Roy Ayers Ubiquity - Virgo Red (1973)
Roy Ayers Ubiquity 1973

Roy Ayers Ubiquity - Virgo Red (1973)

Funk / Soul Jazz-Funk

Roy Ayers Ubiquity『Virgo Red』(1973)

Roy Ayers Ubiquityの『Virgo Red』は、1973年にUSのPolydorから登場したアルバムで、Roy Ayersが70年代前半に自分のバンド名義として立ち上げたRoy Ayers Ubiquityの初期を代表する一枚だ。Ayersはヴィブラフォン奏者として知られ、ジャズの演奏感覚を保ちながら、当時のファンクやソウルのリズムへ自然に接続していく人である。この作品も、その方向性がかなりはっきり出ている。ジャズの即興性を前面に出しつつ、ビートはしっかりと地に足がついていて、70年代前半の空気がそのまま詰まったような内容だ。

Roy Ayers Ubiquityという名前は、Ayers自身が「どこにでも同時に存在する状態」を意味する ubiquity から取ったもの。実際、この時期のAyersは、ジャズ、ファンク、ソウル、ダンス・ミュージックの境目をまたぐような動き方をしていて、その活動の広がり方がバンド名にも重なって見える。『Virgo Red』は、そのコンセプトを肩ひじ張らずに形にした作品として捉えやすい。

作品の立ち位置

1973年という年は、Roy Ayersにとって重要な時期だ。ジャズの文脈に根を持ちながら、よりリズム重視の音へ進んでいく流れの中にあり、『Virgo Red』もその途中に置かれる。のちにAyersがより広く知られるグルーヴ志向の作品へ進んでいくことを思うと、このアルバムには、その基礎がかなり早い段階で整っていたことが見えてくる。派手な主張よりも、演奏の流れとバンドのまとまりで聴かせるタイプのアルバムだ。

同時代の感覚で言えば、ジャズ側からファンクへ寄っていく動きはこの頃すでに珍しくない。だがRoy Ayersの場合は、単にリズムを強めるだけではなく、ヴィブラフォンの音色を中心に据えたまま、曲の温度や細かな推進力を作っている点が特徴的だ。George DukeやHerbie Hancock周辺の変化とも並べて語られることはあるが、Ayersはより身体感覚に寄った、軽く跳ねるようなグルーヴの作り方に持ち味がある。

サウンドの聴きどころ

この盤でまず目につくのは、ヴィブラフォンの輪郭だ。金属的でありながら冷たすぎず、短いフレーズでも曲の中心を作れる楽器として、Ayersはそれをよく知っている。リズム隊は歯切れがよく、ベースとドラムの動きが前に出る場面でも、音の隙間がきちんと残されている。そこにホーンや鍵盤が入ると、過剰に厚くしすぎず、あくまでバンド全体で流れを作る方向へ向かう。

実際に聴くと、派手な展開で引っ張るというより、細かい反復と演奏の粘りで聴かせる曲作りが印象に残る。1曲ごとの輪郭ははっきりしているが、アルバム全体ではまとまりがある。夜の時間帯にも似合うし、同時にリズムの強さがあるので、ただ落ち着いた音では終わらない。そのあたりが、のちのサンプリング・ソースとしても注目される理由につながっていそうだ。

注目曲について

タイトル曲の「Virgo Red」は、このアルバムの顔として見やすい。Roy Ayersらしいヴィブラフォンのフレーズが前に出て、バンドの推進力ときれいに噛み合っていく。タイトルにある“Virgo”はAyers自身の星座とも結びつけて受け取られやすいが、曲そのものは象徴的な説明に頼るより、演奏の流れで成立している印象だ。リズムが細かく刻まれながらも、全体は窮屈にならず、フレーズが次へつながっていく感じがある。

もう一つ聴きどころを挙げるなら、アルバム中のインストゥルメンタル群だ。Ayersの作品は、メロディのわかりやすさと演奏の間合いが両立していることが多いが、『Virgo Red』でもその傾向は強い。ソロが目立つ場面でも、各パートが自分の役割を崩さず、曲の芯を保ったまま進んでいく。特定の一曲だけが突出するというより、複数曲を通してバンドの呼吸が見えてくるタイプの構成だ。

参加メンバーと演奏の厚み

クレジットにはJames Mason、Bernard Purdie、Edwin Birdsong、Philip Woo、Justo Almario、Harry Whitaker、Byron Millerなど、70年代のソウル/ジャズ周辺で重要な名前が並ぶ。こうした顔ぶれを見るだけでも、単なるリーダー作ではなく、当時の黒人音楽の実演家たちが持っていた感覚の交差点にある作品だとわかる。Bernard Purdieのようなドラマーが加わることで、ジャズ寄りの音にファンクの推進力がしっかり入るのも、この盤の聴きどころのひとつだ。

Roy Ayersのディスコグラフィーの中では、のちに広く知られる名作群へ向かう途中の段階にあるが、だからこそ演奏の設計が見えやすい。バンド名義の作品として、Ayers個人の色とアンサンブルのまとまりが無理なく同居している。70年代初頭のジャズ・ファンクを追ううえで、かなり重要な位置に置けるアルバムだろう。

まとめ

『Virgo Red』は、Roy Ayers Ubiquityの初期らしい、ジャズの感触を保ったままファンクのリズムへ踏み込んだアルバムである。PolydorのUS盤として1973年に出たオリジナル盤で、当時のAyersがどの方向へ進もうとしていたかを、かなり素直に伝えてくれる内容だ。ヴィブラフォンを軸にした演奏、緻密すぎないグルーヴ、バンド全体で押し出す流れ。その三つがきれいに揃った一枚として、70年代ジャズ・ファンクの文脈の中でも見逃しにくい存在だ。

トラックリスト

  1. A1 Brother Louie 6:02
  2. A2 Virgo Red 2:59
  3. A3 I Am Your Mind 6:12
  4. A4 The Morning After 4:35
  5. B1 Love From The Sun 2:43
  6. B2 It's So Sweet 4:21
  7. B3 Giving Love 4:25
  8. B4 Des Nude Soul 4:52

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