Trees - On The Shore (1970)
Trees 1970

Trees - On The Shore (1970)

Rock Folk Rock

Trees『On The Shore』について

Treesの『On The Shore』は、英国のフォーク・ロック史の中で静かに存在感を残してきた2作目のアルバムである。オリジナルは1971年1月にCBSから出ており、ここで扱う1987年盤はCharly Recordsによる再発盤になる。録音は1970年10月、ロンドンのSound Techniques。プロデュースはTony Cox、録音面でも前作『The Garden Of Jane Delawney』と近い制作体制でまとめられている。

Treesは1969年から1972年まで活動したイングランドのフォーク・ロック・バンドで、伝統曲の解釈とBias Boshellを中心とするオリジナル曲を並べる構成が特徴だった。Fairport Conventionと比較されることが多いが、こちらはよりサイケデリックな色合いを持つと語られてきた。『On The Shore』は、その性格が前作よりもはっきり出た作品として見られている。

作品の位置づけ

バンドは1969年にCBSと契約し、短い間隔で2枚のスタジオ・アルバムを制作した。『On The Shore』はその2作目にあたり、Treesというバンドの輪郭を決定づけた一枚として扱われることが多い。商業的な大ヒット作ではなかったが、後年になって英国フォーク・ロックの重要作として再評価が進んだ。Treesの活動期間自体が長くないため、アルバム2枚に残された音像が、そのままバンド像を伝える資料にもなっている。

制作の背景としては、前作と同じくSound Techniquesで録音され、同じプロデューサーTony Coxが関わっている点が大きい。メンバー自身の回想でも、制作陣は共通していた一方で、十分な余裕があったわけではなかったようだ。短いスパンで作品を作り続けたことが、このアルバムのまとまりと緊張感の両方につながっている印象がある。

聴きどころ

このアルバムでまず目立つのは、アコースティック楽器の前に出た鳴り方と、そこに重なる歌声の明瞭さである。Celia Humphrisのヴォーカルは、ただ柔らかいだけではなく、曲によっては輪郭をくっきり残す。ギターの運びも細かく、フォークの土台を保ちながら、ロック寄りの厚みを足していく流れがよく分かる。

収録曲の中では「Murdoch」が特に評価されることが多い。AllMusicでもこの曲が高く取り上げられており、アルバムの中でも比較的印象に残りやすい一曲として語られている。加えて、伝統曲とオリジナル曲が自然に並ぶため、1枚を通して聴くと、古い民謡的な素材と当時のロック感覚が同じ地平に置かれていることが見えてくる。

また「Geordie」は後年、2006年にGnarls Barkleyがサンプリングしたことで別の世代にも届いた。オリジナルの時点では大きなヒット曲として広く知られたわけではないが、後の作品に素材として使われた事実は、このアルバムに含まれる楽曲の持続力を示している。

同時代との関係

Treesは同時代の英国フォーク・ロックを語る時、Fairport ConventionやSteeleye Spanと並べられることが多い。ただし、Treesの音は比較的ストレートなトラッド再構築だけではなく、少しざらついた質感や、サイケデリック寄りの展開を含んでいる。『On The Shore』では、その傾向が前面に出ていて、フォーク・ロックの中でもやや硬質な手触りがある。

Storm Thorgersonによるジャケット・アートも含め、作品全体に当時の英国ロックの美意識が通っている。演奏だけでなく、見た目の印象まで含めてアルバムとして成立している点も、この時代の作品らしいところである。

1987年盤について

ここでの1987年盤はCharly Recordsによる再発で、表記上は© 1987 Charly Records Ltd.となっている。オリジナルの1971年盤からかなり時間が経っての再登場であり、Treesの音源を後追いでたどる際の入口になった盤でもある。再発によって、当時は広く流通しなかったこのアルバムが、後年のリスナーにも届くようになった流れは大きい。

結果として『On The Shore』は、当時のチャート成績よりも、のちの再評価や再発盤の流通を通じて印象を残した作品と言える。Treesという短命ながら密度の高いバンドの記録として、そして英国フォーク・ロックの一つの到達点として、今も静かに参照され続けているアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 Soldiers Three 1:50
  2. A2 Murdoch 5:05
  3. A3 Streets Of Derry 7:30
  4. A4 Sally Free And Easy 10:40
  5. B1 Fool 5:20
  6. B2 Adams Toon 1:10
  7. B3 Geordie 5:05
  8. B4 While The Iron Is Hot 3:20
  9. B5 Little Sadie 3:05
  10. B6 Polly On The Shore 6:10

動画プレイリスト

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Folk Rock"

toast