Tim Maia - Disco Club (1978)
Tim Maia 1978

Tim Maia - Disco Club (1978)

Funk / Soul Latin Funk Soul Disco MPB

Tim Maia『Disco Club』(1978)

ブラジルのソウル/ファンクを語るうえで、Tim Maiaの名前は外せない。1942年生まれの彼は、アメリカの黒人音楽から受けた影響をブラジルのポップスに落とし込み、ファンク、ソウル、サンバ、MPBを横断しながら独自の音楽を作ってきた人物だ。『Disco Club』は1978年にブラジルのAtlanticから出た10作目のスタジオ・アルバムで、Racional期を経たのちにディスコ・サウンドへ正面から向き合った作品として位置づけられている。タイトルどおり、当時のダンス・ミュージックの空気をしっかり吸い込みながら、Tim Maiaらしい歌とグルーヴが前面に出た一枚だ。

作品の位置づけ

1970年代後半のディスコは、世界各地でポップ・ミュージックの中心にいた。その流れの中で、Tim Maiaは単に流行を追うのではなく、自分の持ち味であるソウルフルな歌唱とブラジルのリズム感を接続している。プロデュースはTim Maia自身とGuti Carvalho、アレンジはTim Maia、Miguel Cidras、Lincoln Olivettiが分担した。Olivettiはブラジルのポップ・サウンドを形作っていく重要人物で、この作品でも後の時代につながる整った編曲感覚を担っている。

録音は1978年、リオデジャネイロのLevelスタジオとTransaméricaスタジオで行われた。演奏面ではBanda Black Rioのメンバーが参加し、ブラジルのファンク/ソウルの文脈がそのまま作品の骨格になっている。Hyldonが「Sossego」などでギターを弾き、Pepeu Gomesが「Jhony」でソロを取るなど、当時のブラジル音楽の重要な名前が集まっている点も見逃せない。

収録曲とヒット曲

本作からは「Sossego」「Acenda O Farol」「A Fim De Voltar」がヒットした。中でも「Sossego」は最大のヒットとして知られ、1978年のブラジルで特によく流れた曲の一つとされる。歯切れのいいビート、ベースの推進力、そしてTim Maiaの太いボーカルが一直線に結びつく曲で、ディスコという枠に収まりきらない強さがある。

「Acenda O Farol」は近年になってSNSで再び注目を集め、当時のヒットが世代をまたいで聴かれている例としても興味深い。こうした再発見が起きるのは、このアルバムの中に単なる懐古ではない、今聴いても機能するリズムとフックがあるからだろう。実際に通して聴くと、派手な装飾よりも、演奏のキレと歌の押し出しで引っ張る場面が多い。ダンス向けの作品でありながら、歌ものとしての説得力が崩れないところがTim Maiaらしい。

サウンドの印象

このレコードは、ディスコのきらびやかさだけをなぞった作品ではない。ファンクの骨格、ソウルの厚み、MPB的な歌の運びが同居していて、ブラジル産ディスコの中でもかなり個性がはっきりしている。キーボードの粒立ち、ギターのカッティング、ホーンやコーラスの入り方に、当時のブラジル・ポップスの洗練がある一方で、Tim Maiaの声が入ると一気に土臭さが戻る。このバランスがアルバム全体の特徴になっている。

同時代の文脈で見ると、アメリカのディスコやソウルの影響を受けつつ、ブラジル独自のブラック・ミュージックとして展開していく流れの中にある。Banda Black RioやLincoln Olivetti周辺の音作りとも響き合い、後のブラジル・ファンクやレアグルーヴの再評価にもつながる要素を含んでいる。

この盤について

ここにあるのは1978年のブラジル盤で、AtlanticのBR 30.068。ラベル表記には「Tim Maia」が大きく、「Disco Club」が小さく入るタイプで、黒刷りの紙製インナー・スリーブが付属し、歌詞が印刷されている。収録曲の著作権表記では、A1からB1までがSeroma Edições Musicais、B3からB5がEdições Musicais Saturno Ltda.となっている。ランアウトはエッチングで刻まれている。

オリジナル盤として出た1978年のこのリリースは、Tim Maiaのキャリアの中でも、時代の流行と本人の持ち味が比較的わかりやすく接続した作品として見ておきたい。Racional期の緊張感とはまた違い、ここではダンス・フロアを意識した明快さが前に出る。その一方で、歌の芯はぶれず、ヒット曲を中心にアルバム全体がしっかりまとまっている。ブラジルのソウル、ファンク、ディスコの交差点に置いて聴くと、Tim Maiaという存在の輪郭がよりはっきり見えてくる。

トラックリスト

  1. A1 A Fim De Voltar 4:13
  2. A2 Acenda O Farol 3:20
  3. A3 Sossego 3:47
  4. A4 Vitória Régia Estou Contigo E Não Abro 2:20
  5. A5 All I Want 3:28
  6. B1 Murmúrio 3:27
  7. B2 Pais E Filhos 3:52
  8. B3 Se Me Lembro Faz Doer 3:55
  9. B4 Juras 3:18
  10. B5 Jhony 2:23

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
Share
戻る

あわせて聴きたい "Funk"

toast