Mustafa Özkent Ve Orkestrası - Gençlik İle Elele (1973)
Mustafa Özkent Ve Orkestrası 1973

Mustafa Özkent Ve Orkestrası - Gençlik İle Elele (1973)

Electronic Rock Pop Jazz Folk, World, & Country Funk / Soul Experimental Psychedelic Rock Jazz-Rock Jazz-Funk Easy Listening Lounge

Mustafa Özkent Ve Orkestrası『Gençlik İle Elele』――トルコ盤オリジナルが示す、民謡とグルーヴの接点

Mustafa Özkent Ve Orkestrası名義の『Gençlik İle Elele』は、1973年にトルコのEvrenから出たインストゥルメンタル・アルバムである。ギタリスト、アレンジャー、プロデューサーとして活動したMustafa Özkentが、自身の楽団を率いて制作した作品で、トルコ民謡の素材をロック、ジャズ、ファンク、サイケデリックの語法で組み替えた内容が核になっている。タイトルの意味は「若者と手を取り合って」で、当時の空気を踏まえた前向きな響きも持つ。

制作背景と編成

録音は1972年、イスタンブールのGrafson Studiosで行われたとされる。演奏はライブ録音に近い形でまとめられ、ツイン・ドラム、ツイン・ギター、2人のパーカッション、ベース、ハモンドB3オルガンという厚みのある編成が採られている。参加者にはCahit Oben、Mustafa Özkent、Ümit Aksuの名があり、Özkentはリード・ギターと全曲のアレンジを担った。こうした編成は、スタジオ作品でありながら現場感の強い鳴りを生んでいる。

Mustafa Özkentはアンカラ出身で、1960年にバンド「the Teenagers」でプロ活動を開始した人物。以後はセッション・ミュージシャン、アレンジャー、プロデューサーとしてトルコ音楽界で活動した。サイケデリックやポップ/ロックの影響に、R&Bのグルーヴやジャズ的な即興を重ねる作風で知られ、本作はその要素がまとまった代表的な1枚として扱われている。

収録曲の性格

収録曲には「Üsküdar'a Giderken」「Çarşamba」「Silifke」「Ayaş」など、トルコ各地の伝統的な民謡を下敷きにした曲が並ぶ。ここで重要なのは、原曲の輪郭を残しながら、リズム隊とオルガン、ギターの反復で別の推進力を与えている点だろう。旋律の出どころは民謡でも、曲の運びはジャズ・ファンクやロックの文法に寄っていく。オリエンタルな装飾だけに頼らず、演奏の密度で押し切る作りが印象に残る。

とくに「Üsküdar'a Giderken」は、作品全体の性格を端的に示す中心曲として語られることが多い。トルコの伝承曲を素材にしながら、単なる編曲ものに留まらず、ビートの強さとアンサンブルの絡みで新しい曲のように聴かせる構成になっている。民謡のメロディを、都市的で現代的なサウンドへ移し替える作業が、この盤の核にある。

Evren盤オリジナルの位置づけ

この盤はトルコ盤オリジナル、Evren MGLP-1003である。Evren Recordsは制作の質や音質へのこだわりで知られたレーベルで、本盤でもその傾向がうかがえる。楽器の分離が比較的わかりやすく、ギター、オルガン、パーカッション、ドラムの層がぶつかりすぎずに収まっている。録音年代を考えると、音の輪郭はかなり明瞭な部類に入る。

オリジナル盤は1973年当時のトルコ・ローカル市場で出た作品で、長く埋もれた存在だった。一方で、2006年に英国のFinders Keepers Recordsが再発したことで、欧米のリスナーや批評家の間で再評価が進んだ。再発後はアナトリアン・ファンク/サイケの文脈で広く知られるようになり、Mustafa Özkentの名もその流れで国際的に拾い直された。

同時代の文脈

1970年代初頭のトルコでは、民謡や古典的旋律をロックやジャズと結びつける動きが各地で進んでいた。『Gençlik İle Elele』は、その中でも演奏のまとまりとアレンジの整理が際立つ部類に入る。比較対象としては、同時代のアナトリアン・ロックや、ジャズ・ファンク寄りの作品群が思い浮かぶが、この盤は歌ものよりもインストゥルメンタルの構成力で押してくる点が特徴的だ。

再評価後には、Andy VotelがÖzkentを「アナトリアン・ポップのフランケンシュタイン博士」と評したことでも知られる。やや刺激的な言い方だが、実際に聴くと、民謡、ロック、ファンク、ジャズの断片を切り貼りしたというより、バンドの現場で一つの流れにまとめた印象が強い。伝統素材を素材のまま残すのではなく、演奏の推進力へ変換している点が、この作品の面白さになっている。

まとめ

『Gençlik İle Elele』は、Mustafa Özkentのアレンジ感覚と、1970年代トルコの音楽的混交をそのまま映した1枚である。民謡を土台にしながら、ギター、オルガン、パーカッション、ドラムの層でサイケデリックかつファンキーな手触りへ持ち込む構成。発売当時は大きく注目されなかったが、後年の再発によって、アナトリアン・ファンク/サイケを語るうえで外せないタイトルとして扱われるようになった。オリジナル盤の存在感は、今あらためて聴いてもかなりはっきりしている。

トラックリスト

  1. A1 Üsküdar'a Giderken 2:01
  2. A2 Burçak Tarlaları 2:56
  3. A3 Dolana Dolana 4:35
  4. A4 Karadır Kara 2:55
  5. A5 Emmioğlu 3:02
  6. B1 Çarşamba 2:18
  7. B2 Zeytinyağlı 3:45
  8. B3 Silifke 3:35
  9. B4 Lorke 2:24
  10. B5 Ayaş 3:00

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Mustafa Özkent Ve Orkestrası

Mustafa Özkent Ve Orkestrası

Mustafa Özkent Ve Orkestrasıは、トルコ・アンカラ出身のギタリスト、作曲家、アレンジャー、プロデューサーであるMustafa Özkentが率いた楽団の名義...

Mustafa Özkent Ve Orkestrası のプロフィール・作品一覧
Share
戻る

あわせて聴きたい "Lounge"

toast