U2 - The Joshua Tree (1987)
U2 1987

U2 - The Joshua Tree (1987)

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U2『The Joshua Tree』──1987年を代表する、広い風景を持つロック作品

U2の5作目となるスタジオ・アルバム『The Joshua Tree』は、1987年に登場した作品だ。ダブリン出身の4人組が、それまでの直線的なバンド・サウンドから一段広いスケールへ踏み出した時期の中心にあるアルバムで、プロデュースはダニエル・ラノワとブライアン・イーノ。前作『The Unforgettable Fire』で見せた実験性を、さらに曲として強く結晶させた内容になっている。UK盤として出たこのオリジナル期のリリースは、のちにU2を世界規模のバンドへ押し上げる決定打として扱われている。

バンドの位置づけと時代背景

U2は1976年にダブリンで結成された。『The Joshua Tree』の時点では、すでに政治や社会の空気を背負うバンドとして認識されていたが、この作品ではその姿勢がより大きなフレーズと明確なメロディに結びついている。1980年代後半のロックは、アリーナ規模の音像とラジオで流れる分かりやすさが両立する流れにあったが、その中でU2は単なる大きな音のバンドではなく、楽曲単位で記憶される存在になった。

同時代のロックを見ても、R.E.M.のようにアメリカの土着感を別の形で掘り下げるバンドや、スミスのように内省を前面に出すバンドがいた。そのなかでU2は、アメリカ南西部の空気や空間感覚を取り込みつつ、イギリス/アイルランドのバンドらしい緊張感も保っている。『The Joshua Tree』が持つ独特の広がりは、この接続の仕方にある。

収録曲と代表曲

このアルバムを語るうえで外せないのが「Where the Streets Have No Name」「I Still Haven’t Found What I’m Looking For」「With or Without You」の三曲だ。いずれもU2の代表曲として定着していて、アルバムの顔として機能している。「Where the Streets Have No Name」は、あのリフが立ち上がった瞬間に空気が切り替わるタイプの曲で、ライブでも定番になった。「I Still Haven’t Found What I’m Looking For」はゴスペルの要素を感じさせる進行が印象的で、単なるロック・バラードに収まらない。「With or Without You」はシンプルな構造の中で緊張感を維持し続ける作りで、後年まで長く聴かれる理由がはっきりしている。

アルバム全体としては、派手な展開を重ねるというより、各曲が一定の温度を保ちながら進む印象が強い。実際に聴くと、ドラムとベースの輪郭がはっきりしていて、その上にThe Edgeのギターが空間を作り、ボノの歌が前に出る。音数は多くないのに、奥行きがある。スタジオで緻密に組み立てた跡が見える一方で、演奏の芯はかなり直接的だ。

制作エピソードとアルバムの背景

この作品には、グレッグ・キャロルへの献辞が添えられている。キャロルは1984年のツアーからバンドに加わったスタッフで、1986年にダブリンで事故死した人物だ。アルバムがその記憶を背負っている点は、作品全体の感情の底にあるものとして重要だろう。

また、ジャケット写真もよく知られている。撮影を担当したのはアントン・コービンで、タイトルの由来になったジョシュア・ツリー国立公園ではなく、1986年11月のロードトリップ中に訪れたデス・ヴァレー西端、ザブリスキー・ポイント付近で撮影されたものだ。裏ジャケットや見開きに写る一本の木もこの周辺で見つけた個体で、現在は倒木後の跡地がファンの巡礼地になっている。作品のイメージが、特定の地名よりも「アメリカ西部の空白」を強く残しているのは、この写真の力が大きい。

制作面では「Where the Streets Have No Name」が難航したという逸話もある。ブライアン・イーノがマスターテープを消して録り直そうとした、という話が残るほどで、完成までの緊張感がそのまま音に出ているような曲だ。結果として、アルバムの冒頭を飾るにふさわしい推進力になった。

この盤の見どころ

このUK盤は、オリジナル期のゲートフォールド仕様で、裏ジャケットやインナーにもいくつかの違いがある。背面のクレジットや表記の細部、付属のインフォシートの有無や内容が版によって異なり、初期プレスならではの作り込みが感じられる。中には黒いインナーが付く個体もあるようだ。レコードとして見ても、1987年当時の空気をそのまま持った一枚として扱われている。

総括

『The Joshua Tree』は、U2が世界的なロック・バンドとして定着する直前ではなく、まさにその地点を決定づけた作品だ。政治性、個人の喪失、アメリカ西部の風景、ゴスペル由来の高揚感、そして大きな会場で鳴らすことを前提にした音作りが、一本にまとまっている。ヒット曲の強さだけでなく、アルバム全体が一つの地図のように機能しているところに、この作品の大きさがある。

トラックリスト

  1. A1 Where The Streets Have No Name 5:35
  2. A2 I Still Haven't Found What I'm Looking For 4:38
  3. A3 With Or Without You 4:57
  4. A4 Bullet The Blue Sky 4:32
  5. A5 Running To Stand Still 4:20
  6. B1 Red Hill Mining Town 4:51
  7. B2 In God's Country 3:37
  8. B3 Trip Through Your Wires 3:32
  9. B4 One Tree Hill 5:24
  10. B5 Exit 4:14
  11. B6 Mothers Of The Disappeared 5:14

動画プレイリスト

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