Rush - Moving Pictures (1981)
Rush 1981

Rush - Moving Pictures (1981)

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Rush『Moving Pictures』

Rushの8作目『Moving Pictures』は、1981年にカナダのAnthemから出た作品。前作『Permanent Waves』のツアー後、予定していたライヴ・アルバムをやめて制作されたスタジオ盤である。録音は1980年10月から11月にかけて、ケベック州モラン・ハイツのLe Studioで行われ、ミックスもそこで進められた。

制作背景と録音の経緯

前作に伴う10か月のツアーは1980年6月に終了し、Rushにとって初めて黒字になったツアーだった。当初は2枚目のライヴ・アルバムを出す予定だったが、ツアー終了の1か月前にMercury RecordsのCliff Burnsteinがスタジオ盤への切り替えを提案した。Alex Lifesonは後年、これを『2112』以来の最も重要な方向転換だったと振り返っている。

制作面では、1980年8月末にTerry Brownとデモを作り、Le Studioでの録音では、バンドとして初めて48トラックのマルチトラック録音を使った。ミックスはソニーのデジタル機に落とされたが、最新機材を限界まで使ったことで完成が2週間遅れたという。Brownは、その遅れについて「最新の機材を限界まで押し込めば当然」と語っている。

「Tom Sawyer」は、同じカナダのバンドMax Websterの作詞家Pye Duboisとの共作を元に生まれた。きっかけはRushがMax Websterの「Battle Scar」にゲスト参加したこと。Duboisの詩「Louis the Warrior」をNeil Peartが書き直し、現代の反逆者や自由な個人主義者のイメージに、自分の中の少年と大人を和解させるテーマを加えたと説明している。Geddy Leeはこの曲でRickenbacker 4001から、質屋で手に入れたFender Jazz Bassに持ち替えた。ミックスはコンピューターの不調で手作業になり、メンバーがそれぞれフェーダーを受け持ったという。Leeは、この曲がアルバムで最も苦労した曲だったと語っている。

「Red Barchetta」は、1973年に『Road & Track』誌に載ったRichard S. Fosterの短編「A Nice Morning Drive」が下敷き。原作の車はMGBだが、Peartはタイトルにフェラーリ166MMバルケッタを選んだ。Fosterとは2007年に対面している。「YYZ」はトロント・ピアソン国際空港のコードに由来し、イントロではモールス信号の「Y-Y-Z」のリズムが10/8拍子で繰り返される。Lifesonの操縦で空港に降り立つときにこのリズムを知ったことが背景にある。『Hemispheres』の「La Villa Strangiato」に続く、より短いインストを作る狙いから、ウォームアップのジャムが形になった。「Limelight」は、Peartが名声とプライバシーの喪失に抱いた居心地の悪さを歌った曲で、Leeはサインを求めるファンへの対応に最も苦しんでいたのがPeartだったと話している。Lifesonは2007年に、このソロを「どこかとても悲しく孤独なところがある」と述べ、ライヴで弾くのがいちばん好きなソロに挙げた。

さらに、11分の「The Camera Eye」は、Peartがニューヨークとロンドンを歩いた体験をもとにした2部構成の組曲。「Witch Hunt」は「Fear」シリーズの第3部で、冒頭の群衆の声は氷点下のLe Studioの車寄せで録音された。メインのシンセ・リフは、ジャケット・デザイナーのHugh Symeが書いている。「Vital Signs」はアルバムが約4分足りなかったために最後に作られ、ほぼ即興で仕上げられた曲。レゲエ風のノリとOberheim OB-Xのシーケンサーが使われている。

時代の文脈

『Moving Pictures』は1981年2月12日にAnthemから発売され、前日にはLeeがトロントのラジオ局CHUM-FMで全曲をオンエアしている。シングルは「Limelight」「Vital Signs」「Tom Sawyer」の順で切られた。Rushにとって最速の売れ行きを記録したアルバムで、発売から2か月でRIAAのプラチナに認定された。

チャート面では、カナダで1位、Billboard 200で3位、全英3位。アメリカでは5×プラチナ、カナダで4×プラチナ認定を受けている。「Tom Sawyer」はHot 100で44位、メインストリーム・ロック・チャートで8位。「YYZ」は1982年のグラミー賞で最優秀ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンスにノミネートされたが、The Policeの「Behind My Camel」に敗れた。

ジャケットはHugh Symeのデザインで、トロントのクイーンズ・パークにあるオンタリオ州議会議事堂の前で撮影された。タイトルには三重の意味が込められており、運送業者が絵を「運び」、それを見た人々が「心を動かされ」、裏ジャケットではその光景を撮影クルーが「moving pictures」にしている、という構成になっている。

後世への影響

「Tom Sawyer」はアメリカで最もオンエアされるクラシック・ロック曲のひとつになり、Rolling StoneとUltimate Classic RockはいずれもRushの曲の1位に選んでいる。2010年には「Tom Sawyer」「Limelight」など5曲がカナダのソングライターの殿堂入りを果たした。「Limelight」はRolling Stoneの「史上最高の500曲」(2021年)で435位に入っている。

アルバム自体も、Rolling Stoneの「史上最高のアルバム500」2020年版で379位、同誌の「史上最高のプログレ・アルバム50」(2015年)で3位に選出された。2014年には『Rhythm』誌の読者投票で、ドラミングの最も優れたプログレ・アルバムに選ばれている。Rush自身も2010〜11年のTime Machine Tourで、本作を毎晩の第2部冒頭で全曲演奏した。2022年の40周年記念盤は、全米Top Rock Albumsチャートで1位を記録している。「YYZ」については、PeartとLeeが「荷物のタグにYYZが付くと、いつだって嬉しい日になる」と語っている。

トラックリスト

  1. A1 Tom Sawyer 4:33
  2. A2 Red Barchetta 6:07
  3. A3 YYZ 4:23
  4. A4 Limelight 4:18
  5. B1 The Camera Eye 10:55
  6. B2 Witch Hunt 4:43
  7. B3 Vital Signs 4:45

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Rush

Rush

Rushは、1968年にカナダ・トロントで結成されたロック・バンドだ。プログレッシヴ・ロックとハード・ロックを軸に、時期によってシンセサイザーやニュ...

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