Belle & Sebastian - The Boy With The Arab Strap (1998)
Belle & Sebastian 1998

Belle & Sebastian - The Boy With The Arab Strap (1998)

Rock Pop Indie Pop Indie Rock

Belle & Sebastian『The Boy With The Arab Strap』

グラスゴー出身のBelle & Sebastianが1998年に発表した3作目のスタジオ・アルバム。前2作の繊細なインディー・ポップの手触りを保ちながら、制作期間を数か月に広げ、バンド全体で音を組み立てた印象が強い作品である。Jeepster RecordingsからのUK盤で、録音はCa Va Studios。1998年当時のバンドの規模感や空気を、そのまま閉じ込めたような一枚でもある。

作品の位置づけ

Belle & Sebastianは1996年にグラスゴーで結成された。小さな編成感のある初期作で知られるが、このアルバムではスティーヴィー・ジャクソンやイゾベル・キャンベルが作曲やリード・ヴォーカルを担う曲も加わり、中心人物スチュアート・マードックだけでなく、複数のメンバーが前に出る形になっている。バンドの輪郭が少し広がった時期の記録として、ここは大きい。

UKアルバムチャートでは自己最高となる12位を記録しており、当時のバンドにとって商業的にもひとつの到達点になった。初期のインディー・ポップ・バンドが、内省的な作風を保ったまま広い層に届いていく流れの中で、よく参照される作品でもある。

タイトルと表題曲まわり

タイトル曲「The Boy with the Arab Strap」は、当時グラスゴーで交流のあったバンドArab Strapへの目配せから生まれたもの。スチュアート・マードックは、同バンドのエイダン・モファットと過ごした体験をもとに歌詞を書いたと語っている。なお、後年になってから、本人は “Arab Strap” という語が指す意味を当時はよく分かっていなかったとも明かしている。バンド名への言及として付けられたタイトル、という側面がまず先に立つ。

ジャケットには「このレコードのタイトルは、ジャケットに写っている人物とは一切関係ない」という但し書きも添えられている。タイトルとビジュアルの関係をあえてずらす、Belle & Sebastianらしい距離感がある。

聴きどころ

このアルバムは、いわゆる大きな音で押すタイプの作品ではない。演奏は細かく、歌とメロディが前に出る場面が多い。弦や鍵盤、軽いリズムの積み重ねが、曲ごとに少しずつ表情を変えていく作りで、耳を近づけるほど情報量が増える。

「The Boy with the Arab Strap」は、アルバムを代表する曲としてまず挙がることが多い。跳ねるようなリズムと、語りかけるようなヴォーカル、そして少し皮肉めいた言葉の運びが、バンドの持つ軽さと冷静さを同時に見せる。ここには、ただ甘いだけではないBelle & Sebastianの持ち味がまとまっている。

また本作では、メンバーごとの声色や役割の違いがはっきりしている。イゾベル・キャンベルの歌が入る曲では、曲全体の温度が少し変わり、スティーヴィー・ジャクソンの曲はバンドの中でも別の角度を見せる。統一感よりも、複数の視点が同居している感じが残る。

同時代の文脈

1990年代後半のUKインディー・シーンでは、ギターバンドの音が広く流通していたが、Belle & Sebastianはその中でも、派手なサウンドよりも私的な語り口と室内楽的な編成で存在感を作った。The PastelsやVaselinesの系譜を思わせる、スコットランドのインディー・ポップらしい感触もある一方で、同時代のローファイ志向や、ロックの大きな文法から少し外れた立ち位置がはっきりしている。

後のインディー・ポップや、静かな語りを軸にしたバンド群に与えた影響も大きい。感情を大きく振り切らず、曲の細部で印象を残す作り方は、このアルバムでひとつの形になっている。

盤の仕様

このUK盤はJeepster RecordingsのJPRLP 003。見開きジャケット仕様で、1998年当時のオリジナル盤としての位置づけになる。レーベル表記については、当初はロゴやレーベル名なしで出ていた時期があり、後にロゴが整えられたという経緯もある。こうした初期Jeepsterの佇まいも、本作の時代感を補強している。

まとめ

『The Boy With The Arab Strap』は、Belle & Sebastianの3作目として、作り込みの密度とバンドとしての広がりが同時に見えるアルバム。グラスゴーのインディー・ポップの空気、仲間内のやりとりから生まれたタイトル、複数メンバーの声が交差する構成、そしてUKチャートでも存在感を示した事実まで、1998年のBelle & Sebastianをそのまま捉えた一枚になっている。

トラックリスト

  1. A1 It Could Have Been A Brilliant Career 2:23
  2. A2 Sleep The Clock Around 4:58
  3. A3 Is It Wicked Not To Care? 3:22
  4. A4 Ease Your Feet In The Sea 3:35
  5. A5 A Summer Wasting 2:06
  6. A6 Seymour Stein 4:42
  7. B1 A Space Boy Dream 3:01
  8. B2 Dirty Dream Number Two 4:14
  9. B3 The Boy With The Arab Strap 5:14
  10. B4 Chickfactor 3:32
  11. B5 Simple Things 1:46
  12. B6 The Rollercoaster Ride 6:40

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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