Cactus - Cactus (1970)
Cactus『Cactus』― 1970年ハードロックの骨太な出発点
Cactusのデビュー作『Cactus』は、1970年に発表されたアメリカ産ハードロック/ブルースロックの初期重要作だ。元Vanilla Fudgeのティム・ボガートとカーマイン・アピスを軸に、ラスティ・デイ、ジム・マッカーティーを加えて成立したバンドの最初の一枚で、のちのハードロックに通じる荒さと推進力を早い段階で示している。日本盤はAtlanticから1974年にリリースされており、オリジナル発表から少し間を置いた流通盤として手に取られていたことになる。
バンドの成り立ちと作品の位置
Cactusは、ジェフ・ベックを含む別企画が流れたのちに、ボガートとアピスが中心となって動き出したバンドだ。リズム隊の実力がそのまま看板になっている組み合わせで、ここにジム・マッカーティーのギター、ラスティ・デイのヴォーカルが加わることで、ブルース由来の曲を大きく押し広げる方向へ進んでいる。デビュー作の本作は、その出発点をそのまま刻んだ内容で、バンドの輪郭が最もストレートに見える一枚になっている。
録音は1969年10月から12月にかけてハンプステッドのUltra-Sonic Recording Studiosで行われ、1970年7月にAtcoから発売された。収録曲には「Parchman Farm」「You Can’t Judge a Book by the Cover」といったブルース・ナンバーのカバーが並び、原曲の骨格を残しながら、テンポや音圧を前へ押し出す作りがはっきりしている。カバー曲中心の構成だが、単なるコピーではなく、演奏の圧で別の曲に変えているところがこの作品の核になる。
聴きどころ
このアルバムでまず耳に入るのは、ボガートとアピスのリズムの強さだ。ベースとドラムが前へ出るため、曲全体が止まりにくい。そこにマッカーティーのギターが絡み、ラスティ・デイのヴォーカルが上から押し切る形になる。音の整理が行き届いたタイプではなく、演奏の勢いがそのまま盤面に残っている印象が強い。
「Parchman Farm」は特にこのバンドの性格が見えやすい曲で、ブルースの土台を持ちながら、演奏の圧がかなり強い。「You Can’t Judge a Book by the Cover」も、原曲の知名度に寄りかかるのではなく、ハードに鳴らすことで別の表情を作っている。「Let Me Swim」では、のちにVan Halenの「Eruption」の冒頭に通じるフレーズが指摘されることもあり、後年のギタリストへ残した影響の断片として語られる場面がある。
同時代の中での立ち位置
1970年前後のアメリカン・ロックでは、ブルースを土台にした重いバンドが次々と登場していた。Cactusはその中でも、特に演奏の荒さと直進性が前に出るグループとして記憶されている。英国勢のハードロックと比べても、より生々しく、スタジオで整えたというよりは、バンドがそのまま突っ込んでくる感触がある。Deep PurpleやLed Zeppelinのような巨大な存在と並べて語られることは多いが、Cactusはより短距離走に近いタイプの迫力を持つ。
商業面では、米Billboard 200で54位、カナダで43位を記録している。大ヒット盤ではないが、デビュー作としては十分な存在感を残した。後年の再評価では、70年代ハードロックの見過ごされた名盤として扱われることが多く、特に演奏力とブルースの扱い方が注目されている。
日本盤について
この日本盤は1974年リリースで、オリジナルの1970年盤から少し後の時期に出たものだ。Atlanticの国内流通盤として、当時の洋楽ロックを日本で追いかける文脈の中に置かれていたはずで、ジャケットや盤のクレジットからも、オリジナル期の空気をそのまま受け取れる。日本盤ならではの再流通として見たとき、作品の内容はもちろん、当時の国内での受け止められ方も気になる一枚だ。
まとめ
『Cactus』は、技巧のあるメンバーが集まったことをそのまま証明するデビュー作だ。ブルースの定番曲を素材にしながら、演奏の重さ、速さ、押しの強さでバンドの個性を前面に出している。きれいにまとまった作品ではないが、そのぶん70年代初頭のハードロックの手触りがはっきり残る。Cactusというバンドの出発点として、そしてアメリカン・ハードロックの初期形として、印象の強い一枚になっている。
トラックリスト
- A1 Parchman Farm 3:05
- A2 My Lady From South Of Detroit 4:20
- A3 Bro. Bill 5:10
- A4 You Can't Judge A Book By The Cover 6:44
- B1 Let Me Swim 3:50
- B2 No Need To Worry 6:00
- B3 Oleo 4:49
- B4 Feel So Good 6:00