Camel - Nude (1981)
Camel 1981

Camel - Nude (1981)

Rock Prog Rock

Camel『Nude』――80年代に入った英国プログレの一枚

Camelの『Nude』は、1981年に発表された8作目のスタジオ・アルバムで、英国プログレッシブ・ロックの流れの中でも、物語性を前面に出したコンセプト作として知られる作品だ。題材は、戦後も長く任務を続けた日本兵・小野田寛郎の実話。都市での生活から召集、孤立、長い潜伏、そして帰還までを、一続きの物語として組み立てている。Camelというバンドの持つ叙情性と、組曲的な構成感がはっきり出たアルバムでもある。

作品の位置づけ

Camelは1971年結成の英国バンドで、アンドリュー・ラティマーとピーター・バーデンスを軸に、初期からメロディと演奏のバランスを丁寧に作ってきたグループだ。『Nude』は、その歩みの中でも、70年代の英国プログレから80年代の空気へと移る時期の作品に当たる。前作『I Can See Your House From Here』で見せた流れを受けつつ、より抑えた構成と、場面ごとの音の切り替えが目立つ内容になっている。

当時の英国プログレは、すでに70年代前半のような大きな商業的勢いを失っていたが、Camelはその中でも、過度に技巧へ寄りすぎず、旋律の流れを保つバンドとして存在感を保っていた。『Nude』もその特徴がよく出ていて、派手な一発より、曲の展開や音の配置で聴かせるタイプのアルバムだ。

録音と参加メンバー

制作はアビー・ロード・スタジオで行われ、アンドリュー・ラティマー、アンディ・ウォード、コリン・バスに加え、ダンカン・マッケイ、メル・コリンズらが参加している。Camelらしいことに、メンバーの入れ替わりが多い時期でもあり、演奏の色合いは固定されたバンドというより、作品ごとの編成で組み上げた印象が強い。

この時期のCamelは、カンタベリー系の人脈とも距離が近い。メル・コリンズの参加はその流れを感じさせるし、リチャード・シンクレアの関与も含めて、英国プログレ周辺の演奏家が自然に交差する場になっている。結果として、『Nude』はCamel単独の作品であると同時に、70年代英国ロックの演奏文化がまだ息づいていた時期の記録にも見える。

音の印象

実際に聴くと、まず耳に入るのは、音の詰め込みすぎない設計だ。シンセやギターが前に出る場面でも、音数で押し切るより、フレーズの受け渡しで展開していく。テンポの速い場面だけでなく、静かな場面の置き方が丁寧で、アルバム全体に移動感がある。コンセプト作という性格もあって、1曲ずつを独立したヒット曲として聴くより、流れの中で場面が切り替わる感覚が印象に残る。

Camelらしい柔らかな旋律はここでも確認できる。派手なドラマを前面に出すというより、淡々とした進行の中で感情が立ち上がるタイプで、そこがこのバンドの持ち味でもある。プログレという枠で比較されやすいYesやGenesisほど大仰ではなく、演奏の密度とメロディの整理で聴かせる点は、同時代の英国バンドの中でも独特だ。

当時の評価とチャート

当時の評価では、ヒット性よりも、抑制された叙情性や演奏の質が注目された。チャート面では、UKアルバム・チャートで最高34位、6週のチャート在位が記録されている。前作より少し持ち直した数字で、主流から外れつつあった時代のプログレ作品としては、一定の存在感を残したと言える。

また、『Nude』はアンディ・ウォードにとって最後のCamel参加作でもある。バンドの編成変化が続く中で作られた作品という点でも、転機の一枚として見られることが多い。物語の題材が終戦後の長い孤立と帰還であることも含めて、アルバム全体に「終わり」と「移行」の感触がある。

1982年の日本盤という見方

このレコードは日本で1982年に出た盤で、オリジナルの1981年作を日本市場向けに受け取ったものになる。London Recordsの日本盤らしく、英国オリジナルの作品を当時の日本のリスナーがどう聴いたか、という文脈でも興味深い。80年代初頭の日本では、プログレはすでに初期の熱狂期を越えていたが、Camelのように旋律重視で組曲性のあるバンドは、根強く支持されていた。

『Nude』は、Camelの中でも、技巧の誇示ではなく、構成と音色で物語を運ぶ作品だ。派手さよりも、曲のつながり、編成の呼吸、静かな場面の置き方に耳が向くアルバムである。70年代英国プログレの延長線上にありながら、80年代の空気を受けたCamelの姿を、かなり素直に捉えた一枚と言えそうだ。

トラックリスト

  1. A1 City Life
  2. A2 Nude
  3. A3 Drafted
  4. A4 Docks
  5. A5 Beached
  6. A6 Landscapes
  7. B1 Changing Places
  8. B2 Pomp & Circumstance
  9. B3 Please Come Home
  10. B4 Reflections
  11. B5 Captured
  12. B6 The Homecoming
  13. B7 Lies
  14. B8 The Last Farewell: The Birthday Cake / Nude's Return

動画プレイリスト

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