Spandau Ballet - Through The Barricades (1986)
Spandau Ballet 1986

Spandau Ballet - Through The Barricades (1986)

Rock Pop Pop Rock Synth-pop

Spandau Ballet『Through The Barricades』(1986) レコード解説

Spandau Balletの『Through The Barricades』は、1986年にUKでリリースされた5作目のスタジオアルバムだ。ニュー・ロマンティックを代表する存在として1980年代前半に頭角を現した彼らが、ここではシンセポップ寄りの洗練された感触を残しつつ、よりロック色の強いアリーナ向きのサウンドへ踏み込んでいる。バンドの中心人物であるゲイリー・ケンプの作曲が軸にある点は変わらないが、サウンドの輪郭は前作までとは少し違う。

このUK盤はCBSからの発売で、カタログ番号はCBS 450259 1。ジャケットや盤面の情報からも、1980年代中盤のCBS系ポップ/ロック作品らしいまとまりが見える。Made in England表記があり、プロモ盤には裏ジャケットへのゴールドスタンプが入る仕様もある。さらに一部には歌詞と写真を収めた折りたたみ式ポスター、印刷されたインナー・スリーブが付属していたようだ。こうした付属物も当時のオリジナル盤らしさを感じさせる要素になっている。

作品の位置づけ

Spandau Balletは、デュラン・デュランやカルチャー・クラブと並んで語られることの多い80年代英国ポップ・バンドだが、このアルバムでは単なるニュー・ロマンティックの延長線だけでは収まらない。シンセの質感や整ったコーラスワークは残しながら、ギターの存在感やドラムの推進力が前に出ていて、前作までの都会的な煌めきよりも、曲の展開や歌の感情がはっきり伝わる作りになっている。

アルバム表題曲「Through The Barricades」は、この作品を語るうえで外せない。曲の背景には、北アイルランド紛争のさなかに起きた友人トーマス・“キズオ”・レイリーの死がある。ゲイリー・ケンプがベルファストのフォールズ・ロード地区を訪れ、バリケードが残る街の空気に触れた経験が曲の直接のきっかけになったとされる。歌詞と旋律がまっすぐ結びついたバラードで、バンド自身も重要曲として扱っている。

収録曲とサウンドの印象

実際に針を落とすと、アルバム全体の音像はかなり整理されている。低域は厚すぎず、ボーカルのトニー・ハドリーが前に出るバランスだ。ハドリーの声はこの作品でも中心で、強いビブラートと伸びのあるフレーズが、ロック寄りの伴奏の上でも埋もれない。シングル曲のような分かりやすいフックを持つ曲では、その歌唱が特に効いている。

タイトル曲はもちろん、アルバム全体にもメロディを引っ張る力がある。派手な音の重ね方よりも、コード進行と歌の流れで聴かせる場面が多く、80年代中盤の英国ポップ作品の中でも、比較的ストレートな作りに寄っている。シンセポップの文法を残しながら、AORやロックの手触りへ近づいた点がこの盤の特徴だ。

ヒット曲としての『Through The Barricades』

シングル「Through The Barricades」は全英シングルチャート6位を記録し、Spandau Balletにとって最後の全英トップ10ヒットになった。ヨーロッパ各国でも強く、イタリア1位、スペイン2位、オランダ3位を獲得している。一方で米国では大きな成果を残していない。アルバム自体は全英アルバムチャート7位、19週チャートインと、バンドの人気を再び押し上げる役割を果たした。

この曲は、80年代の英国バラードの中でも、政治的背景を直接の題材にしながら、個人の喪失感としても受け取れる作りになっている。ドラマティックだが過剰に飾り立てていない点が印象に残る。バンドのそれまでのイメージを少し広げた曲であり、同時にSpandau Balletの代表曲として定着した。

1986年のUK盤として見るポイント

このUKオリジナル盤は、1986年当時のCBS流通の空気をそのまま持った一枚だ。後年の再発盤と比べると、当時の紙質や内袋の仕様、ジャケットの印刷感に時代性が出やすい。特にポスター付きの個体は、視覚面でも作品の存在感を補強している。音楽だけでなく、80年代中盤のアルバムとしてのパッケージ性も含めて楽しめるレコードだ。

Spandau Balletのディスコグラフィーの中では、初期のニュー・ロマンティック期と、その後の成熟したソングライティングが接続される地点にある作品として見ておきたい。シンセポップ、ポップ・ロック、AOR寄りの質感が同居しながら、中心にはゲイリー・ケンプの書く曲とトニー・ハドリーの歌がしっかり置かれている。その構図がはっきりしたアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 Barricades - Introduction 1:16
  2. A2 Cross The Line 4:09
  3. A3 Man In Chains 5:55
  4. A4 How Many Lies? 5:20
  5. A5 Virgin 4:21
  6. B1 Fight For Ourselves 4:20
  7. B2 Swept 5:50
  8. B3 Snakes And Lovers 4:30
  9. B4 Through The Barricades 5:55

動画プレイリスト

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