Talking Heads - Speaking In Tongues (1983)
Talking Heads『Speaking In Tongues』(1983) レコードレビュー
Talking Headsの5作目にあたる『Speaking In Tongues』は、1983年6月1日に発表されたアルバムだ。ニューヨークのCBGBシーンから出てきたバンドが、ポストパンクやニューウェイヴの枠を越え、ファンク、ポップ、アフリカ由来の反復リズムを自分たちの形にまとめていった時期の到達点として位置づけられる作品である。前作までデヴィッド・バーンとブライアン・イーノの共同制作色が強かったのに対し、本作はバンド自身のセルフプロデュースへと踏み込んだ点が大きい。
作品の位置づけとサウンド
このアルバムでは、Talking Headsがそれまでに積み上げてきたリズムの扱い方が、より分かりやすい形で前面に出ている。『Remain in Light』で押し広げたポリリズムの感覚や、バーン/イーノの『My Life in the Bush of Ghosts』に通じる反復の発想が、ここではダンスフロア向きの輪郭を持って整理されている。制作には、ジョージ・クリントン周辺のファンク・キーボーディストとして知られるバーニー・ウォーレルや、レゲエ系の鍵盤奏者ウォーリー・バダルーも参加しており、リズムの密度に厚みを加えている。
実際に聴くと、音の要素が多いのに散らかりすぎない。ベースとドラムの回り方が先に立ち、その上にギターの短いフレーズや鍵盤の断片が重なる作りで、曲ごとの輪郭がはっきりしている。以前の作品にあった尖った緊張感は残しつつ、ここでは反復が推進力として機能している印象が強い。アートロック寄りの知的な組み立てと、ファンクの身体性が同じ曲の中で並走する感触である。
「Burning Down the House」とアルバムの広がり
本作を語るうえで外せないのが「Burning Down the House」だ。1983年7月にシングルとして出され、Billboard Hot 100で最高9位を記録した、Talking Heads唯一のトップ10ヒットである。曲の成り立ちも興味深い。ティナ・ウェイマスの証言では、クリス・フランツがマディソン・スクエア・ガーデンでParliament-Funkadelicの公演を見た直後のジャムから生まれ、観客のチャント「Burn down the house!」をデヴィッド・バーンが「Burning down the house」に変えて取り込んだという。
この曲は、アルバム全体の方向性を象徴している。フレーズの反復、ファンク由来のうねり、そしてバーンの言葉の切り取り方が、かなり明快な形でまとまっている。派手なヒット曲でありながら、アルバムの中で浮かない。むしろ全体の設計の中に自然に収まっているところが、この作品の強さだ。
ジャケットとパッケージ
『Speaking In Tongues』には、通常盤とは別にロバート・ラウシェンバーグが手がけた限定仕様のジャケットが存在する。透明ビニール盤を透明プラスチックのケースで包み、3枚の回転するディスクを組み合わせた特殊なパッケージで、制作コストの関係から通常流通盤はデヴィッド・バーンがデザインした一般的なカバーで発売された。ラウシェンバーグ版は1984年にグラミー賞の最優秀アルバムパッケージ賞を受賞している。
今回のUS盤はSireの1-23883、Spine表記は9 23883-1。キャピトルのウィンチェスター・プレスの個体で、内袋には歌詞入りのカスタム仕様が付く。レーベル面の曲順は記号で示され、細部まで作り込まれている。こうしたパッケージや表記の工夫も、Talking Headsの作品が単なる音源以上の存在として扱われていたことを示している。
時代背景と評価
1980年代前半のニューウェイヴは、ギター主体のバンドサウンドから、ファンクやダンスミュージックへ接近する流れを見せていた。その中でTalking Headsは、単に流行に寄ったのではなく、自分たちの文法の中へ吸収していった。Roxy Music、Gang of Four、リリース期のブライアン・イーノ周辺、あるいはパブリック・イメージ・リミテッドやプリンス以後のファンク感覚と比べても、ここのバランスはかなり独特である。
批評面でも本作は高く評価されてきた。AllMusicは4/5、Rolling Stoneは白人ポップとブラック・ファンクの境界を壊したアルバムとして扱っている。Billboard 200では最高15位を記録し、スタジオ・アルバムとしてはバンド最高位となった。商業的にも内容面でも、Talking Headsの代表作のひとつとして扱われるのは自然な流れだ。
まとめ
『Speaking In Tongues』は、Talking Headsが持っていた実験性を、より明快な曲構造とダンス感覚に結びつけたアルバムである。セルフプロデュースへの移行、ファンク色の強化、そして「Burning Down the House」のヒット。バンドのキャリアの中でも、前後の作品をつなぐだけでなく、独自の完成形に近い手触りを持つ一枚だ。1983年のUSオリジナル盤は、その時代の空気とバンドの到達点を、レコードとしてそのまま封じ込めた存在になっている。
トラックリスト
- A1 Burning Down The House 4:00
- A2 Making Flippy Floppy 4:36
- A3 Girlfriend Is Better 4:25
- A4 Slippery People 3:30
- A5 I Get Wild / Wild Gravity 4:06
- B1 Swamp 5:09
- B2 Moon Rocks 5:04
- B3 Pull Up The Roots 5:08
- B4 This Must Be The Place (Naive Melody) 4:56
動画プレイリスト
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Burning Down the House (2005 Remaster)
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Making Flippy Floppy (2005 Remaster)
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Girlfriend Is Better (2005 Remaster)
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Slippery People (2005 Remaster)
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I Get Wild / Wild Gravity (2005 Remaster)
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Swamp (2005 Remaster)
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Moon Rocks (2005 Remaster)
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Pull up the Roots (2005 Remaster)
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This Must Be the Place (Naive Melody) (2003 Remaster)