる。プロデュースはEd Morris。彼の回想では、彼らは資金も宿もない状態で突然現れたという。そうした事情もあって、当時のニュージーランドで少数プレスのまま出回り、入手しづらい盤として扱われてきた。

バンドにとっては、これが唯一のアルバムである。The Dragon Swingers時代から続く演奏力を、スタジオ作品としてまとめた形で、グループの記録としても重要な位置にある。後年はニュージーランドのレア盤やアシッドロックの文脈で語られることが増え、オリジナル盤の希少性も含めて注目されている。

サウンドの印象

内容は、ファンク、サイケデリック・ロック、ハードロックの要素が混ざった重い質感の演奏が中心。オルガン、ファズ・ギター、パーカッションが前に出ていて、リズムの押し出しが強い。演奏の輪郭ははっきりしており、曖昧な浮遊感よりも、バンドとしての推進力が目立つ。録音の空気も含めて、当時のロック・バンドが持っていたライブ感が残っている。

曲構成ではカバー曲が軸になっていて、その合間に長尺の「Island Suite」が置かれている。組曲形式のこの曲は、アルバムの中心にあるまとまった聴きどころで、展開の切り替えや楽器の絡みがこの盤の性格をよく示している。全体としては、単独のヒット曲で引っ張る作りではなく、1枚通してバンドの色を見せるタイプの作品である。

収録曲と演奏の見どころ

この作品でまず耳に入るのは、オルガンの厚みとギターの歪みの強さだ。そこにパーカッションが重なり、リズム隊が前に出ることで、ファンク寄りの粘りが生まれている。反面、曲によってはハードロック的な直進性もあり、1曲ごとに表情が変わる。南太平洋出身のバンドという背景もあってか、単なる欧米ロックの模倣で終わらない、独特の温度がある。

「Island Suite」はとくに印象に残る構成で、アルバム全体の中でも長い尺を使ってバンドの演奏を見せる場面になっている。こうした組曲的な作りは、同時代のプログレッシブ・ロックやジャム感の強いロックとも通じるが、Mantisの場合はファンクの動きがしっかり残っている点が特徴的である。

オリジナル盤と再発盤

オリジナルは1973年のニュージーランド盤で、当時から流通量が少なかったとされる。今回の1998年盤はその再発にあたり、オリジナル盤のコレクタブルな価値とは別に、後年あらためて内容を聴ける形にしたものとして位置づけられる。レア盤として語られてきた作品が、再発によって再評価の対象になった流れが見える。

同時代の文脈

1970年代前半のニュージーランドでは、ローカルなバンドがロック、ソウル、ファンクを吸収しながら独自の音を作っていた。Mantisもその流れの中にあり、単なる輸入ロックの影響下だけでなく、地域のクラブ・シーンやライブ文化の中で鳴っていたことがうかがえる。演奏の骨格はハードで、そこにファンクのリズム感が入るあたりは、当時の他のローカル・グループとも重なる部分がある。

のちにレア盤として掘り起こされたことで、このアルバムは「幻の1枚」として扱われるようになった。だが実際には、バンドの来歴、録音の経緯、少数プレスという条件が重なって残った、1973年の現場感の強い記録として見るのが自然である。

まとめ

『Turn Onto Music』は、フィジー出身のMantisがニュージーランドで残した唯一のアルバムであり、ファンク、サイケデリック・ロック、ハードロックが交わる1枚である。オルガン、ファズ・ギター、パーカッションが前面に出た演奏、長尺の「Island Suite」、そして少数プレス盤ならではの存在感が、この作品の輪郭を作っている。後年の再評価も含めて、1970年代南太平洋ロックの一つの記録として残る作品である。

トラックリスト

  1. A1 Day & Night
  2. A2 In The Midnight Hour
  3. A3 You Don't Love Me
  4. A4 Mississippi Queen
  5. A5 Shake That Fat
  6. B1 Turn Onto Music
  7. Island Suite

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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