Camel - I Can See Your House From Here (1979)
Camel / I Can See Your House From Here(1979年、日本盤)
Camelの7作目にあたる『I Can See Your House From Here』は、1979年10月にリリースされた作品で、バンドが70年代後半に進めていた編成変更と音作りの更新が、そのまま表れたアルバムだ。英プログレの中でもCamelは、長い組曲や技巧の誇示だけに寄らず、旋律の運びと音の流れを丁寧に組み立てるグループとして知られているが、この時期の作品ではその持ち味が、より整理された形で前に出ている。
本作の制作は1979年夏、プロデュースはルパート・ハイン。Farmyard Studiosを中心に進められ、一部のオーバーダビングはロンドンのAIR Studiosで行われた。メル・コリンズのサックス、さらにフィル・コリンズのパーカッションも加わっていて、バンド本体の演奏に外部の色が重なる構図になっている。Camelの作品の中でも、こうしたゲストの使い方が音の輪郭をはっきりさせている1枚。
バンドの変化がそのまま出た時期の作品
1970年代後半のCamelは、メンバーの入れ替わりが続いていた。前作までの流れを受けて、コリン・バス、キット・ワトキンス、ヤン・スケルハースらを含む新しい体制でまとまったのがこの時期で、アルバム全体にもその再編の空気がある。初期のCamelを支えていたピーター・バーデンスはこの頃には離れており、鍵盤の質感も以前とは違う。リック・シンクレア在籍期のジャズ寄りの流れとも少し距離を置き、よりコンパクトで都会的な組み立てになっている。
ジャケットの印象も強い。磔にされた宇宙飛行士が地球を見つめる絵柄で、当時は広告面でも扱いにくかったという話が残る。音だけでなく、視覚面でもCamelらしいひねりがある作品だ。
収録曲とアルバムの流れ
収録曲は、派手な長尺一発勝負というより、曲ごとの役割がはっきりした作り。A面では「Wait」「Your Love Is Stranger Than Mine」など、メロディを軸にした曲が並び、そこにプログレらしい展開が自然に差し込まれる。「Remote Romance」はアルバムの中でも比較的ストレートな印象を残す曲で、シングル的な扱いが意識された形跡もある。B面では「Ice」「Lies」「Socks and the Few」など、リズムや音色の切り替えが目立つ。終盤の「Ice」から「Lies」への流れは、アルバム後半の緊張感を支える部分。
全体を通すと、演奏の密度は高いのに、音の配置は以前より整理されている。ギターと鍵盤がぶつかる場面でも、音が過剰に重ならず、各パートの見え方が比較的クリアだ。Camelの中では、壮大さよりも曲の輪郭が先に立つアルバム。
当時の位置づけ
この作品は、Camelが英国チャートに戻ってきたアルバムでもある。全英アルバム・チャートでは45位を記録しており、前作までの変動を経たうえで、バンドがまだ一定の支持を保っていたことがわかる。1979年という時期は、パンク以後の空気が強く、70年代前半型のプログレには逆風が続いていたが、その中でCamelは、過度に大仰にならず、演奏と録音の質で勝負する方向へ寄っている。
同時代のプログレ勢と比べると、YesやGenesisのような大きな構成感より、穏やかな推進力とメロディの残り方が印象に残る。King Crimsonの鋭さとも違い、Camelはもっと線が細いぶん、音の重なりや空気感で聴かせるタイプだ。このアルバムでも、その性格ははっきりしている。
日本盤の仕様
日本盤はキングレコード製造で、ピクチャー・レーベル仕様。インナー・スリーブ、和文の歌詞・解説インサート、帯付きでのリリースとなっている。1979年当時の国内盤らしく、資料性の高い体裁が整えられているのもポイントだ。Gamaレーベルからのオリジナルの雰囲気を保ちながら、日本盤としての見せ方が加わった1枚。
Camelのディスコグラフィーの中では、初期の叙情性と後年の洗練のあいだに位置する作品。メル・コリンズらの参加も含めて、70年代末のCamelがどこへ向かおうとしていたかが見えやすいアルバムだ。
トラックリスト
- A1 Wait
- A2 Your Love Is Stranger Than Mine
- A3 Eye Of The Storm
- A4 Who We Are
- B1 Survival
- B2 Hymn To Her
- B3 Neon Magic
- B4 Remote Romance
- B5 Ice