Billy Paul - War Of The Gods (1973)
Billy Paul『War Of The Gods』
1972年に不滅の名曲「Me and Mrs. Jones」で全米1位を獲得し、グラミー賞にも輝いたフィリー・ソウルの巨星ビリー・ポール(Billy Paul)。世界的な大ヒット直後の1973年、フィラデルフィア・インターナショナル・レコード(Philadelphia International Records / PIR)から発表されたのが、キャリア随一の野心作にして壮大なコンセプト・アルバム『War Of The Gods(神々の戦争)』である。名門シグマ・サウンド・スタジオで録音され、名匠ケニー・ギャンブル&レオン・ハフがプロデュース、ボビー・マーティンとレニー・パクラが流麗かつ重厚なアレンジを手掛けた。
制作背景・エピソード
本作の驚くべき点は、大ヒット直後のプレッシャーの中で安易なラブ・バラードの再生産に逃げず、善と悪の葛藤、光と闇の戦い、精神的覚醒、そして普遍的平和という深遠なテーマを掲げたことにある。演奏には名門ハウス・バンドMFSBの鉄壁のリズム隊に加え、名手アンソニー・ジャクソン(ベース)やエディ・グリーン、ノーマン・ファリントンが客演。さらにドン・レナルド率いる壮大なストリングスが参加し、マスタリングは名所フランフォード/ウェイン・レコーディング・ラボが手掛けた。
時代の文脈とサウンド
1970年代初頭は、マーヴィン・ゲイ『What's Going On』やスティーヴィー・ワンダー『Innervisions』に代表されるニュー・ソウル/ブラック・コンシャスネスが結実した時代。本作はフィリー・ソウル特有の洗練されたオーケストレーションに、シンセサイザーの宇宙的な音響実験やアフロ/ラテン・パーカッション、サイケデリックなエフェクトを大胆に導入したコズミック・ソウルの先駆的作品である。
A面を支配する「I See The Light」から10分超の一大叙事詩「War Of The Gods」への展開は圧巻。不穏なSEと重厚なオーケストラの序幕から、催眠的なファンク・グルーヴへと雪崩れ込むダイナミズムはプログレッシブ・ロックにも通じるスケールを誇る。一転してB面では、禁断の恋の噂話を軽快なフィリー・ダンサーに仕立てた「The Whole Town's Talking」、シングル・ヒットを記録したハートウォーミングな名曲「Thanks For Saving My Life」、そして深い祈りを捧げる「Peace Holy Peace」まで、ビリー・ポールの深みのあるジャジーなボーカルが冴え渡る。
後世への影響
本作はビリー・ポール自身が生涯の最高傑作のひとつとして誇りにしていたことでも知られる。表題曲「War Of The Gods」の宇宙的なグルーヴは、プリティ・ライツ(Pretty Lights)やアーロン・メイ(Aaron May)など後年のヒップホップ/ビートメイカーたちにサンプリングされ、レア・グルーヴ/コズミック・ソウルの傑作として世代を超えて再評価された。
先行シングル「Thanks For Saving My Life」は米ビルボードR&Bチャートで9位(Hot 100で37位)、全英チャートでも33位のスマッシュ・ヒットを記録。USオリジナル盤(PIR / KZ 32409、Columbia Santa Mariaプレス)は、フィラデルフィア・サウンドが到達した芸術的頂点を刻み込んだ歴史的一枚である。
トラックリスト
- A1 I See The Light 6:13
- A2 War Of The Gods 10:07
- B1 The Whole Town's Talking 4:46
- B2 I Was Married 7:19
- B3 Thanks For Saving My Life 2:58
- B4 Peace Holy Peace 6:53
動画プレイリスト
このアーティストについて
Billy Paulは、アメリカ・フィラデルフィア出身のソウル・シンガーだ。1934年12月1日生まれで、2016年4月24日にニュージャージー州ブラックウッドで亡...
Billy Paul のプロフィール・作品一覧Billy Paul の他のレビュー