Talking Heads - Fear Of Music (1979)
Talking Heads 1979

Talking Heads - Fear Of Music (1979)

Rock Pop Rock New Wave

Talking Heads『Fear Of Music』について

Talking Headsの3作目となる『Fear Of Music』は、1979年の作品だ。ニューヨークのニューウェーブ/ポストパンクの流れを代表するバンドが、前作までの軽快さやひねりを残しつつ、より神経質で、都市の空気を強く感じさせる方向へ踏み込んだアルバムとして知られている。デヴィッド・バーンの歌、クリス・フランツのドラム、ティナ・ウェイマスのベース、ジェリー・ハリソンの鍵盤やギターが、それぞれ前に出すぎず、しかし輪郭ははっきりしている構成だ。

このUK盤はSireのSRK 6076で、1979年にリリースされたオリジナル期の盤にあたる。ジャケットは金属の床のようなエンボス加工が施され、見た目の時点で少し落ち着かない印象を残す。内袋には片面に画像、もう片面に歌詞とクレジットが印刷されていて、当時のLPらしい作り込みもある。英国ではGarrod and Lofthouse製、ラベル表記は「Manufactured in the UK」。

作品の位置づけ

『Fear Of Music』は、Talking Headsにとって単なる前進作というより、次の段階へ移るための中継点のようなアルバムだ。前作『More Songs About Buildings and Food』でも見えていたブライアン・イーノとの相性が、この作品でさらに強く表に出る。イーノは共同プロデューサーとして関わり、曲の並びを“目次”のように組む発想にも寄与したとされる。アルバム全体を通して聴くと、1曲ごとの独立感と、通して流したときの緊張感が同時に立ち上がる作りになっている。

内容面では、都市生活の不安、停滞、偏執的な感覚が前面にある。とはいえ暗さだけで押し切るわけではなく、リズムの切り方や音の置き方に、バンド特有の知的な遊びが残っている。ニューウェーブ、ポストパンク、アートロックの文脈で語られることが多いのも納得できるまとまりだ。

収録曲の印象

冒頭の「I Zimbra」は、まずリズムが耳に残る。言葉の意味を追うというより、発声そのものが打楽器の一部として機能しているような曲で、アルバムの入口としてかなり強い。続く「Mind」と「Paper」では、音数を増やしすぎずに不穏さを作るやり方がはっきりしている。ベースとドラムの組み方が粘るのに、全体は前へ進み続ける感じだ。

代表曲としてよく挙がる「Life During Wartime」は、この盤でも重要な位置を占める。緊張感のあるビートに、逃走や監視の気配をにじませる歌詞が乗り、ライブでも強く機能しそうな推進力がある。もう1曲の「Heaven」は、アルバムの中でかなり静かな側にあるが、ただ穏やかなだけでは終わらない。繰り返しのフレーズが少しずつ意味を変えていくような作りで、聴き終えたあとに残る感触が大きい。

全体を通すと、音の隙間が多いのに、空白に落ち着きがない。そのため、ヘッドホンで聴くと各パートの配置がよく見え、スピーカーで流すと曲間まで含めて気分の流れが見えやすい。実際に聴くと、派手な展開よりも、同じフレーズの反復や細かなズレが印象を決めていることがわかる盤だ。

同時代の中での意味

1979年という時期は、パンクの衝動がそのままではなく、より複雑な形で再編されていった頃だ。Talking Headsはその中で、単純なロックの枠にも、純粋な実験音楽の枠にも収まらない場所を作っていた。『Fear Of Music』は、のちの『Remain in Light』へつながる橋として見ると理解しやすい。リズムの扱い、反復の使い方、都市的な感覚の出し方など、後作の土台がこの時点でかなり固まっている。

同時代のニューウェーブやポストパンクの中でも、Talking Headsは演奏の鋭さと構成の冷静さの両方を持っていたバンドだが、このアルバムではその性格がいっそうはっきりしている。ヒット性のある要素を含みながら、アルバム全体としては簡単に消費されない作りになっている点が特徴的だ。

UK盤としての見どころ

このUK初期盤は、作品が生まれた当時の空気をそのまま持つ一枚として扱いやすい。Sireは当時、ヨーロッパでの流通体制が変化していた時期にあり、UK盤には英国製造の表記や印刷仕様が見られる。ジャケットのエンボス加工や内袋の構成も含めて、単なる音源媒体というより、1979年当時のパッケージとしての存在感がある。

『Fear Of Music』は、Talking Headsが“面白いニューウェーブ・バンド”という見られ方を超えて、作品単位で評価を広げていった時期の記録だ。曲の強さ、録音の質感、アルバム全体の組み方が揃っていて、後年の評価が高いのも自然に思える内容である。

トラックリスト

  1. A1 I Zimbra 3:06
  2. A2 Mind 4:12
  3. A3 Paper 2:36
  4. A4 Cities 4:05
  5. A5 Life During Wartime 3:41
  6. A6 Memories Can't Wait 3:30
  7. B1 Air 3:33
  8. B2 Heaven 4:01
  9. B3 Animals 3:29
  10. B4 Electric Guitar 2:59
  11. B5 Drugs 5:13

動画

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Pop Rock"

toast