Rush - Fly By Night (1975)
Rush 1975

Rush - Fly By Night (1975)

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Rush『Fly by Night』

Rushの2作目となる『Fly by Night』は、1975年2月にMercuryからリリースされたアルバムだ。デビュー作『Rush』の直後に作られた作品で、バンドの屋台骨が大きく組み替わった転換期を象徴している。1974年7月29日にニール・パート(ドラム/作詞)が正式加入し、わずか2週間後の8月14日にはペンシルベニア州ピッツバーグで初ステージを踏んだ。初代ドラマーであるジョン・ラトジーの脱退という窮地を乗り越え、ゲディ・リー、アレックス・ライフソン、ニール・パートという不動のトリオ体制がここで確立された。

制作背景と録音の流れ

録音は1974年12月、カナダ・オンタリオ州トロントのトロント・サウンド・スタジオで行われた。全米ツアーの合間を縫い、わずか数日間の過密スケジュールの中で集中して録音とミックスが進められた。プロデューサーはテリー・ブラウンで、デビュー作のリミックスを手がけた縁から本作で本格的なタッグを結成。以後、『Signals』(1982年)まで続くバンド黄金期の制作体制の強固な出発点となった。

パートの加入によって、作詞の世界観も劇的な変化を遂げた。前作までのブルース・ロック的な日常のテーマから一転し、オープニングの「Anthem」はアイン・ランドのディストピア小説『Anthem(賛歌)』、「Rivendell」はJ.R.R.トールキンの『指輪物語』に登場するエルフの隠れ里、「Beneath, Between, & Behind」はアメリカ文明への批評性を含む題材へと一気に知的・文学的な広がりを見せている。アルバムの中核を成す4部構成・8分半超の組曲「By-Tor & The Snow Dog」は、マネージャーのレイ・ダニエルズが飼っていた2匹の犬(噛みつき癖のあるジャーマン・シェパードを照明担当のハワード・アンガーライダーが「Biter」をもじって「By-Tor」と呼び、白い小型犬を「Snow Dog」と呼んでいたジョーク)から着想を得て、ニールが善悪の神話的決闘として壮大に物語化したものだ。アレックス・ライフソンはワウペダルやディレイを駆使し、唸り声や咆哮をギターのフィードバックで表現している。タイトル曲「Fly by Night」は、ニールが18歳の頃に単身ロンドンへ渡り、カーナビー・ストリートの土産物店で働きながら挫折と格闘した日々を回想した楽曲だ。「Making Memories」は、米国ツアー中に高速道路を曲がり間違えて長時間迷走した際、車内でアレックスとゲディがアコースティック・ギターを爪弾いて生まれたもので、過酷なツアーを前向きに捉え直す温かなフォーク・ロックとなっており、珍しくメンバー3人全員に共作クレジットが付いている。

時代の文脈

1974年から1975年にかけて、カナダのロック・バンドが全米市場で存在感を確立するのは容易ではなかった。Rushもデビュー作の時点では「カナダのレッド・ツェッペリン・フォロワー」と見なされることが多かったが、本作ではニール・パートの加入を機に、イエスやジェネシス、キング・クリムゾンといった英国プログレッシブ・ロックの構築美と知性を、ハード・ロックの重量感と融合させた独自路線へ大きく舵を切った。ストレートで鋭利なハード・ロックの「Best I Can」や「Anthem」と、繊細なアコースティックの響きを持つ「Rivendell」や「Making Memories」が同居している点も、ハードとプログレの狭間で急速に進化を遂げつつあったこの時期のRushのダイナミズムをよく示している。

夜空を背に飛翔するシロフクロウを描いたジャケット絵画は、シカゴのイラストレーター、エラルド・カルガティ(のちにKISSの1978年のソロ・アルバム4作の肖像画も担当)によるもの。鳥類への愛着を持っていたニール・パートの発案で生まれた象徴的なアートワークだ。本作はカナダのRPMチャートで最高9位を記録し、本国のグラミー賞にあたるJuno Awardで1975年の「Most Promising Group of the Year」を受賞した。米国Billboard 200では最高113位にとどまったものの、その後のバンドの飛躍とともに長年聴き継がれ、のちにRIAAよりプラチナ・ディスク(100万枚突破)に認定されている。

後世への影響

本作は、Rushの黄金期の実質的な出発点として位置づけられている。とりわけ「By-Tor & The Snow Dog」で提示した長尺の組曲構造や変拍子のアンサンブルは、次作『Caress of Steel』の「The Necromancer」「The Fountain of Lamneth」、そして歴史的名盤『2112』や『Hemispheres』のプログレッシブ・エピックへとダイレクトに結実していった。後年、ドリーム・シアター、メタリカ、アイアン・メイデン、フー・ファイターズ、プライマスらが、ニール・パートのドラミングやRushの構築美を自身の重要なルーツとして公言している。

また、1曲目を飾る「Anthem」は、のちにバンドが設立したカナダの独立レーベル「Anthem Records」の社名の由来にもなった。

トラックリスト

  1. A1 Anthem 4:10
  2. A2 Best I Can 3:24
  3. A3 Beneath, Between, & Behind 3:00
  4. By-Tor & The Snow Dog 8:57
  5. B1 Fly By Night 3:20
  6. B2 Making Memories 2:56
  7. B3 Rivendell 5:00
  8. B4 In The End 6:51

動画プレイリスト

公開: 2026年11月

このアーティストについて

Rush

Rush

Rushは、1968年にカナダ・トロントで結成されたロック・バンドだ。プログレッシヴ・ロックとハード・ロックを軸に、時期によってシンセサイザーやニュ...

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