Catharsis - 32 Mars (1972)
Catharsis「32 Mars」──フランス産サイケデリック・ロックの短編アルバム
Catharsisの「32 Mars」は、1972年にフランスで発表された3作目のアルバムである。フランスのサイケデリック/プログレッシブ・ロック・バンドとして活動した彼らは、1969年ごろから1977年ごろまでに6枚のLPと複数のシングルを残しており、この作品もその活動の中核に位置する1枚だ。バンドの中心にいたローラン・ボケを軸に、オルガンやピアノを前面に出した演奏で知られ、同時代のフランス勢らしい濃い音作りが印象に残る。
収録内容と作品の性格
このアルバムの特徴は、収録時間の短さと構成の明快さにある。1970年代のLPとしてはかなり短い部類で、A面にはタイトル曲「32 Mars」の拡張版を配置し、B面には彼らの3つのヒット曲のシングル・バージョンを収めている。つまり、新曲をずらりと並べた通常のアルバムというより、当時の代表曲をまとめ直した編集的な性格が強い。
その中でも中心になるのが「32 Mars」だ。11分を超える長尺の展開で、オルガンを軸にしたリフ、チェンバロ風の響き、サックス、短いドラム・ソロがつながっていく。曲単位で聴いても構成がはっきりしていて、単なるジャムではなく、場面転換を含んだ組曲的な流れになっている。Catharsisの持つ演奏力が、最も分かりやすく出る曲として扱われてきたのも納得できる内容だ。
録音とリリースの背景
録音は複数のセッションにまたがっており、A1、B2、B3は1971年12月にStudio Davoutで録音、B1は1971年3月にStudio ETAで録音されている。最終的なミックスは1972年11月にStudio ETAで行われた。こうした制作経緯からも、単発のライブ感だけで作られた作品ではなく、既存の素材を整理しながらまとめ上げたアルバムであることがうかがえる。
盤としては1972年のオリジナル・リリースで、フランス盤として流通した。レーベルはGalloway Records、カタログ番号はGB 600507。のちにこの時期のフランス・サイケやプログレを掘る文脈で見かけることが多い作品でもある。
Catharsisの中での位置づけ
Catharsisは、フランスのバンドの中でも器楽的な要素が強く、オルガン主体のサウンドで存在感を示したグループだ。この「32 Mars」は、そうした特徴がまとまった形で表れたアルバムとして見やすい。バンドの代表曲として語られる「32 Mars」を中心に、既発のヒット曲を別バージョンで並べている点も含めて、当時の活動の整理盤としての性格がはっきりしている。
同時代のフランス産ロックを見渡すと、Magmaのような強い個性を持つグループや、サイケデリック色の濃いバンドが多く、Catharsisもその流れの中で捉えやすい。派手な技巧の誇示というより、オルガンの音色と曲展開で押していくタイプで、フランスの70年代ロックらしい密度の高さがある。
聴きどころ
実際に耳を通すと、まず目立つのはオルガンの持続感で、曲全体を引っ張る役割が大きい。リズムが前に出る場面よりも、旋律の伸びと音の重なりで進む場面が多く、サイケデリック・ロックらしい浮遊感と、プログレ寄りの構成意識が同居している。B面のシングル・バージョンは、A面の長尺曲とは対照的に、曲の輪郭がはっきりしたまとまりで聴けるのも面白いところだ。
「32 Mars」は、Catharsisの中でも演奏面の魅力が前に出た作品として整理しやすい。アルバム全体としては短いが、そのぶん各曲の役割が見えやすく、バンドの持ち味を手早くつかめる構成になっている。フランスの70年代サイケ/プログレを追ううえで、活動の一断面をそのまま切り取ったような1枚として残る作品だ。
トラックリスト
- A1 32 Mars 11:30
- B1 Masq 4:10
- B2 Les Chevrons 4:30
- B3 32 Mars 3:06