Cat Stevens - Foreigner (1973)
Cat Stevens『Foreigner』(1973年)について
Cat Stevensの『Foreigner』は、1973年にUKのIsland Recordsから発表されたアルバムで、彼のキャリアの中でもかなり位置づけのはっきりした一枚だ。フォーク・シンガーとして広く知られていた時期にありながら、この作品ではR&Bやソウルの要素を前面に出し、長尺構成も含めて、これまでの印象を少しずつ更新している。Cat Stevensは1948年生まれのロンドン出身シンガー・ソングライターで、70年代前半には『Tea for the Tillerman』『Teaser and the Firecat』などで世界的な評価を確立していた。その流れの中で出た『Foreigner』は、単なる延長線ではなく、作り方そのものに踏み込みがある作品として捉えやすい。
作品の骨格と録音の特徴
このアルバムでまず目を引くのは、A面を約18分の組曲「Foreigner Suite」が占めていることだ。1曲でアルバムの重心を担う構成で、曲の連なりを通して展開していく作りになっている。録音の多くはジャマイカで行われ、Cat Stevens自身の単独プロデュースという点も特徴的だ。Island Recordsというレーベルの背景を考えると、ジャマイカ録音という選択は自然にも見えるが、ここでは単に場所の話にとどまらず、演奏の温度やリズムの置き方にまで反映されているように感じられる。
演奏面では、ホーン・セクションやコーラスがしっかりと組み込まれ、Catの弾き語り的な印象だけでは終わらない。Tower of Power系のホーン、Patti AustinやBarbara Masseyのコーラス、Bernard “Pretty” Purdieのドラムといったクレジットが示す通り、ソウル寄りの厚みを持った編成だ。実際に聴くと、アコースティックな響きの上にリズム隊がきっちりと置かれ、歌が前に出る場面でも音の隙間が少ない。Cat Stevensの作品の中では、かなり都会的な手触りを持ったアルバムと言える。
「よそ者」というテーマ
タイトルの『Foreigner』は、特定の人物を指すというより、「私たちは皆、ある意味でよそ者だ」という広い意味で語られていた。そうした視点で聴くと、このアルバムは異郷感や距離感を軸にした作品としてまとまりがある。Cat Stevensの歌詞世界には、もともと内省や人生の節目を見つめる視線があるが、この作品ではそこに“外側に立つ感覚”が加わっている。
同時代のフォーク系シンガーソングライターと比べても、この時期のCat Stevensはかなり独自の場所にいる。James TaylorやJackson Browneのようなアメリカ西海岸系の流れとも、英国フォークの文脈とも少し距離がある。『Foreigner』では、その距離がさらに明確で、長い組曲、ソウル寄りの編曲、自作自演の統一感によって、ひとつの個人史のような聴こえ方をする。
代表曲とアルバムの流れ
このアルバムは、シングル・ヒットを前面に押し出すタイプというより、作品全体の流れで聴かせる性格が強い。とはいえ、タイトル曲の「Foreigner Suite」はやはり中心になる存在だ。組曲形式の中で場面が切り替わっていき、Cat Stevensの楽曲としては珍しく、構成の大きさがそのまま印象に残る。メロディの分かりやすさだけで押し切るのではなく、展開そのものを聴かせる作りになっているのが面白い。
アルバム全体としては、派手な瞬間を連打するというより、曲ごとの配置と音の層でじわじわ聴かせる流れだ。フォーク、ポップ、ロックの要素が土台にありながら、リズムやコーラスの置き方でR&Bやソウルの感触が入るため、Cat Stevensのディスコグラフィーの中でも少し特殊な場所に立っている。
1973年UK盤としての仕様
このUK盤はIsland Records、カタログ番号ILPS 9240。1973年のオリジナル期のリリースで、盤面のランアウトにはSTERLINGの刻印がある。ジャケットは厚手のボール紙のインサート付きで、青灰色のインナー・スリーブは上部がダイカット仕様。初期プレスには、裏面に情報が印刷されたビーチの写真ポストカードが封入されていたものもある。こうした物理的な作り込みも含めて、当時のIslandらしいアルバムらしさがある。
Island Records自体も、60年代末から70年代にかけて、ジャマイカ音楽の文脈からロックへと軸足を広げていったレーベルで、Cat Stevensはその中でも看板級の存在だった。『Foreigner』は、そのIslandの70年代前半の空気をよく映している一枚でもある。フォーク・シンガーとして知られたCat Stevensが、より広い音楽語法に踏み出した記録として、今聴いても輪郭がはっきりしている。
まとめ
『Foreigner』は、Cat Stevensが自分の持ち味を保ちながら、ソウルやR&Bの方向へと踏み込んだ1973年の重要作だ。長尺の組曲、ジャマイカ録音、単独プロデュース、厚みのあるバンド・サウンドといった要素がまとまり、彼の代表作群の中でも異なる表情を持っている。英国では最高3位、米国でも最高3位を記録しており、内容面と商業面の両方で強い存在感を示したアルバムである。
トラックリスト
- A Foreigner Suite 18:16
- B1 The Hurt 4:16
- B2 How Many Times 4:32
- B3 Later 4:47
- B4 100 I Dream 4:10