Placebo - Placebo 1973 (1973)
Placebo『Placebo 1973』について
ベルギーのジャズ・ファンク・バンド、Placeboが1973年に発表したアルバムが『Placebo 1973』だ。中心にいるのはキーボード奏者のマルク・ムーランで、ジャズの語法を土台にしながら、ファンクやソウルのリズム感、さらに当時の新しい電子音を取り込んだ作品として知られている。Placeboは1971年から1976年にかけて活動したグループで、この時期のベルギー・ジャズ/フュージョンを語るうえで外せない存在になっている。
本作は1973年の作品として、バンドの勢いがそのまま刻まれている一枚だ。タイトルが年号そのものなのも印象的で、特定のコンセプトを前面に出すというより、その年のバンドの現在地を切り取ったような性格がある。レーベルはCBS、リリース国はベルギー。盤面表記では「Made in Holland」となっており、当時のCBSの欧州流通のあり方も感じさせる。
バンドの立ち位置と背景
Placeboは、マルク・ムーランを軸にしたベルギーのジャズ・ファンク・バンドとして活動した。ムーランはジャズの演奏だけでなく、モーグ・シンセサイザーの導入でも早い時期から注目された人物で、後年の電子音楽グループTelexへつながる流れを考えるうえでも重要だ。このアルバムでも、アコースティックな演奏だけで押し切るのではなく、鍵盤の音色や電子的な質感が演奏全体の輪郭を作っている。
前作で評価を得た流れの中で出てきた本作は、Placeboのバンドとしてのまとまりがより見えやすい作品として扱われることが多い。ジャズの即興性を残しつつ、ビートの明快さが前に出てくるあたりに、このグループらしさがある。マイルス・デイヴィス以降のジャズ・ロック、あるいはハービー・ハンコック周辺のファンク寄りの感覚とも地続きに聴こえる部分がある。
収録曲と聴きどころ
レコードはゲートフォールド仕様で、内側には録音情報が記されている。A3の曲名はレーベル上では「Phalène I」と表記されているのが特徴だ。内ジャケットの記載によると、「Phalène」はアンドレ・ドロッサールの戯曲のための音楽で、ライヴ録音されたものとされている。それ以外の曲は1973年4月24日と25日にStart Studioで録音された。
こうしたクレジットを見ると、本作はスタジオで整えた曲と、舞台作品由来のライヴ性を持つ曲が同居する構成になっていることがわかる。結果として、演奏の推進力と場面転換の多さが同居し、単なるジャズ・ロックの枠に収まらない流れを作っている。ファンク寄りのリズムに、鍵盤のフレーズや管楽器の動きが重なっていく構成は、この時代の欧州ジャズ・ロックらしい手触りでもある。
同時代の文脈
1970年代前半のヨーロッパでは、ジャズがロックやファンクと接近し、各国で独自のフュージョンが育っていた。ベルギーではPlaceboのようなバンドが、その流れの中で強い個性を持っていた。アメリカのクロスオーバーとは少し違い、より室内的で、しかしリズムの芯はしっかりしている。その感触は、同時代の欧州ジャズ・ロックやレアグルーヴ文脈で再評価されてきた理由にもつながる。
また、ムーランがのちに完全電子音楽のグループ構想へ意識を向けていくことを考えると、『1973』はその前段階としても見えてくる。生演奏のバンドでありながら、音色の選び方や構成の置き方に、後年の方向性の芽がある。そうした意味で、この作品はPlaceboの中でも節目の一枚として位置づけられる。
盤の情報について
- アーティスト: Placebo
- タイトル: Placebo 1973
- オリジナル発売年: 1973年
- リリース国: Belgium
- レーベル: CBS (S 65683)
- フォーマット: ゲートフォールド・スリーブ
- レーベル表記: ℗ 1973 CBS Inc. / Made in Holland
『Placebo 1973』は、ベルギーのジャズ・ファンクがどの地点にあったかを示す記録として読むことができる。演奏の密度、鍵盤の存在感、ファンクの推進力、そして舞台作品由来の曲が混ざる構成。そうした要素が一枚の中でつながっていて、1973年という年のバンドの空気をそのまま残している作品だ。
トラックリスト
- A1 Bolkwush 4:40
- A2 Temse 4:40
- A3 Phalène 7:50
- A4 Balek 4:20
- B1 Polk 3:20
- B2 Only Nineteen 3:50
- B3 Red Net 5:40
- B4 Re-Union 5:20