Vangelis - Spiral (1977)
Vangelis 1977

Vangelis - Spiral (1977)

Electronic Ambient Synth-pop

Vangelis『Spiral』

『Spiral(邦題:螺旋)』は、ギリシャ出身の音楽家Vangelis(ヴァンゲリス)が1977年に発表したRCA期のスタジオ・アルバム。ロンドンのNemo Studiosで録音され、RCA Limited Englandからリリースされた。オレンジ・レーベル盤、見開きジャケット、白いエンボス加工のカード内袋付きという仕様で、クレジットには「Recorded at Nemo Studios, London, England, 1977」と記されている。

制作背景・エピソード

本作は、Vangelisが自らの創作拠点であるNemo Studiosで制作した作品で、すべての楽器演奏とプロデュースを本人が手掛けている。特に重要なのが、ここでYamaha CS-80を本格的にレコーディングへ導入した点だ。後年の代表作へと直結する伝説的アナログ・ポリフォニック・シンセサイザーを、Vangelisは本作で世界で初めて全面的に使用した。鍵盤ごとのアフタータッチやリボン・コントローラーを備えたCS-80の豊かな表現力に、Vangelisの手弾きを中心とするダイナミックな演奏法が完璧に呼応している。

さらに本作では、Roland System 100などのアナログ・シーケンサーも本格導入され、自動反復するパルスと即興演奏が緻密に交錯するスタイルを確立した。「Ballad」では自身の声をボコーダーやフィルターで変調させた抽象的なヴォーカル・テクスチャーが用いられている。ジャケットには老子『道徳経』第25章の「Going on means going far. Going far means returning.(遠くへ行くことは、元の場所へ還ることである)」の一節が引用され、万物が螺旋を描いて循環・拡大するという宇宙観が貫かれており、「Dervish D」はスーフィー(イスラム神秘主義)の旋回舞踏を行う修行僧(ダルヴィーシュ)の回転運動から着想を得ている。

時代の文脈

1970年代後半は、タンジェリン・ドリーム、クラウス・シュルツ、ジャン・ミッシェル・ジャールらの活躍により、シンセサイザーによるプログレッシブ・エレクトロニック・ミュージックが世界的な熱狂を生んでいた時代である。Aphrodite's Child解散後にロンドンへ渡りNemo Studiosを築いたVangelisは、当時の電子音楽シーンで主流だった冷徹なシーケンス偏重とは一線を画し、地中海的な叙情旋律やオーケストラ的なスケール感を融合させた独自のシンフォニック・エレクトロニクスを開拓した。

サウンドと評価

表題曲「Spiral」では、ステレオ音場を左右へと旋回しながら駆け抜ける鮮烈なシーケンスの上に、CS-80の金管を思わせる重厚なブラス・リードが雄大に響き渡る。代表曲「To The Unknown Man(見知らぬ男)」は、静謐なパルスから徐々にマーチング・ドラムとシンセ・ストリングスが重なり、壮大なカタルシスへと昇り詰めていく構成が白眉である。本作からシングル・カットされた「To The Unknown Man」は、1978年にフランス・カンヌで開催されたMIDEM国際音楽産業見本市で「MIDEM International Instrumental Award」を受賞した。

『Spiral』は、VangelisがNemo Studiosで築いた制作環境、CS-80の初導入、そしてシーケンサーと即興演奏の高度な融合が結晶した記念碑的アルバムである。のちの『China』をはじめ、アカデミー賞を受賞した『Chariots of Fire(炎のランナー)』や不朽の金字塔『Blade Runner(ブレードランナー)』へと続く黄金期のシグネチャー・サウンドの原点として、今なお電子音楽史に燦然と輝いている。

トラックリスト

  1. A1 Spiral 6:52
  2. A2 Ballad 8:24
  3. A3 Dervish D 5:11
  4. B1 To The Unknown Man 8:58
  5. B2 3 + 3 9:20

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Vangelis

Vangelis

Vangelisは、ギリシャ出身の作曲家、編曲家、演奏家だ。名前はEvangelos Odysseas Papathanassiouで、1943年3月29日にギリシャ・テッサリア地方の海辺...

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